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イルマは初対面のその男に、貧乏だと決めつけられたことに腹が立った。
確かに厩戸見高校には金持ちの家の子どもが多い。それは事実だ。
だが、村戸家は決して貧乏ではなかった。姉が高校時代に木島や萌衣と共に稼いだお金がある。
鞍馬葉子や藤島大地との戦いの数日後、姉から通帳を見せてもらったが、姉だけでなくイルマの通帳にも相当な大金が入っていた。
高校にたくさん友達がいると決めつけられたことや、英語が苦手だと決めつけられたことにも腹が立った。
英語が苦手だということだけは、確かに事実だったのだが。
ーーニュー・ワールド・メイカー。
だから、的場修一の五臓六腑を別のものに変化させることにした。
SF映画などに出てくる「自動的翻訳機のようなもの」を作ることで、英語教材なんてものが必要ないようにした。
使用限度額が存在せず、どこからお金が引き出されるかもわからないが使うことができる「ブラックカードのようなもの」も作った。
それ以外にも、「失明した人間の目が見えるようになる眼鏡のようなもの」や「コンタクトレンズのようなもの」をはじめ、9つの「○○のようなもの」を作り出した。
翻訳機のようなものやブラックカードのようなもの以外のそれらは、もちろん的場のためではなく、萌衣のために作った。本当に使えるかどうかは萌衣に実際に使ってもらわなければわからなかったが、とにかく作った。
もちろん、そのことを的場は気づきもしなかった。
「その英語教材は、本当に効果のあるものなんでしょうか?」
的場にはすぐに玄関のドアを閉めてお帰りいただけばよかったのだが、イルマはふとそんな言葉を口にしてしまった。
腹が立っていたから、五臓六腑を別のものに変えるだけでは気がすまず、ふと疑問に思った点から目の前の大人を論破してやりたいと思ってしまったのだ。
「効果はこちらのチラシにある通りです。この英語教材を一年続けていただければ……」
「本当に効果のある英語教材は、わざわざ訪問販売をかける必要がないはずですよね? 怪しい教材を売ってる、怪しい会社の営業マンということは、あなたはおそらく理系大学の出ではない。二流三流の文系大学を出てる。違いますか? 英語ができないと後々後悔しますよ? あんた程度の人間が何を上から目線で言ってるんだ? あんたはぼくが一番やりたくない仕事をしてるし、ぼくが一番なりたくない大人だよ」
論破しようとしたがうまくいかないものだなと思った。
「おい、ガキ、お前、一体誰に向かって口聞いてんだ?」
イルマの言葉は、ただ相手を怒らせただけだった。
「誰に向かって?Fランク大学出の詐欺会社の訪問販売員だよ。正社員ですらねーんだろ? あんた」
そして、売り言葉に買い言葉になってしまった。
「おい、あんまり舐めたこと言ってると殺すぞ」
「それは脅迫? 殺害予告? どっち? 警察呼ぼうか?」
「呼んでみろよ。どうせ来るのは駐在の警察官がひとりだろ? そいつの拳銃奪って、お前を撃ち殺してやろうか?」
イルマはその瞬間、後ろ手に握っていた「拳銃のようなもの」を的場の額に突き付けていた。
それもまた、的場の五臓六腑のひとつから作り出したものだった。
「こういうことか? 今すぐ撃ち殺してやろうか?」
「おい、本物か? これ」
「さぁ、どうだろね。最近は3Dプリンターっていう便利なものがあるし、モデルガンの殺傷力を高めたものもダークウェブで簡単に買えるからね。それに、知識さえあればパイプにガムテープぐるぐる巻いただけの、子供の工作みたいな散弾銃でも偉い人殺せるらしいね」
「さすがは足切村のガキだな。知ってんだぞ、この村のこと。お前ら、江戸時代の罪人の子孫なんだろ?よかったな、生まれたのがこの時代で。足を切られずにすんだんだもんな」
そこまで知りながら、白目病のことを知らないことが哀れだった。
「俺はお前らみたいな社会の底辺を這いつくばってるゴミどもを救いに来た救世主だぞ」
だが、そんな感情はすぐに消えた。
「You mean a con artist, right ?」
イルマは「翻訳機のようなもの」も使うことにした。
日本語で話した言葉が、声になるときには英語になっていた。
おそらくそれは、未開惑星として条約で保護されている星の言葉でも翻訳可能なものだった。
的場は英語ではっせられたその言葉を理解できなかったようだった。完全にフリーズしていた。自慢の英語教材が何にも役に立っていないようだった。
「理解できなかったのか? 詐欺師の間違いだろ? って言ったんだよ」
ハロウィンパーティーが中止になったのは、
「あんたも、生まれたのが英語圏の国じゃなくてよかったな。あっちじゃ、ハロウィンの日に日本人の留学生が『フリーズ』と『プリーズ』を聞き間違えただけで、強盗と勘違いされて銃殺されるんだよ」
拳銃のようなものを的場に突き付けている真っ最中に姉と萌衣が帰宅したからだった。
イルマはふたりにこっぴどくしかられることとなっただけでなく、萌衣に「失明した人間の目が見えるようになる眼鏡のようなもの」や「コンタクトレンズのようなもの」を渡そうとしたが、受け取ってはもらえなかった。
クリスマスイブの日には、地元のケーブルテレビの営業マンがケーブル交換の話をしにきた。
そのときも、家にいたのはイルマだけだった。
どうやら3年後の2028年には、今のケーブルのままだとテレビが映らなくなるという。理由を説明されたがよくわからなかった。
円安のせいだかなんだかでこれまで800円ほどですんでいた月額料金が1000円を超えるという話だった。
円高になったら安くなるのか? そのままなんだろ? と思ったが、口にはしなかった。
そういえば、つい最近もコンビニで男性ファッション雑誌が1920円もすることに驚かされたことがある。
もちろん、ただの雑誌ではなく付録つきなのだが、ガンダムやストレンジャーシングスのトートバッグつきで、1920円というのが安いのか高いのかわからなかった。ストレンジャーシングスはシーズン1だけ観たような気がするくらいだったのでどうでもよかったが、ガンダムのトートバッグは欲しかった。
公式グッズとして見ればファッション雑誌つきで1920円というのは安いだろう。だが、トートバッグはあくまで付録だ。付録の手触りや縫製を確かめることは出来ないがたぶん高いのだろう。
確かに厩戸見高校には金持ちの家の子どもが多い。それは事実だ。
だが、村戸家は決して貧乏ではなかった。姉が高校時代に木島や萌衣と共に稼いだお金がある。
鞍馬葉子や藤島大地との戦いの数日後、姉から通帳を見せてもらったが、姉だけでなくイルマの通帳にも相当な大金が入っていた。
高校にたくさん友達がいると決めつけられたことや、英語が苦手だと決めつけられたことにも腹が立った。
英語が苦手だということだけは、確かに事実だったのだが。
ーーニュー・ワールド・メイカー。
だから、的場修一の五臓六腑を別のものに変化させることにした。
SF映画などに出てくる「自動的翻訳機のようなもの」を作ることで、英語教材なんてものが必要ないようにした。
使用限度額が存在せず、どこからお金が引き出されるかもわからないが使うことができる「ブラックカードのようなもの」も作った。
それ以外にも、「失明した人間の目が見えるようになる眼鏡のようなもの」や「コンタクトレンズのようなもの」をはじめ、9つの「○○のようなもの」を作り出した。
翻訳機のようなものやブラックカードのようなもの以外のそれらは、もちろん的場のためではなく、萌衣のために作った。本当に使えるかどうかは萌衣に実際に使ってもらわなければわからなかったが、とにかく作った。
もちろん、そのことを的場は気づきもしなかった。
「その英語教材は、本当に効果のあるものなんでしょうか?」
的場にはすぐに玄関のドアを閉めてお帰りいただけばよかったのだが、イルマはふとそんな言葉を口にしてしまった。
腹が立っていたから、五臓六腑を別のものに変えるだけでは気がすまず、ふと疑問に思った点から目の前の大人を論破してやりたいと思ってしまったのだ。
「効果はこちらのチラシにある通りです。この英語教材を一年続けていただければ……」
「本当に効果のある英語教材は、わざわざ訪問販売をかける必要がないはずですよね? 怪しい教材を売ってる、怪しい会社の営業マンということは、あなたはおそらく理系大学の出ではない。二流三流の文系大学を出てる。違いますか? 英語ができないと後々後悔しますよ? あんた程度の人間が何を上から目線で言ってるんだ? あんたはぼくが一番やりたくない仕事をしてるし、ぼくが一番なりたくない大人だよ」
論破しようとしたがうまくいかないものだなと思った。
「おい、ガキ、お前、一体誰に向かって口聞いてんだ?」
イルマの言葉は、ただ相手を怒らせただけだった。
「誰に向かって?Fランク大学出の詐欺会社の訪問販売員だよ。正社員ですらねーんだろ? あんた」
そして、売り言葉に買い言葉になってしまった。
「おい、あんまり舐めたこと言ってると殺すぞ」
「それは脅迫? 殺害予告? どっち? 警察呼ぼうか?」
「呼んでみろよ。どうせ来るのは駐在の警察官がひとりだろ? そいつの拳銃奪って、お前を撃ち殺してやろうか?」
イルマはその瞬間、後ろ手に握っていた「拳銃のようなもの」を的場の額に突き付けていた。
それもまた、的場の五臓六腑のひとつから作り出したものだった。
「こういうことか? 今すぐ撃ち殺してやろうか?」
「おい、本物か? これ」
「さぁ、どうだろね。最近は3Dプリンターっていう便利なものがあるし、モデルガンの殺傷力を高めたものもダークウェブで簡単に買えるからね。それに、知識さえあればパイプにガムテープぐるぐる巻いただけの、子供の工作みたいな散弾銃でも偉い人殺せるらしいね」
「さすがは足切村のガキだな。知ってんだぞ、この村のこと。お前ら、江戸時代の罪人の子孫なんだろ?よかったな、生まれたのがこの時代で。足を切られずにすんだんだもんな」
そこまで知りながら、白目病のことを知らないことが哀れだった。
「俺はお前らみたいな社会の底辺を這いつくばってるゴミどもを救いに来た救世主だぞ」
だが、そんな感情はすぐに消えた。
「You mean a con artist, right ?」
イルマは「翻訳機のようなもの」も使うことにした。
日本語で話した言葉が、声になるときには英語になっていた。
おそらくそれは、未開惑星として条約で保護されている星の言葉でも翻訳可能なものだった。
的場は英語ではっせられたその言葉を理解できなかったようだった。完全にフリーズしていた。自慢の英語教材が何にも役に立っていないようだった。
「理解できなかったのか? 詐欺師の間違いだろ? って言ったんだよ」
ハロウィンパーティーが中止になったのは、
「あんたも、生まれたのが英語圏の国じゃなくてよかったな。あっちじゃ、ハロウィンの日に日本人の留学生が『フリーズ』と『プリーズ』を聞き間違えただけで、強盗と勘違いされて銃殺されるんだよ」
拳銃のようなものを的場に突き付けている真っ最中に姉と萌衣が帰宅したからだった。
イルマはふたりにこっぴどくしかられることとなっただけでなく、萌衣に「失明した人間の目が見えるようになる眼鏡のようなもの」や「コンタクトレンズのようなもの」を渡そうとしたが、受け取ってはもらえなかった。
クリスマスイブの日には、地元のケーブルテレビの営業マンがケーブル交換の話をしにきた。
そのときも、家にいたのはイルマだけだった。
どうやら3年後の2028年には、今のケーブルのままだとテレビが映らなくなるという。理由を説明されたがよくわからなかった。
円安のせいだかなんだかでこれまで800円ほどですんでいた月額料金が1000円を超えるという話だった。
円高になったら安くなるのか? そのままなんだろ? と思ったが、口にはしなかった。
そういえば、つい最近もコンビニで男性ファッション雑誌が1920円もすることに驚かされたことがある。
もちろん、ただの雑誌ではなく付録つきなのだが、ガンダムやストレンジャーシングスのトートバッグつきで、1920円というのが安いのか高いのかわからなかった。ストレンジャーシングスはシーズン1だけ観たような気がするくらいだったのでどうでもよかったが、ガンダムのトートバッグは欲しかった。
公式グッズとして見ればファッション雑誌つきで1920円というのは安いだろう。だが、トートバッグはあくまで付録だ。付録の手触りや縫製を確かめることは出来ないがたぶん高いのだろう。
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