「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな

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【第三部 異世界転移奇譚 RENJI 3 - PINOA - 】「やったね!魔法少女ピノアちゃん大活躍!!編」

第180話 【第三部 異世界転移奇譚 RENJI 3 - PINOA - 】 プロローグ

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「だーかーらー、そのセイトテチョーとかガクセーショーとか、メンキョショーとかホケンショーとか、あと何だったっけ?」

「マイナンバーカード」

「それ! そんなの持ってないんだって。
 お父さんもお母さんも死んじゃったし、連絡先を教えろって言われても、は? って感じ。
 でも、この世界に知り合いはちゃんといるから。
 富嶽サトシ(ふがく さとし)って人か、大和ショウゴ(やまと しょうご)って奴。
 連絡先? は? だから知らないって。
 いやいや生きてるから、そのふたりは。
 おじさんたちで調べてよ。
 コッカケンリョクってやつでどうにでもなるでしょ?」

「おじさんたちは地方公務員だ」

「は? 地方? どーりで偉そうにしてるわりに、ちっさい建物だと思った」


 少女は、気づいたら異世界にいた。

 つい先ほどまで、少女は彼女が大好きな少年を探して、城の中にいたはずだった。
 もしかしたら、探していたのは少年ではなかったかもしれない。
 少女には、少年と同じくらい大好きな女の子がいたからだ。

 少女が城のバルコニーに出た瞬間、何かに足をからめとられた。

 まるでバルコニーが底なし沼になってしまったかのように、もがけばもがくほど少女の身体は、その沼に沈んでいった。


 そして、気づくと少女は異世界にいた。


 そこが異世界だと気づいたのは、まずは少女が知るどんな建物よりも高い建築物が立ち並んでいたからだった。

 それから、ケーカンと名乗る二人組の同じ青い服を来た男にジジョーチョーシュされ、コーバンというところに連れて行かれたからだった。


「富嶽サトシって、もしかして例の神隠し親子の、父親の方じゃないですか?」

「あぁ、そういえば確かそんな名前だったな」

「そーそー、神隠しって何かわかんないけど、異世界転移のこと言ってるんだったら、サトシはその親子のお父さんの方。
 子どもの方は秋月レンジ。
 レンジはわたしたちの世界にまだいるけど、サトシは戻ってきてるよね?
 それからショウゴは、レンジの友達で、その神隠し? ってやつになってるよ」


「異世界転移って何だ?」

「アニメとかでありますよね?
 現代の中高生が、ある日突然剣と魔法のファンタジー世界に飛ばされちゃうやつ」

「魔神英雄伝ワタルみたいなことか?
 武者ガンダムマークスリーが、スダドアカワールドに飛ばされて、ナイトガンダムになったみたいなことか?」

「すみません。古すぎて全然わかんないです。スパロボには出てましたけど」


 少女はため息をつきながら、彼女が大好きな少年を思いだしていた。

 少女の世界では異世界からの転移者を招く準備がしっかりと整えられていたとはいえ、いくら自分とあの子がすぐに出迎えたとはいえ、突然異世界に転移させられても少年は驚きこそしたが、このようなトラブルは起こさなかった。

「レンジは本当にすごいなぁ……」


 そして、少女は他にもこの世界に知り合いがいたことを思い出した。

「雨野タカミ(あめの たかみ)か、ミカナか、山汐メイ(やましお めい)でもいいよ。
 最悪、返璧マヨリ(たまがえし まより)か白璧リサ(しらたま りさ)でも」


 すると、ケーカンたちは急に慌ただしく電話というものをかけはじめた。
 遠くにいる人と話すことができるマキナらしい。
 どうやら、返璧マヨリ、という名前に怯えているように見えた。


「君、名前は何だったかな?」

 ケーカンの問いに少女は、


「ピノア・カーバンクル」


 そう答え、

「マヨリはわたしのこと知らないかもだけど、マヨリの彼氏のタカミとその妹のミカナは絶対わたしのこと知ってるから。
 早く迎えに来てって伝えてよ」

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