「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな

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【第三部 異世界転移奇譚 RENJI 3 - PINOA - 】「やったね!魔法少女ピノアちゃん大活躍!!編」

第195話 兄貴ってやつは

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「実際にぼくは一度死ぬんだ。仮死状態って感じかな。
 じゃないと、相手にミカナになったぼくを殺したと思わせることができないから。
 たぶん、ピノアがそいつを始末してくれる。
 真依かタカミから連絡をもらったら、ぼくの身体が再生しはじめるようにして。
 それから、そいつがミカナになったぼくから、力を奪ったと思わせるように、力の偽物、何にもすることができない、ただ力を得たと錯覚できるだけの力を与えてほしい」

 それしか方法はなかった。
 もっと良い策があるかもしれなかったが、時間がなかった。
 今まさにミカナは命を狙われているかもしれないのだ。
 もっと早く皆に打ち明けていればよかったのだろうか。
 だが、そんなことをしていたら、自分だけでなく皆が、来るかどうかもわからないミカナの危機に怯えて暮らすことになっていただろう。

「痛みを感じないようにしてくれると助かるかな」

 メイは、ツムギの身体をミカナに変えた。
 痛みを感じず、どんな致命傷を負っても死なない身体にした。
 偽物の力を与えた。

「じゃあ、あとは、すでにミカナのそばにそいつがいるかもしれないから、ミカナとぼくの現在地を入れ換えてもらうだけかな」

 ツムギは、仮死状態になるだけとはいえ一度死ぬというのに、どんな殺され方をするかもわからないというのに、笑っていた。

「きっとこういうときに言うんだろうね。
 一度言ってみたかったし、言うなら今しかないだろうから言おうかな」

 ツムギは、

「兄貴ってやつは、妹の前ではかっこつけたい生き物なんだよ」

 タカミがミカナにしか言わないと決めていた言葉を言った。

 最高にかっこいいよ、とメイは思った。

「ありがとう。大好きだよ」

 メイはそう言って、ミカナとツムギの現在地を入れ換えた。


 明かりもつけず、暗い部屋でひとりピノアに怯えていたミカナの目の前の光景が一瞬で変わった。
 何度も遊びにきたことがあるメイたちの家の中が広がっていた。

 何が起きたのかわからなかった。

「タカミお兄ちゃんだけじゃなくて、うちのお兄ちゃんもなかなかいい男だったよ。
 セリフ丸パクリだったけど」

 そんなミカナに、メイは言った。

「ピノアは、ミカナを殺しに来たわけじゃないよ。あの子がそんな子じゃないのは、ミカナもわかってるよね?
 自分の意思でこっちに来たわけじゃないみたいだから、あの子にも気づかせないように巧妙に、あの子を交通手段にして、こっちに来た誰かがいる。
 その誰かが、ミカナを殺して、ミカナが持ってる力を奪おうとしてる。
 だから今、ミカナの部屋には、ミカナそっくりの姿になったうちのお兄ちゃんがいるんだ」

 なぜメイがピノアが来たことを知っているのか、なぜ自分のかわりにツムギがあの部屋にいるのか、ミカナにはまったくわからなかった。

「あ、うちのお兄ちゃんには死なない身体をあげたから、全然心配いらないよ。
 でも、うちのお兄ちゃんにはその誰かは倒せないから、念のためミカナが持ってる力を真依に移すね。
 それから、わたしが持ってる力もタカミお兄ちゃんに移す。
 全部終わったら、ピノアにこの世界をいっぱい見てもらおう?
『世界の理を変える力』なんてものはあっちゃいけないから、ピノアをあっちに帰してあげたら、力の存在自体をタカミお兄ちゃんと真依に消してもらお?」


 ミカナは、メイはすべてを知っていて、ずっと黙っていてくれたのだと気づいた。
 そして、メイもまた同じ力を持っていた。
 いつかこんな時がやってくるだろうと予測していたのだとわかった。

 その時が来たら、自分を守ってくれるために、ずっと力を持っていることを隠していたのだと。

 ミカナは涙が溢れて止まらなかった。


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