91 / 271
第91話 すべてを仕組んだ元凶
しおりを挟む
3日が過ぎた。
レンジは、転移8日目の朝を迎えていた。
彼は、父がスマホに遺してくれた動画を観ていた。
「転移初日のログインボーナスは、ウルトラレア級の巫女がふたり。
ステラとピノアだ。
2日目のログインボーナスは、ダークマターの浄化方法。
これはレオナルドがくれる。
3日目のログインボーナスは、ウルトラレア級の竜騎士とドラゴンだ。
4日目以降のログインボーナスはお楽しみに、ってところかな」
5日目のログインボーナスは、「父が遺してくれた大剣の刀身に、父や魔王の目に映る風景が映し出されることになったこと」だろうということはわかっていた。
そして、その刀身は父の死によって一度何も映さなくなっていたが、死んだはずの父が見ているであろう光景がまた映るようになっていた。
昨晩の、パーフェクト・ピノア・ザ・イリュージョンのブライ版やサトシ版が本当にある可能性が出てきていた。
4日目のログインボーナスよりも先に5日目がわかってしまったが、4日目はおそらく「アルマが戦乙女として覚醒すること」だったのだろう。
そして、「彼女のドラゴン・ヨルムンガンドが仲間になってくれること」だったのだろう。
6日目以降のログインボーナスが何なのかはまだわからなかった。
まさか10001人目の転移者だったりして、と考えたりもしたが、さすがにそれはないだろうなと思った。
「ごめんな、レンジ。
父さんはもうタイムオーバーみたいだ……
あとは、まかせていいか?
……本当にごめんな、レンジ。愛しているよ」
動画を観終わると、レンジは支度を始めた。
ステラとアンフィスがピノアからゴールデンバタフライ~を習っている間、レンジもニーズヘッグとアルマに稽古をつけてもらっていたからだ。
「レオナルド、今日もよろしく頼むよ」
彼は部屋にいた甲冑の狼の頭をなで、その首筋のスイッチを切り替えようとした。
そのスイッチにより「甲冑型」と「狼型」に切り替えられるのだが、そこには昨日まではなかった「ヒト型」が追加されていた。
おそらくはそれが8日目のログインボーナスなのだろう。
エーテルを吸収すればするほど強固な鎧となるとは聞いてはいたが、一定量を超えると進化する、そういうことなのだろうか?
あるいは、この甲冑の狼を作り出した魔装具鍛冶のレオナルドは、ダークマターを浄化する秘術をさらに昇華させ、自分のものとする魔法使いが現れることによって、ヒト型の姿を持つようにあらかじめ仕込んでいたのかもしれない。
「レオナルド、本当にあなたは、レオナルド・ダ・ヴィンチみたいな天才だったんだな。
ディカプリオには似てなかったし、ぼくはタイタニックしか見てないけど」
狼の姿のとき、この甲冑には確かに自我や意思が存在していた。
つまりは、飛空艇の魔法人工頭脳のようなものが、この甲冑にはあらかじめ組み込まれていたのだ。
レンジは、そのスイッチをヒト型に切り替えた。
甲冑に切り替えたときは、狼は一度その体をバラバラに分解し、レンジの身体に自動的に、まるで変身ヒーローのパワードスーツのように装着される。
ヒト型に切り替えると、狼がその身体を一度分解するところまでは一緒だったが、レンジの身体には装着されず、甲冑だけで自立する姿となった。
「よぅ、久しぶりだな。レンジ」
甲冑から懐かしい声が聞こえた。
「って言っても、まだ一週間ぶりくらいか? 1ヶ月ぶりくらいな気がするけどな」
レオナルドの声だった。
レンジは胸から熱いものが込み上げてくるのを感じた。
「本当に。一週間しか経ってないのが不思議なくらいだね」
「ブライとサトシを倒してくれたみたいだな」
「全部、ピノアのおかげだけどね。ぼくはステラに眠らされちゃってたから」
レンジは自嘲気味にそう言ったが、
「レンジ、お前は何もしなかったわけじゃないだろ?
俺はずっと見てたぞ。
お前がピノアやステラを、みんなを導いたんだ。
だから、自分を卑下するな」
レオナルドはそう言ってくれた。
「このレオナルドメイルに与えた魔法人工頭脳には、ブライやサトシ以上の敵の存在を感知したとき、甲冑と狼に続く第三のこの形態と、人工頭脳自体のバージョンアップが自動的に行われるように細工しておいた。
今の俺は、死んだ俺のコピーに過ぎないが、俺もお前たちといっしょに戦わせてもらう」
そして、彼は、
「来るぞ」
と言った。
彼が今こうしてレンジと話しているのは、彼やレンジが知るブライやレンジの父以上の存在を感知したからなのだから、それは当然のことではあったが、あまりにも突然すぎた。
「窓の外を見ろ。
オリジナル・ブライが率いるリバーステラの大艦隊のお出ましだ」
レンジは窓に駆け寄り、外を見た。
そして、恐れていたことが現実になってしまったのを見た。
「本物のブライの野郎が、いつから俺たちの知るブライになってやがったのかは、俺にもわからねーけど……
ピノアが倒してくれたあいつは、まだましな奴だった。
ステラやピノアを娘と想い、大切に想う、サトシがお前に対して抱いていたのと同じ『心』があったからな。
だが、あの艦隊にいるブライは違う。
時だけじゃなく、世界さえも超えて、すべてを仕組んだ元凶だ」
レンジは、転移8日目の朝を迎えていた。
彼は、父がスマホに遺してくれた動画を観ていた。
「転移初日のログインボーナスは、ウルトラレア級の巫女がふたり。
ステラとピノアだ。
2日目のログインボーナスは、ダークマターの浄化方法。
これはレオナルドがくれる。
3日目のログインボーナスは、ウルトラレア級の竜騎士とドラゴンだ。
4日目以降のログインボーナスはお楽しみに、ってところかな」
5日目のログインボーナスは、「父が遺してくれた大剣の刀身に、父や魔王の目に映る風景が映し出されることになったこと」だろうということはわかっていた。
そして、その刀身は父の死によって一度何も映さなくなっていたが、死んだはずの父が見ているであろう光景がまた映るようになっていた。
昨晩の、パーフェクト・ピノア・ザ・イリュージョンのブライ版やサトシ版が本当にある可能性が出てきていた。
4日目のログインボーナスよりも先に5日目がわかってしまったが、4日目はおそらく「アルマが戦乙女として覚醒すること」だったのだろう。
そして、「彼女のドラゴン・ヨルムンガンドが仲間になってくれること」だったのだろう。
6日目以降のログインボーナスが何なのかはまだわからなかった。
まさか10001人目の転移者だったりして、と考えたりもしたが、さすがにそれはないだろうなと思った。
「ごめんな、レンジ。
父さんはもうタイムオーバーみたいだ……
あとは、まかせていいか?
……本当にごめんな、レンジ。愛しているよ」
動画を観終わると、レンジは支度を始めた。
ステラとアンフィスがピノアからゴールデンバタフライ~を習っている間、レンジもニーズヘッグとアルマに稽古をつけてもらっていたからだ。
「レオナルド、今日もよろしく頼むよ」
彼は部屋にいた甲冑の狼の頭をなで、その首筋のスイッチを切り替えようとした。
そのスイッチにより「甲冑型」と「狼型」に切り替えられるのだが、そこには昨日まではなかった「ヒト型」が追加されていた。
おそらくはそれが8日目のログインボーナスなのだろう。
エーテルを吸収すればするほど強固な鎧となるとは聞いてはいたが、一定量を超えると進化する、そういうことなのだろうか?
あるいは、この甲冑の狼を作り出した魔装具鍛冶のレオナルドは、ダークマターを浄化する秘術をさらに昇華させ、自分のものとする魔法使いが現れることによって、ヒト型の姿を持つようにあらかじめ仕込んでいたのかもしれない。
「レオナルド、本当にあなたは、レオナルド・ダ・ヴィンチみたいな天才だったんだな。
ディカプリオには似てなかったし、ぼくはタイタニックしか見てないけど」
狼の姿のとき、この甲冑には確かに自我や意思が存在していた。
つまりは、飛空艇の魔法人工頭脳のようなものが、この甲冑にはあらかじめ組み込まれていたのだ。
レンジは、そのスイッチをヒト型に切り替えた。
甲冑に切り替えたときは、狼は一度その体をバラバラに分解し、レンジの身体に自動的に、まるで変身ヒーローのパワードスーツのように装着される。
ヒト型に切り替えると、狼がその身体を一度分解するところまでは一緒だったが、レンジの身体には装着されず、甲冑だけで自立する姿となった。
「よぅ、久しぶりだな。レンジ」
甲冑から懐かしい声が聞こえた。
「って言っても、まだ一週間ぶりくらいか? 1ヶ月ぶりくらいな気がするけどな」
レオナルドの声だった。
レンジは胸から熱いものが込み上げてくるのを感じた。
「本当に。一週間しか経ってないのが不思議なくらいだね」
「ブライとサトシを倒してくれたみたいだな」
「全部、ピノアのおかげだけどね。ぼくはステラに眠らされちゃってたから」
レンジは自嘲気味にそう言ったが、
「レンジ、お前は何もしなかったわけじゃないだろ?
俺はずっと見てたぞ。
お前がピノアやステラを、みんなを導いたんだ。
だから、自分を卑下するな」
レオナルドはそう言ってくれた。
「このレオナルドメイルに与えた魔法人工頭脳には、ブライやサトシ以上の敵の存在を感知したとき、甲冑と狼に続く第三のこの形態と、人工頭脳自体のバージョンアップが自動的に行われるように細工しておいた。
今の俺は、死んだ俺のコピーに過ぎないが、俺もお前たちといっしょに戦わせてもらう」
そして、彼は、
「来るぞ」
と言った。
彼が今こうしてレンジと話しているのは、彼やレンジが知るブライやレンジの父以上の存在を感知したからなのだから、それは当然のことではあったが、あまりにも突然すぎた。
「窓の外を見ろ。
オリジナル・ブライが率いるリバーステラの大艦隊のお出ましだ」
レンジは窓に駆け寄り、外を見た。
そして、恐れていたことが現実になってしまったのを見た。
「本物のブライの野郎が、いつから俺たちの知るブライになってやがったのかは、俺にもわからねーけど……
ピノアが倒してくれたあいつは、まだましな奴だった。
ステラやピノアを娘と想い、大切に想う、サトシがお前に対して抱いていたのと同じ『心』があったからな。
だが、あの艦隊にいるブライは違う。
時だけじゃなく、世界さえも超えて、すべてを仕組んだ元凶だ」
0
あなたにおすすめの小説
無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~
甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって?
そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる
名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。
異世界をスキルブックと共に生きていく
大森 万丈
ファンタジー
神様に頼まれてユニークスキル「スキルブック」と「神の幸運」を持ち異世界に転移したのだが転移した先は海辺だった。見渡しても海と森しかない。「最初からサバイバルなんて難易度高すぎだろ・・今着てる服以外何も持ってないし絶対幸運働いてないよこれ、これからどうしよう・・・」これは地球で平凡に暮らしていた佐藤 健吾が死後神様の依頼により異世界に転生し神より授かったユニークスキル「スキルブック」を駆使し、仲間を増やしながら気ままに異世界で暮らしていく話です。神様に貰った幸運は相変わらず仕事をしません。のんびり書いていきます。読んで頂けると幸いです。
【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ
一終一(にのまえしゅういち)
ファンタジー
俺こと“有塚しろ”が転移した先は巨大モンスターのうろつく異世界だった。それだけならエサになって終わりだったが、なぜか身に付けていた魔法“ワンオペ”によりポンコツ鎧兵を何体も召喚して命からがら生き延びていた。
百体まで増えた鎧兵を使って騎士団を結成し、モンスター狩りが安定してきた頃、大樹の上に人間の住むマルクト王国を発見する。女王に入国を許されたのだが何を血迷ったか“聖騎士団”の称号を与えられて、いきなり国の重職に就くことになってしまった。
平和に暮らしたい俺は騎士団が実は自分一人だということを隠し、国民の信頼を得るため一人百役で鎧兵を演じていく。
そして事あるごとに俺は心の中で呟くんだ。
『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる