情報迷宮≪実験≫都市アルゴリア -THE NEW WORLD MAKER-

あめの みかな

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#26

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「あの人たちも、ギフトとぼくたちと同じ目を持ってるんだよね」

「そうだね。この村に住んでて、白目病にかかってれば、ギフトを持ってるって考えて間違いないよ」

「あの木島ってひとも?」

「そうだよ。貴島の舎弟みたいなやつも」

あの小男のことだろう。

「めちゃくちゃ背が小さいやついたでしょ?あいつは子供のころから貴島の舎弟をやってるんだけど、ギフトで貴島に身長をあげてるからね」

だから木島の身長は2メートルを超えていたのかと思った。
イルマの記憶の中にある彼は180cmほどだったからだ。
20cm以上身長を木島に捧げたとすれば、ふたりの高すぎる身長と低すぎる身長にも説明がつく。

「木島の体が、格闘漫画に出てきそうなくらい筋肉ムキムキムキンクスのマッチョマンだったのは、他の舎弟が木島の脂肪を全部筋肉に変えたからだしね」

木島家は村の権力者の家であり、木島玲はその跡継ぎだった。
だが、彼は舎弟たちを支配しているようには見えなかった。
わらじや紙すきの作業場にあるテレビでずっとガンニ○ルを流していること以外は、だったが。
むしろ慕われているように見えた。
おそらく、舎弟たちは、自ら身長を彼に捧げたり、彼の脂肪をすべて筋肉に変えたりしたのだろう。

「イルマくん、玲くんのことだけは、敵にまわしちゃだめだよ」

「どうして?」

許嫁だから、という理由ではなさそうだった。
やはり舎弟たちを支配しているのだろうか。

「あの子のギフトは特別なの。E.O.P.レンズと連動してる珍しいギフトなの。少し前に、近くに山なんてないのに、熊がいきなり民家の中に現れたっていう事件が何件かあったでしょ?」

ちょうど1ヶ月くらい前のことだ。
確かにそういう事件があった。

「あれは玲くんがやったの」

「どうやってそんなこと……」

「木島だったら簡単なんだよ。人里に現れて人を襲った熊のニュースを見るでしょ。テレビで流れた監視カメラやドライブレコーダーの映像からその個体の特徴をDNAレベルで覚えるの。その特徴を、神の目で追いかけるんだよ。今どこにいるのか、経度と緯度さえわかれば、熊が目の前にいなくても、あいつは別の場所に転送できるんだ」

「山に帰すんじゃなくて、民家の中に送ったったこと?」

「そうだよ」

「どうしてそんなことを?」

「熊を送り込まれた何軒かの家の人は、猟友会に熊を殺すなってクレームを入れるような人だったから。熊のことをプーさんやぬいぐるみと勘違いしてる人たちだったの。熊に殺された人や、これから殺されるかもしれない人の命よりも、人を殺した熊の命の方が大事な人だったから、どれだけ危険な動物なのか、身をもってわからせたの」

「身をもってわからせるというよりは、熊と共存してみろよって意味かも。あいつは、そういう人たちが自分や家族が熊に襲われても、熊を殺すなって言えるかどうかを試したんだよ。もちろんみんな宗旨替えすることになったみたいだけどね」

正気の沙汰ではなかった。
それに、そういう動物愛護精神を持つ人を、木島はどうやって見つけたのか、イルマには不思議だった。

「必要なのは、E.O.P.レベル20以上の目。そのうちイルマにも見えるようになるよ。目の前にいる相手がどこに住んでるか、どの政党を支持してるか、どういう思想を持って生きてるのかが見えるようになる。木島は仕事でときどき東京や大阪に行くことがあるんだ。N市やY市にも行くこともたくさんある。だから、街を歩いてたら、行きすぎた動物愛護精神を持ってるかどうかも見えるんだよ」

テレビに映っている熊の個体の特徴がDNAレベルでわかったり、その熊の現在の位置が経度と緯度でわかったりするのにも驚かされたが、人を見るだけでそこまでの情報が入ってくるというのは、木島も姉も大変な思いをしているのだなと思わされた。
本当に情報の迷宮のような都市にふたりはいるのだ。
そして、スコアを貯めレベルを上げ続けていけば、イルマもそのアルゴリアと呼ばれる情報迷宮都市に迷い込むことになるのだろう。

「もちろん、熊の居場所が追跡できたみたいに、その人の現在の居場所も追跡できるの。だから玲くんはその人が帰宅する夕食時を狙って、その家に生きてる熊をプレゼントしたの」

「そんなすごい力があるなら、もっといいことに使えばいいのに」

イルマはそう思った。思ったことが口からこぼれていた。

「あいつも最初はいいことに使ってたよ。高校生のときはね。指名手配犯のポスターを見るだけで、その潜伏先を特定してた。わたしにもできたから一緒にやってた」

「そのときは、わたしもエミリちゃんと玲くんと一緒にいたんだ。白目病にかかる前だったし、目の手術はしてなかったから、ふたりみたいなことは出来なかったけど。ちょっとした部活動みたいだったよね」

「そうだね。あの頃は3人で過ごすのが楽しかった。わたしたちは、懸賞金がかかってる指名手配犯を優先的に狙って通報してたんだ。そんなのポスターを見ればすぐにわかるから。うちの親が失踪した後だったから、木島も萌衣も懸賞金を全部わたしにくれてた。イルマは知らないかも知れないけど、わたしは本当はバイトもしなくてよかったし、就職もしなくてもいいくらいのお金を持ってるんだよ。イルマの通帳にもたくさんお金が入ってる」

おそらくだが、姉はその頃にはもう、E.O.P.レベルが三桁に突入していたのではないだろうか。
姉が木島としていたことは、間違いなく善行であり、かなりのスコアを貯めることができたはずだ。
当然、木島のE.O.P.レベルもきっと三桁なのだろう。

「でも、ふたりはやりすぎちゃったの。6年前にこの国は一度、指名手配犯がひとりもいなくなっちゃったことがあったからね」

ふたりは、行方不明になってる人の居場所を見つけることにしたという。

「今度はわたしたちが警察から疑いの目を向けられるようになってた。そりゃそうだよね。指名手配犯の潜伏先や行方不明者の居場所を通報してくるのが毎回同じ高校生なんだもん。何かあるって疑われるのが当たり前。でも、そんなこと知らなかったわたしたちは、次は世界だって息巻いて、世界中の指名手配犯の潜伏先を特定し始めてた。スマホがあれば、この国からでも世界中の指名手配犯の情報が手に入るからね」

「警察だけじゃなく、FBIやインターポールまでふたりのことを疑い始めたんだよ」

まるでデスノートのキラのようだなと思った。
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