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「だよねぇ。あの子のためにも、それは避けたいよねぇ。警察の中にも足切村出身の人はいるだろうし、わたしたちと同じ目を持った人がいるとは思うんだけど、目のことは隠してるだろうしなぁ」
「そういうのが通用するのは、FBIだけでしょ。超能力捜査官がほんとにいるのかどうか知らないけど」
「規制線の中にズカズカ入っていってさ、この遺体は田中大輔さん、こっちは木村学さん、この人は小林亮太さん、なんてやったら、わたしたちが疑われちゃうよね」
「姉さんと萌衣さんの同級生の花野さんだっけ。駐在の。あの人に教える?」
「だめだよ。あいつ、最後に出てきた遺体の池田祥子さんを殺してるもん。撲殺。DV彼氏だったみたい。死ぬまで殴ったり蹴ったりするのは酷いよね」
「どんな殺し方をしても殺人は殺人だけど、それは引くなぁ。いい人そうに見えたけど、人は見かけによらないね」
イルマとエミリは、警察にどうやって死体の身元や犯人を教えるかについては、一旦保留することにした。
「同級生っていうと、あんなやつばっかじゃなくて、漫画家がひとりいるよ。あれ?漫画原作者だったかな?何が違うのかよくわかんないけど」
「漫画原作者は漫画のストーリーを考える人。脚本までの人もいるし、ネームまでって言ってもわからないか、下書きの前のコマ割りまでやるひともいる。大体ネームまでの人が多いかな」
「あ、じゃあ、それだ。塗壁木綿(ぬりかべ もめん)ていう人、知ってる?」
「『アリオリ絶対許さないマン』の人じゃん」
「そんな漫画じゃなかったと思うけど……」
塗壁木綿は、高校生時代から週刊少年漫画雑誌で連載を始めた漫画原作者で、連載デビュー作でもあり、アニメ化もされた「サイ☆シス ~PSYchokinesis SISters~」は、今やその雑誌の看板漫画になっていた。
漫画がアニメ化されるとき、昨今は1クールか2クールだけ放送し、好評なら1~2年後に続きをまたアニメ化するというパターンがよくあるが、1雑誌に一作は、ワンピースやコナンのように何年も何十年も毎週アニメが放送される作品がある。
サイ☆シスはそのタイプの漫画とアニメであり、アニメは原作漫画に追い付きそうになると、かならず引き伸ばしのためにグダグダな展開にするか、アニメオリジナルの話が展開される。
塗壁木綿は、そういうアニオリ回が放送される直前に、アニオリキャラと全く同じ見た目、同じ名前のキャラを登場させ、アニメと矛盾する話や設定を雑誌連載のストーリーに組み込んではすぐに死なせたりして、原作ファンのヘイトをアニメに向けさせ、アニメの脚本家や監督、プロデューサーを悩ませることで有名な漫画原作者だった。
「ふーん、だからアニオリ絶対許さないマンなんだ?」
「そう。しかも、アニオリ回の脚本なんて、原作者は事前に目を通さないはずなんだよ。塗壁木綿もそう。漫画原作者だから、作画は当然別の漫画家がやってるんだけど、他にも何作も原作を担当してるからめちゃくちゃ忙しいはずなんだよね。でも、狙い済ましたかのようにそれをやってくるらしい」
要するに、一言で言えば、非常に先見の明がある性格が悪い原作者だった。
「まぁ、でも、あの娘(こ)ならそれくらいのこと、やるかな」
「あの娘?もしかして女の人なの?」
「うん。あの娘、この村の出身だし。今も厩戸見市に住んでるんだよ」
「もしかして、萌衣さんみたいな特殊な力を持ってたりする?」
塗壁木綿は未来予知のような力を持っているのかもしれないとイルマは思った。
だから、アニオリ回の放送直前にそれを潰しにかかるような内容の原作を用意できるのかもしれないと。
そういえば、サイ☆シスに出てくるキャラクターは皆、そのタイトル通り様々な超能力を持っているのだが、その中には萌衣の力によく似たものがあった。
「あの娘に頼もうか?」
「何を?サインは確かにほしいけど」
「違うよ。被害者の人たちの名前や死因とか、犯人の名前を漫画に組み込んでもらうの。何作も同時にやってるんでしょ?」
「9作あったと思う」
「池から出てきた死体と同じ数だね。全部の漫画で書けちゃうね」
まるで、今日、足切池から身元不明の死体が9体発見されることがわかっていて、そのために9本も連載を抱えていたかのようで、イルマは塗壁木綿という漫画原作者が怖くなった。だが、さすがにそれは偶然だろう。
だが、つい先程のセリフが姉の声ではないことに気付き、イルマはあわてて後ろを振り返った。
そこには、
「もう死体は片付けられちゃったんだ?でも、死体の名前はエミリちゃんが教えてくれるってことでいいんだよね?」
サイ☆シスのヒロイン、「茶川ひより」というキャラクターにそっくりの、地雷系メイクの女の人がいた。
「ひよりじゃん。高校卒業以来かな?めっちゃひさしぶりだね」
「え~、成人式の日にも会ってるよ~。声かけてくれなかったの超寂しかった…」
「あっ、ごめんごめん。成人式にも振り袖なのにそのメイクで来てたから、とりあえず見て見ぬふりすることにしてたら、そのまま話しかけずに帰っちゃった」
「誰からもカラオケとか飲みとか誘われなかった……あれは行ってはいけない成人式だった……」
どうやら、塗壁木綿という漫画原作者は、自分を代表作のヒロインに投影させるだけではなく名前まで同じにしていたらしい。
キャラクターと同じなのは名前だけでなく、苗字も同じで茶川というらしかった。
もう何年もずっと、いかにも性格の悪そうな顔をしているか、いつも怒っているような顔をした太った中年男性を想像していたから、あまりのビジュアルの違いにイルマは腰が抜けそうになった。
「もうさ、全部の漫画でこの村がモデルの土地に、わたしが原作の主人公たちが集まるクロスオーバー回を描いてもらっててさ、あとは被害者と犯人の名前をこの目で見に来るだけだったんだよね。今は、作画の方も大体終わってて、遺体と犯人の名前だけ待っててもらってるところ。1個だけ、ガチで締め切りがやばくて、雑誌を印刷する機械を停めてもらってたりする」
さらっととんでもないことを言う人だった。
出版社にとって、それは相当な損害になるんじゃないだろうか。
「せっかく来たのに結局見れなかったけど。このままだと間違いなく萌衣ちゃんや萌衣パパ、萌衣ママが疑われちゃうし、エミリちゃんが教えてくれたらすぐに作画の人たちに被害者と犯人の名前書いてもらうよ」
アニオリを絶対に許さない漫画原作者・塗壁木綿こと茶川ひよりは、嵐のようなか現れて、エミリから欲しい情報を聞き出すと、嵐のように去っていった。
「そういうのが通用するのは、FBIだけでしょ。超能力捜査官がほんとにいるのかどうか知らないけど」
「規制線の中にズカズカ入っていってさ、この遺体は田中大輔さん、こっちは木村学さん、この人は小林亮太さん、なんてやったら、わたしたちが疑われちゃうよね」
「姉さんと萌衣さんの同級生の花野さんだっけ。駐在の。あの人に教える?」
「だめだよ。あいつ、最後に出てきた遺体の池田祥子さんを殺してるもん。撲殺。DV彼氏だったみたい。死ぬまで殴ったり蹴ったりするのは酷いよね」
「どんな殺し方をしても殺人は殺人だけど、それは引くなぁ。いい人そうに見えたけど、人は見かけによらないね」
イルマとエミリは、警察にどうやって死体の身元や犯人を教えるかについては、一旦保留することにした。
「同級生っていうと、あんなやつばっかじゃなくて、漫画家がひとりいるよ。あれ?漫画原作者だったかな?何が違うのかよくわかんないけど」
「漫画原作者は漫画のストーリーを考える人。脚本までの人もいるし、ネームまでって言ってもわからないか、下書きの前のコマ割りまでやるひともいる。大体ネームまでの人が多いかな」
「あ、じゃあ、それだ。塗壁木綿(ぬりかべ もめん)ていう人、知ってる?」
「『アリオリ絶対許さないマン』の人じゃん」
「そんな漫画じゃなかったと思うけど……」
塗壁木綿は、高校生時代から週刊少年漫画雑誌で連載を始めた漫画原作者で、連載デビュー作でもあり、アニメ化もされた「サイ☆シス ~PSYchokinesis SISters~」は、今やその雑誌の看板漫画になっていた。
漫画がアニメ化されるとき、昨今は1クールか2クールだけ放送し、好評なら1~2年後に続きをまたアニメ化するというパターンがよくあるが、1雑誌に一作は、ワンピースやコナンのように何年も何十年も毎週アニメが放送される作品がある。
サイ☆シスはそのタイプの漫画とアニメであり、アニメは原作漫画に追い付きそうになると、かならず引き伸ばしのためにグダグダな展開にするか、アニメオリジナルの話が展開される。
塗壁木綿は、そういうアニオリ回が放送される直前に、アニオリキャラと全く同じ見た目、同じ名前のキャラを登場させ、アニメと矛盾する話や設定を雑誌連載のストーリーに組み込んではすぐに死なせたりして、原作ファンのヘイトをアニメに向けさせ、アニメの脚本家や監督、プロデューサーを悩ませることで有名な漫画原作者だった。
「ふーん、だからアニオリ絶対許さないマンなんだ?」
「そう。しかも、アニオリ回の脚本なんて、原作者は事前に目を通さないはずなんだよ。塗壁木綿もそう。漫画原作者だから、作画は当然別の漫画家がやってるんだけど、他にも何作も原作を担当してるからめちゃくちゃ忙しいはずなんだよね。でも、狙い済ましたかのようにそれをやってくるらしい」
要するに、一言で言えば、非常に先見の明がある性格が悪い原作者だった。
「まぁ、でも、あの娘(こ)ならそれくらいのこと、やるかな」
「あの娘?もしかして女の人なの?」
「うん。あの娘、この村の出身だし。今も厩戸見市に住んでるんだよ」
「もしかして、萌衣さんみたいな特殊な力を持ってたりする?」
塗壁木綿は未来予知のような力を持っているのかもしれないとイルマは思った。
だから、アニオリ回の放送直前にそれを潰しにかかるような内容の原作を用意できるのかもしれないと。
そういえば、サイ☆シスに出てくるキャラクターは皆、そのタイトル通り様々な超能力を持っているのだが、その中には萌衣の力によく似たものがあった。
「あの娘に頼もうか?」
「何を?サインは確かにほしいけど」
「違うよ。被害者の人たちの名前や死因とか、犯人の名前を漫画に組み込んでもらうの。何作も同時にやってるんでしょ?」
「9作あったと思う」
「池から出てきた死体と同じ数だね。全部の漫画で書けちゃうね」
まるで、今日、足切池から身元不明の死体が9体発見されることがわかっていて、そのために9本も連載を抱えていたかのようで、イルマは塗壁木綿という漫画原作者が怖くなった。だが、さすがにそれは偶然だろう。
だが、つい先程のセリフが姉の声ではないことに気付き、イルマはあわてて後ろを振り返った。
そこには、
「もう死体は片付けられちゃったんだ?でも、死体の名前はエミリちゃんが教えてくれるってことでいいんだよね?」
サイ☆シスのヒロイン、「茶川ひより」というキャラクターにそっくりの、地雷系メイクの女の人がいた。
「ひよりじゃん。高校卒業以来かな?めっちゃひさしぶりだね」
「え~、成人式の日にも会ってるよ~。声かけてくれなかったの超寂しかった…」
「あっ、ごめんごめん。成人式にも振り袖なのにそのメイクで来てたから、とりあえず見て見ぬふりすることにしてたら、そのまま話しかけずに帰っちゃった」
「誰からもカラオケとか飲みとか誘われなかった……あれは行ってはいけない成人式だった……」
どうやら、塗壁木綿という漫画原作者は、自分を代表作のヒロインに投影させるだけではなく名前まで同じにしていたらしい。
キャラクターと同じなのは名前だけでなく、苗字も同じで茶川というらしかった。
もう何年もずっと、いかにも性格の悪そうな顔をしているか、いつも怒っているような顔をした太った中年男性を想像していたから、あまりのビジュアルの違いにイルマは腰が抜けそうになった。
「もうさ、全部の漫画でこの村がモデルの土地に、わたしが原作の主人公たちが集まるクロスオーバー回を描いてもらっててさ、あとは被害者と犯人の名前をこの目で見に来るだけだったんだよね。今は、作画の方も大体終わってて、遺体と犯人の名前だけ待っててもらってるところ。1個だけ、ガチで締め切りがやばくて、雑誌を印刷する機械を停めてもらってたりする」
さらっととんでもないことを言う人だった。
出版社にとって、それは相当な損害になるんじゃないだろうか。
「せっかく来たのに結局見れなかったけど。このままだと間違いなく萌衣ちゃんや萌衣パパ、萌衣ママが疑われちゃうし、エミリちゃんが教えてくれたらすぐに作画の人たちに被害者と犯人の名前書いてもらうよ」
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