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「はぁ?学校で、誰かからギフトによる攻撃を受けたかもしれない?」
「うん、『次はお前の姉と、足切神社の巫女、そして、茶川ひよりの番だ』って言われた。それだけは覚えてるんだけど……」
「でも、イルマくんはそのギフトの持ち主が男なのか女なのかもわからなくて、生徒なのか教師なのか、学校の外部の人間かすらわからないんだよね?」
「うん。ごめんね。姉さん、萌衣さん。何だか、大事な記憶がスッポリと抜け落ちている気がしてるんだけど、それが何だったのかわかんないんだ」
「エミリちゃんの目で、何か見えないの?イルマくんに何が起きたかとか」
「全然、見えない。何なのこの目。わたしのイルマに何かしたやつがいるのに、それが誰だか何にもわかんないなんて。神の目が聞いて呆れるんだけど!?」
E.O.P.レンズは所詮、人の科学によって産み出された「万能の神の目」を再現したものに過ぎないのだろう。
ギフトは、白目病という風土病が人体に何らかの影響を及ぼして与えた超能力のようなものであり、神の力の一部のようなものかもしれなかった。
神の力によって記憶を操作されたのだとしたら、人の科学では見ることができないのは当然だと思った。
神やそれに等しいような上位次元的存在なんてものが本当にいたらだったが。
神でないとしたら、埋め立て地である厩戸見市や旧・足切村の地下に埋まっている宇宙由来の何かか、隕石か何かに付着していたウィルスが原因だろうと言ったのは、姉だっただろうか。イルマが思ったことがあっただけだったろうか。
宇宙由来でないとしたら、遥か遠い未来から何者かが干渉しているという可能性もなくはない気がした。
「ぼくのためにすごく怒ってくれてるのは嬉しいんだけど、ふたりとも注意してほしいな。どう注意したらいいかもわかんないんだけど。あと、ひよりさんにも教えてあげてほしい。姉さんは連絡先知ってるんだよね?」
「うん、知ってる。一応LINEしとく。あの娘のギフトなら何かわかるかもしれないし」
確かに、未来予知のギフトを持っているであろう彼女なら、姉や萌衣や彼女自身がいつどこで誰に襲われるかわかるかもしれなかった。
3人が足切神社に向かっていたのは、警察の捜査がようやく終わり、規制線が外されたからだった。
以前姉と話していた、足切神社の御神体を、萌衣に見せてもらうためだった。
足切家の人々は皆、神社の社務所と一体になっている家に戻るそうだったが、萌衣はしばらくの間、村戸家にいてくれるそうだった。
いてくれるというより、姉が友人である彼女のそばにいて守りたいという意思が大変強く、彼女がそれに根負けしたと言ったほうが良いかもしれない。
彼女にしてみたら、姉やイルマを守るのは自分の方だと考えているかも知れなかった。どう考えても、ギフトは萌衣の方が強かった。姉のギフトは両手の指を全部使っても、姉が10人増えるだけで、敵のギフト次第では弾除けや肉の壁にしかならない可能性すらあった。
「萌衣さんは、巫女のお仕事はいいんですか?」
「うん。元々お祭りのとき以外、あんまり巫女らしいことはしてなかったし、萌歌と萌音もいるしね」
萌歌と萌音というのは、萌衣の妹の双子らしい。ふたりとも今年二十歳になったばっかりだそうだった。
そういえば、小学校のとき、四つ上の学年にそういう双子がいたなとイルマは今更ながら思い出した。
同時に、名前がなんだか芸能人みたいだなとも思った。
「ほかにも、すずとアリスっていう姉妹がいたりとかしませんよね?茉奈と佳奈とか。愛と亜季とか、真凛、望結、沙羅とか」
「ん?いとこにそういう名前の子たちいるけど、よく知ってるね。あれ?エミリちゃんに話したことあったっけ?」
まさか本当にいるとは思わなかった。
どうやら萌衣は芸能界に疎いらしく、何の疑問も抱いてはいないようだった。
「信じちゃダメだよ。からかわれてるだけだからね」
エミリがそう教えてくれなければ、イルマは信じてしまうところだった。
「もう、なんで言っちゃうかな~。ブラコンエミリん~」
それくらい、萌衣は本当に何の疑問も抱いていないという顔をしていた。
「ここが本殿だよ。足切様の御神体があるところ。御神体っていっても、足切様そのものじゃないんだけどね」
足切様は足首から下だけの足だと聞いていたが、その御神体は無数の足がまるでパズルのように組み立てられており、全長2mほどの人のような姿をしていた。
「神像というよりは、木彫りの仏像みたいだね……」
どこを見てもとにかく足だけで作られてはいたが、確かに仏像のようだった。
「足だけで人を作ると、こんなにも不気味なんだね」
「人じゃなくて神だけどね」
「大昔の日本の神道には神様の像がなかったんだって。仏教の仏像の影響を受けて神仏習合の中で作られるようになって、神道の神をかたどったものを神像って言うようになったの」
一般に、仏像のように寺院で公開されるものではなく、神社に御神体として安置されることが多いという。
「作られたのは居間からちょうど300年前……1725年みたいだね」
姉には、それがわかるようだった。
もちろんイルマにもそれはわかった。
E.O.P.レベル3で、それくらいわかるようになっていたからだ。
「うん、この神社を一晩で作ったっていう初代神主の足切根守左衛門(あしきり ねもりざえもん)さんと、その息子さんの岩戸左衛門(いわとざえもん)さんが作ったみたいだね」
いつの間にか、イルマのレベルがひとつ上がって4になっていた。
学校に行った際の、記憶がない時間の間にレベルが上がるようなことをしたのかもしれなかった。
「材料はヒノキだね。でも、普通の神像と違って、木彫の一木造(いちぼくづくり)じゃないね。足がひとつひとつ作られてて、本当にパズルみたいに組み立てられてる。それに道具を一切使ってない」
「でも、作り方もちゃんとわかるよ。根守左衛門さんの『才子杵司寿(さいこきねしす)』と、岩戸左衛門さんの『羽頭流(ぱずる)』みたいだね」
それがふたりのギフトの名前だったのだろう。
「あれ?今更だけど、これって、わたしたちが見てもいいものなんだっけ?」
神社の御神体は、神霊が宿る物体のことであり、神そのものではない。
神が依り付く「依り代」だ。
「うん、『次はお前の姉と、足切神社の巫女、そして、茶川ひよりの番だ』って言われた。それだけは覚えてるんだけど……」
「でも、イルマくんはそのギフトの持ち主が男なのか女なのかもわからなくて、生徒なのか教師なのか、学校の外部の人間かすらわからないんだよね?」
「うん。ごめんね。姉さん、萌衣さん。何だか、大事な記憶がスッポリと抜け落ちている気がしてるんだけど、それが何だったのかわかんないんだ」
「エミリちゃんの目で、何か見えないの?イルマくんに何が起きたかとか」
「全然、見えない。何なのこの目。わたしのイルマに何かしたやつがいるのに、それが誰だか何にもわかんないなんて。神の目が聞いて呆れるんだけど!?」
E.O.P.レンズは所詮、人の科学によって産み出された「万能の神の目」を再現したものに過ぎないのだろう。
ギフトは、白目病という風土病が人体に何らかの影響を及ぼして与えた超能力のようなものであり、神の力の一部のようなものかもしれなかった。
神の力によって記憶を操作されたのだとしたら、人の科学では見ることができないのは当然だと思った。
神やそれに等しいような上位次元的存在なんてものが本当にいたらだったが。
神でないとしたら、埋め立て地である厩戸見市や旧・足切村の地下に埋まっている宇宙由来の何かか、隕石か何かに付着していたウィルスが原因だろうと言ったのは、姉だっただろうか。イルマが思ったことがあっただけだったろうか。
宇宙由来でないとしたら、遥か遠い未来から何者かが干渉しているという可能性もなくはない気がした。
「ぼくのためにすごく怒ってくれてるのは嬉しいんだけど、ふたりとも注意してほしいな。どう注意したらいいかもわかんないんだけど。あと、ひよりさんにも教えてあげてほしい。姉さんは連絡先知ってるんだよね?」
「うん、知ってる。一応LINEしとく。あの娘のギフトなら何かわかるかもしれないし」
確かに、未来予知のギフトを持っているであろう彼女なら、姉や萌衣や彼女自身がいつどこで誰に襲われるかわかるかもしれなかった。
3人が足切神社に向かっていたのは、警察の捜査がようやく終わり、規制線が外されたからだった。
以前姉と話していた、足切神社の御神体を、萌衣に見せてもらうためだった。
足切家の人々は皆、神社の社務所と一体になっている家に戻るそうだったが、萌衣はしばらくの間、村戸家にいてくれるそうだった。
いてくれるというより、姉が友人である彼女のそばにいて守りたいという意思が大変強く、彼女がそれに根負けしたと言ったほうが良いかもしれない。
彼女にしてみたら、姉やイルマを守るのは自分の方だと考えているかも知れなかった。どう考えても、ギフトは萌衣の方が強かった。姉のギフトは両手の指を全部使っても、姉が10人増えるだけで、敵のギフト次第では弾除けや肉の壁にしかならない可能性すらあった。
「萌衣さんは、巫女のお仕事はいいんですか?」
「うん。元々お祭りのとき以外、あんまり巫女らしいことはしてなかったし、萌歌と萌音もいるしね」
萌歌と萌音というのは、萌衣の妹の双子らしい。ふたりとも今年二十歳になったばっかりだそうだった。
そういえば、小学校のとき、四つ上の学年にそういう双子がいたなとイルマは今更ながら思い出した。
同時に、名前がなんだか芸能人みたいだなとも思った。
「ほかにも、すずとアリスっていう姉妹がいたりとかしませんよね?茉奈と佳奈とか。愛と亜季とか、真凛、望結、沙羅とか」
「ん?いとこにそういう名前の子たちいるけど、よく知ってるね。あれ?エミリちゃんに話したことあったっけ?」
まさか本当にいるとは思わなかった。
どうやら萌衣は芸能界に疎いらしく、何の疑問も抱いてはいないようだった。
「信じちゃダメだよ。からかわれてるだけだからね」
エミリがそう教えてくれなければ、イルマは信じてしまうところだった。
「もう、なんで言っちゃうかな~。ブラコンエミリん~」
それくらい、萌衣は本当に何の疑問も抱いていないという顔をしていた。
「ここが本殿だよ。足切様の御神体があるところ。御神体っていっても、足切様そのものじゃないんだけどね」
足切様は足首から下だけの足だと聞いていたが、その御神体は無数の足がまるでパズルのように組み立てられており、全長2mほどの人のような姿をしていた。
「神像というよりは、木彫りの仏像みたいだね……」
どこを見てもとにかく足だけで作られてはいたが、確かに仏像のようだった。
「足だけで人を作ると、こんなにも不気味なんだね」
「人じゃなくて神だけどね」
「大昔の日本の神道には神様の像がなかったんだって。仏教の仏像の影響を受けて神仏習合の中で作られるようになって、神道の神をかたどったものを神像って言うようになったの」
一般に、仏像のように寺院で公開されるものではなく、神社に御神体として安置されることが多いという。
「作られたのは居間からちょうど300年前……1725年みたいだね」
姉には、それがわかるようだった。
もちろんイルマにもそれはわかった。
E.O.P.レベル3で、それくらいわかるようになっていたからだ。
「うん、この神社を一晩で作ったっていう初代神主の足切根守左衛門(あしきり ねもりざえもん)さんと、その息子さんの岩戸左衛門(いわとざえもん)さんが作ったみたいだね」
いつの間にか、イルマのレベルがひとつ上がって4になっていた。
学校に行った際の、記憶がない時間の間にレベルが上がるようなことをしたのかもしれなかった。
「材料はヒノキだね。でも、普通の神像と違って、木彫の一木造(いちぼくづくり)じゃないね。足がひとつひとつ作られてて、本当にパズルみたいに組み立てられてる。それに道具を一切使ってない」
「でも、作り方もちゃんとわかるよ。根守左衛門さんの『才子杵司寿(さいこきねしす)』と、岩戸左衛門さんの『羽頭流(ぱずる)』みたいだね」
それがふたりのギフトの名前だったのだろう。
「あれ?今更だけど、これって、わたしたちが見てもいいものなんだっけ?」
神社の御神体は、神霊が宿る物体のことであり、神そのものではない。
神が依り付く「依り代」だ。
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