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【第三部 異世界転移奇譚 RENJI 3 - PINOA - 】「やったね!魔法少女ピノアちゃん大活躍!!編」
外伝「ピノアとミカナ」⑧
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オリンピックの閉会式が終わり、開会式にループすることなく無事に終わっても、別に一度もループしたりはしていなかったのだが、
「やっと終わったねー」
「長かったー。ようやくテレビが普通に戻るよー」
ミカナとピノアはキャミソールにパンツ姿で、その日も「もはや以下略」だった。
「ピノアは、オリンピック観るの、今回がはじめてだったわけだけどさ」
ミカナは、オリンピックに限らず、
「子どもの頃から何度か観てるわたしが思うに、名前くらいは知ってるけど、どんな人かよく知らない人たちの試合を一方的にただ見せられてるだけだから、わたしたちには合わないんだと思うんだよね」
スポーツ中継を見るたびに思っていたことを口にした。
「それだよ、ミカナ! それ、すっごいわかる!!」
普段は体を起こすことすら億劫にしているピノアは、珍しく体を起こすと、
「最初はひとりかふたりしかいなかった部員が段々増えていくとか、部員たちの日常生活とか、抱えてる悩みとかコンプレックスとか、家庭の事情とかを知りたいんだよ!!」
唾を飛ばしながら興奮気味にそう言った。
「そうそう、まぁオリンピック選手は部員じゃないんだけど。みんな大人だけど。いざこざが起きて対立したり、でもやっぱりお前すげーって認めあったりとか、そういうのがないとだよね」
「これ本当に練習なのかよ、みたいなことが、いざというときに役立つ的な仙人みたいなコーチか、こいつ部員全員殺す気か、みたいな鬼コーチがいないと絶対ダメ」
「そう! それそれ!! まさにそれ!!! だからさ、結局は」
『タッチが最強なんだよ!!』
ふたりは別にボケているわけではなく、本気で思ったことや感じたことを熱く喋っているだけであり、自分たちが超絶バカっぽい会話をしていることに全く気づいていなかった。
ふたりの世代的に、そこに入るのは本来タッチではなく、黒子のバスケとか、ちょっと古いけどスラムダンクとかになるはずなのだが。
まぁ、ふたりとも見た目は十代のままでも中身は40だったり、ピノアにいたっては4000歳を過ぎているから、世代とかはもはや関係ないのかもしれなかった。
ちなみに、ふたりが望む形での放送になると、2~4時間程度の尺の中で、試合を生中継しつつ、テレビ画面をいくつかに分割し、選手ひとりひとりのバックボーンがわかるようなドキュメンタリー番組を流していなければ成立しないだろう。
甲子園の試合と熱闘甲子園のドキュメンタリー部分が同時に放送されているのを想像してもらえるとわかりやすいだろうか。
おそらく、プロの試合にそんなものを望んでいる者はほとんどいないだろう。
ガチなファンに、じゃあ漫画でも読んでろって言われかねない。いや、100パー言われる。
「ドラマとか映画ならウォーターボーイズかな」
ピノアが思いの外乗っかってきてくれたので、いつの間にかミカナも前のめりになっており、
「ウォーターボーイズって何?」
「男子高校生がシンクロするの。山田孝之くんのドラマがオススメだよ。海パン一丁のスーパーイケメン大戦にヨダレ出そうになる。てか出る。ダラダラ出る」
興奮気味どころか、思い出しただけでヨダレを垂らしていた。
「山田孝之って全裸監督の人だっけ? 菅田将暉のラジオに一回ゲストに来たけど、絡みづらすぎて生放送中に出禁くらった人だよね?」
全裸監督は観てるのかよ、いきなりすごいとこから入ったな、とミカナは思った。
てか、菅田くんのラジオのゲスト回聴いてるとか、もうガチなファンじゃん、と。
「わたし、ライダーと戦隊出身の俳優の活躍は全部追いかけることにしてるから。どっちもまだ全部観れてないけど。でも将暉のラジオはやばい。桃李がゲストで来たときとか本気でやばい」
ミカナは、ピノアが俳優を下の名前で呼んでいることを知り、さすがにちょっと引いた。
あと絶対、こいつラジオは違法アップロードされたのを聴いてるなと思った。
ふたりのそのお馬鹿なやりとりは深夜まで続いた。
最後にはふたりともすっかり疲れはててしまい、人を本気で心底駄目にするソファーにいつもとは違うグッタリした形で身を委ねていた。
「……えーっと、あれ? なんだっけ? オリンピックの開会式まで、オロバスちゃんの魔法で時を遡ればよかったんだっけ?」
ピノアは眠そうにまぶたを指でこすりながら言った。
オロバスというのは、ピノアのことを一番かわいがっている、時を司る精霊の名前だ。ふたりは、ピノピノ、オロバスちゃん、と呼び合う仲で、異世界で精霊とそこまで仲が良くなった魔法使いはピノアひとりだけだった。
「うん、確か……開会式まで戻したらよかったと思う……」
ミカナも眠たくなってしまっていたから、適当にそんな返事をしてしまった。
その翌朝、クーラーでガンガンに冷えた部屋で目を覚ましたふたりは盛大に風邪を引いており、テレビでは終わったはずの東京オリンピックが、何故かまだ続いていた。
「やっべー。まじでこれループしてるじゃん……」
「昨日、確か閉会式してたよね……?」
「ピノア……今が何万回目のループかわかる……?」
「そんなの、わたしにわかるわけないじゃん……」
幸いなことに、ふたりの東京オリンピックは、そのときはまだ二周目であった。
だが、その後ふたりは56億7000万回も閉会式の夜に同じ過ちを繰り返すことになる。
そのループから抜け出す頃、ふたりは「タッチもいいけど、オリンピックもいいよね」と心変わりし、3年後や8年後、12年後のオリンピックを思いっきり堪能することができるようになるのだが、それは気が遠くなるほど先のお話。
「やっと終わったねー」
「長かったー。ようやくテレビが普通に戻るよー」
ミカナとピノアはキャミソールにパンツ姿で、その日も「もはや以下略」だった。
「ピノアは、オリンピック観るの、今回がはじめてだったわけだけどさ」
ミカナは、オリンピックに限らず、
「子どもの頃から何度か観てるわたしが思うに、名前くらいは知ってるけど、どんな人かよく知らない人たちの試合を一方的にただ見せられてるだけだから、わたしたちには合わないんだと思うんだよね」
スポーツ中継を見るたびに思っていたことを口にした。
「それだよ、ミカナ! それ、すっごいわかる!!」
普段は体を起こすことすら億劫にしているピノアは、珍しく体を起こすと、
「最初はひとりかふたりしかいなかった部員が段々増えていくとか、部員たちの日常生活とか、抱えてる悩みとかコンプレックスとか、家庭の事情とかを知りたいんだよ!!」
唾を飛ばしながら興奮気味にそう言った。
「そうそう、まぁオリンピック選手は部員じゃないんだけど。みんな大人だけど。いざこざが起きて対立したり、でもやっぱりお前すげーって認めあったりとか、そういうのがないとだよね」
「これ本当に練習なのかよ、みたいなことが、いざというときに役立つ的な仙人みたいなコーチか、こいつ部員全員殺す気か、みたいな鬼コーチがいないと絶対ダメ」
「そう! それそれ!! まさにそれ!!! だからさ、結局は」
『タッチが最強なんだよ!!』
ふたりは別にボケているわけではなく、本気で思ったことや感じたことを熱く喋っているだけであり、自分たちが超絶バカっぽい会話をしていることに全く気づいていなかった。
ふたりの世代的に、そこに入るのは本来タッチではなく、黒子のバスケとか、ちょっと古いけどスラムダンクとかになるはずなのだが。
まぁ、ふたりとも見た目は十代のままでも中身は40だったり、ピノアにいたっては4000歳を過ぎているから、世代とかはもはや関係ないのかもしれなかった。
ちなみに、ふたりが望む形での放送になると、2~4時間程度の尺の中で、試合を生中継しつつ、テレビ画面をいくつかに分割し、選手ひとりひとりのバックボーンがわかるようなドキュメンタリー番組を流していなければ成立しないだろう。
甲子園の試合と熱闘甲子園のドキュメンタリー部分が同時に放送されているのを想像してもらえるとわかりやすいだろうか。
おそらく、プロの試合にそんなものを望んでいる者はほとんどいないだろう。
ガチなファンに、じゃあ漫画でも読んでろって言われかねない。いや、100パー言われる。
「ドラマとか映画ならウォーターボーイズかな」
ピノアが思いの外乗っかってきてくれたので、いつの間にかミカナも前のめりになっており、
「ウォーターボーイズって何?」
「男子高校生がシンクロするの。山田孝之くんのドラマがオススメだよ。海パン一丁のスーパーイケメン大戦にヨダレ出そうになる。てか出る。ダラダラ出る」
興奮気味どころか、思い出しただけでヨダレを垂らしていた。
「山田孝之って全裸監督の人だっけ? 菅田将暉のラジオに一回ゲストに来たけど、絡みづらすぎて生放送中に出禁くらった人だよね?」
全裸監督は観てるのかよ、いきなりすごいとこから入ったな、とミカナは思った。
てか、菅田くんのラジオのゲスト回聴いてるとか、もうガチなファンじゃん、と。
「わたし、ライダーと戦隊出身の俳優の活躍は全部追いかけることにしてるから。どっちもまだ全部観れてないけど。でも将暉のラジオはやばい。桃李がゲストで来たときとか本気でやばい」
ミカナは、ピノアが俳優を下の名前で呼んでいることを知り、さすがにちょっと引いた。
あと絶対、こいつラジオは違法アップロードされたのを聴いてるなと思った。
ふたりのそのお馬鹿なやりとりは深夜まで続いた。
最後にはふたりともすっかり疲れはててしまい、人を本気で心底駄目にするソファーにいつもとは違うグッタリした形で身を委ねていた。
「……えーっと、あれ? なんだっけ? オリンピックの開会式まで、オロバスちゃんの魔法で時を遡ればよかったんだっけ?」
ピノアは眠そうにまぶたを指でこすりながら言った。
オロバスというのは、ピノアのことを一番かわいがっている、時を司る精霊の名前だ。ふたりは、ピノピノ、オロバスちゃん、と呼び合う仲で、異世界で精霊とそこまで仲が良くなった魔法使いはピノアひとりだけだった。
「うん、確か……開会式まで戻したらよかったと思う……」
ミカナも眠たくなってしまっていたから、適当にそんな返事をしてしまった。
その翌朝、クーラーでガンガンに冷えた部屋で目を覚ましたふたりは盛大に風邪を引いており、テレビでは終わったはずの東京オリンピックが、何故かまだ続いていた。
「やっべー。まじでこれループしてるじゃん……」
「昨日、確か閉会式してたよね……?」
「ピノア……今が何万回目のループかわかる……?」
「そんなの、わたしにわかるわけないじゃん……」
幸いなことに、ふたりの東京オリンピックは、そのときはまだ二周目であった。
だが、その後ふたりは56億7000万回も閉会式の夜に同じ過ちを繰り返すことになる。
そのループから抜け出す頃、ふたりは「タッチもいいけど、オリンピックもいいよね」と心変わりし、3年後や8年後、12年後のオリンピックを思いっきり堪能することができるようになるのだが、それは気が遠くなるほど先のお話。
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