「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな

文字の大きさ
207 / 271
【第三部 異世界転移奇譚 RENJI 3 - PINOA - 】「やったね!魔法少女ピノアちゃん大活躍!!編」

外伝「ピノアとミカナ」⑥ー1

しおりを挟む
 ミカナとピノアは、その日も相も変わらず、クーラーがガンガンに効いたミカナの部屋で、人を本当に心底駄目にするソファーに身を預けていた。

 なぜかその日も昨日に引き続き、ふたりとも魔法少女風のコスプレをしていたのだが、ミカナは昨日のように無理矢理着させられたわけではなかった。
 彼女は、ピノアが瞬間移動してくるときには、おそらくまた魔法少女になっているだろうと考え、午前中から魔法少女の格好で待ち構えていたのだ。

 だが、午前中からというのは、やりすぎだったかもしれない。
 久しぶりにコスプレしている自分を自撮りしたりするのは楽しかったし、我ながらかわいかったりもしたのだが、いつピノアがやってくるかわからなかったため、昼食の際もダイニングで三つ編みメガネ魔法少女のコスプレをしたままだった。
 そんなミカナを目の前にした兄タカミとその妻マヨリが必死に笑いをこらえていたからだ。

 その後、午後2時すぎに瞬間移動してきたピノアが、

「あれ? なんでミカナ、部屋でひとりでそんな恥ずかしいカッコしてるの? またエロい自撮りでもしてたの?」

「お前が着てくると思ったからだよチクショー!!」

 キャミソールにパンツという、いつも通りの格好だったからだ。

 その日はミカナの方が逆に、ピノアの身ぐるみをはぎ、

「もうお嫁にいけない……」

 無理矢理魔法少女のコスプレをさせたのである。

「大丈夫。あんた、キャミソールにパンツだけでオリンピックに出てたから。あのときからもう、お嫁にいけないのは確定してるから」

「いいもん! いざとなったら、タカミの髪の毛から魔法でクローン作れるからいいもん!」

「うちのお兄ちゃんのクローンを勝手に作んな。レンジくんかサトシさんの髪の毛使え」

「髪の毛から一気に今のタカミと同い年にもできるし、わたしのことが大好きでたまらなくなるように洗の……大好きにすることもできるんだからね!」

「おいこら、今、洗脳って言おうとしただろ。まじでやべー魔法使いだな、マッドウィザードか」

 というやりとりがあった後、ふたりはソファーに身をゆだね、そのまま動けなくなってしまったのである。


 テレビではその日もオリンピック中継が続いており、

「まーだオリンピックってやつやってるんだね~」

 と、ピノアは興味なさそうに言った。

「もう二度と参加したらだめだからね」

 一応釘を刺しておくことにしたが、

「なんかさ、毎日テレビがこんなだと、オリンピック期間中の3週間をもう何万回も繰り返してるんじゃないかって思うよね」

 ピノアが急に怖いことを言い出した。

「わたしたちが出てる2クールのアニメのうちの8話分が、ほぼほぼ同じ内容になってそう」

「いい? ピノア。エンドレスエイトなんてなかったの。消失の映画と長門有希ちゃんのアニメがよかったからいいの」

「あれ、いつになったら消失の続き観れるの?」

「知らんし。わたしも観たいけど」

 ピノアは本当にすっかりオタク女子になっており、1クールや2クールアニメならサブスクで毎日1作くらいのペースで観たりしていた。最近はひぐらしに夢中のようだった。
 異世界人にとって、日本のアニメは本当にヤックデカルチャーだったんだろうなと思う。

「そういえば、ピノアがこっちの世界に来て、驚いたりハマったりしたことって他に何があった?」

 ミカナは、アニメや特撮の他にピノアが驚いたことがふと気になったので訊いてみることにした。

「うーん、やっぱり物価かなー。レンジがわたしやステラに初めて会ったときにも、とんでもない大金持っててびっくりしたけど。こっちの物価はあっちの世界の100倍だから、最初はほんとドン引きした」

 この世界でプレステ5やソフトを2~3本買うお金で、異世界では城下町の一等地に庭付きの一軒家が買えてしまうらしい。
 異世界にいたときはずっとジパングの城に住まわせてもらっていたから、ミカナはそのことを知らなかったのだ。
 それは確かにドン引きするな、とミカナは思った。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

『召喚ニートの異世界草原記』

KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。  ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。  剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。  ――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。  面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。  そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。  「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。  昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。  ……だから、今度は俺が――。  現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。  少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。  引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。 ※こんな物も召喚して欲しいなって 言うのがあればリクエストして下さい。 出せるか分かりませんがやってみます。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

処理中です...