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姉もそのとき、かわいい多機能ポーチ付きのファッション雑誌を買おうとしていて、「1920円か~」と店内の雑誌ラックの前で頭を悩ませていた。
「わたしが女子高生の頃はもっと安かった!」
と、社会人2年目の姉がコンビニで頭を抱えて叫ぶくらいには値上がりしているようだった。
さすがに悩みすぎだろと思った。
アマゾンプライムビデオですら、YouTubeやTVerのようにCMが流れるようになり、そのCMを消したければ追加料金が発生するようにもなっていた。
YouTubeのCMは最近、CMというよりはもはや別の動画のようなものが増えていて、湯船に浸かりながら見ていると、広告スキップしようと濡れた指でタッチしても反応せず、延々その動画を見せられることになっている。
プライムビデオは毎月の新規追加作品数が特に増えるわけではなく、確か10月は新規作品の1/3ほどがクレヨンしんちゃんの映画で、かさ増し感が酷かった。
マイクの質が悪く台詞が聞き取りづらい昔の邦画に、日本語字幕機能がつくわけでもない。
ただCMが流れるようになり、サブスクサービスとして向上が見られるわけではない。
無駄に動画再生時の一時停止や早送りのレイアウトが変わっただけだった。それなのにCMを消したければ追加料金を払えというのは、やはり円安が影響しているのだろうか。
コンビニで、ふたりが欲しい付録付きのファッション雑誌を買うとなると、4000円近い金額になってしまう。そのため、姉の欲しい雑誌だけをイルマは小遣いから買ってあげることにした。
イルマにとって、姉は姉であると同時に母親代わりでもある。姉からは無償の愛を注がれてきた。
姉は決して見返りを求めないが、それで姉の機嫌がとれるなら安いものだった。
少々話が脱線してしまったが、村戸家がなぜその地元ケーブルテレビと契約しているかと言えば、足切村ではまともに地デジが映らないからだった。
村戸家がこの村に引っ越してきたのは、8年前の2017年だ。
その頃にはN市にあるテレビ塔が電波塔としての役目を終えて6年が経過しており、ただの観光名所になっていた。
2011年の完全地デジ化以降は、S市にある電波塔からの電波を受信しなければいけなくなっていたらしい。
中学生になってから気づいたのだが、イルマは厩戸見市全体がテレビがまともに映らないものだと思っていたのだが、それはどうやら足切村だけのようだった。
スマホも家庭内でのWi-Fiなどもちゃんと使えるのだが、テレビの電波だけがなぜか遮断されているようだった。
どちらも電波という意味では変わらないと思ったのだが。
当時はその程度の感覚だったが今は違う。
電波障害の原因は、おそらくは白目病の原因となるウィルスなのだろう。
この村は、足切池の水の気化とともに空中に舞ったウィルスが村中に蔓延している。そして、大気中のウィルスは決してこの村の外に出ることはなく、村の外部では人の体の中だけで生きている。飛沫感染などは1歳なく、だから白目病は風土病で済んでおり、パンデミックになることはない。
村を覆うウィルスが、テレビの電波だけをなぜか阻害しているのだろう。
まるでガンダムに出てくるミノフスキー粒子の出来損ないだなと思った。あれは確か通信を阻害するものであり、あの世界ではミノフスキー物理学という新しい世界の理によって戦艦やモビルスーツが動いているんじゃなかったろうか。だからミノフスキー粒子の出来損ないだと思ったのだ。
白目病のウィルスは、ギフトという超能力のようなものを与える代わりに、白目病で失明させてくるのだから、本当に厄介だった。
E.O.P.レンズによる手術がなければ、今頃イルマも姉も、きっと萌衣のように失明していたことだろう。
あるいは、足切村にテレビの電波だけを阻害する何かがあるのか、そういうギフトを持つ犠巫徒がいるのかもしれない。
とにかくいずれかだろう。
春頃に行われるというケーブル交換の話をしに来たそのケーブルテレビ会社の営業マンは、
「ついでにネットもうちにしませんか? BSも見れるようになりますよ」
と言ってきた。イルマは、
「NHKにこれ以上お金払いたくないからいいです」
と答えた。
最近のNHKのやり方にイルマは懐疑的だったからだ。
SNSには、「マンションの隣の部屋の住人が支払いをしていないからって、他人である私に払ってくださいと言ってきた」とか、「一人暮らしの父が他界したから、その家には誰も済んではないので解約したいと連絡したら解約手続きに半年かかった」とか、真偽は不明だが強引な集金方法を受けた人の被害報告が上がっている。
それだけなら別にいい。村戸家はちゃんと受信料を払っており、近隣に家はあっても、隣の家とはそこそこの距離があるからだ。
イルマが気に入らないのは、NHKプラスという独自の配信サービスを利用するためには受信料を払っていても、さらに追加料金を払う必要があるということだった。彼にしてみれば、受信料自体がすでに観たいときに観たい番組を観ることのできない不便なサブスクのようなものだったからだ。
それだけでなく、イルマが好きだったドラマが人気が出たからといってテレビシリーズを打ち切りにし、映画だけの展開になったりもしていた。受信料が一部とはいえ映画に使われているにも関わらず、映画料金を取られることが理解できなかった。映画館で払うとしたら、興行収入のうち映画館の取り分となる料金1000円程度でいいはずであり、NHKの取り分が発生することはおかしいと思っていた。
その映画のCMや番宣が民放で行われていることも理解できなかった。そこに使われているのもおそらく受信料の一部なのだ。
映画は一年も経てばNHKで放送されるが、それ以外にもプライムビデオ独占配信がある。2年も経てば民放の深夜に放送されたりもする。
つまり、映画で一度儲けを出した作品の放送権や配信権を売るか貸すことによって儲けを出していることになる。プライムビデオでは映画だけでなく、朝ドラや大河ドラマ、夜ドラなども配信されており、最近のNHKは商業主義に走り過ぎだと思っていた。
「わたしが女子高生の頃はもっと安かった!」
と、社会人2年目の姉がコンビニで頭を抱えて叫ぶくらいには値上がりしているようだった。
さすがに悩みすぎだろと思った。
アマゾンプライムビデオですら、YouTubeやTVerのようにCMが流れるようになり、そのCMを消したければ追加料金が発生するようにもなっていた。
YouTubeのCMは最近、CMというよりはもはや別の動画のようなものが増えていて、湯船に浸かりながら見ていると、広告スキップしようと濡れた指でタッチしても反応せず、延々その動画を見せられることになっている。
プライムビデオは毎月の新規追加作品数が特に増えるわけではなく、確か10月は新規作品の1/3ほどがクレヨンしんちゃんの映画で、かさ増し感が酷かった。
マイクの質が悪く台詞が聞き取りづらい昔の邦画に、日本語字幕機能がつくわけでもない。
ただCMが流れるようになり、サブスクサービスとして向上が見られるわけではない。
無駄に動画再生時の一時停止や早送りのレイアウトが変わっただけだった。それなのにCMを消したければ追加料金を払えというのは、やはり円安が影響しているのだろうか。
コンビニで、ふたりが欲しい付録付きのファッション雑誌を買うとなると、4000円近い金額になってしまう。そのため、姉の欲しい雑誌だけをイルマは小遣いから買ってあげることにした。
イルマにとって、姉は姉であると同時に母親代わりでもある。姉からは無償の愛を注がれてきた。
姉は決して見返りを求めないが、それで姉の機嫌がとれるなら安いものだった。
少々話が脱線してしまったが、村戸家がなぜその地元ケーブルテレビと契約しているかと言えば、足切村ではまともに地デジが映らないからだった。
村戸家がこの村に引っ越してきたのは、8年前の2017年だ。
その頃にはN市にあるテレビ塔が電波塔としての役目を終えて6年が経過しており、ただの観光名所になっていた。
2011年の完全地デジ化以降は、S市にある電波塔からの電波を受信しなければいけなくなっていたらしい。
中学生になってから気づいたのだが、イルマは厩戸見市全体がテレビがまともに映らないものだと思っていたのだが、それはどうやら足切村だけのようだった。
スマホも家庭内でのWi-Fiなどもちゃんと使えるのだが、テレビの電波だけがなぜか遮断されているようだった。
どちらも電波という意味では変わらないと思ったのだが。
当時はその程度の感覚だったが今は違う。
電波障害の原因は、おそらくは白目病の原因となるウィルスなのだろう。
この村は、足切池の水の気化とともに空中に舞ったウィルスが村中に蔓延している。そして、大気中のウィルスは決してこの村の外に出ることはなく、村の外部では人の体の中だけで生きている。飛沫感染などは1歳なく、だから白目病は風土病で済んでおり、パンデミックになることはない。
村を覆うウィルスが、テレビの電波だけをなぜか阻害しているのだろう。
まるでガンダムに出てくるミノフスキー粒子の出来損ないだなと思った。あれは確か通信を阻害するものであり、あの世界ではミノフスキー物理学という新しい世界の理によって戦艦やモビルスーツが動いているんじゃなかったろうか。だからミノフスキー粒子の出来損ないだと思ったのだ。
白目病のウィルスは、ギフトという超能力のようなものを与える代わりに、白目病で失明させてくるのだから、本当に厄介だった。
E.O.P.レンズによる手術がなければ、今頃イルマも姉も、きっと萌衣のように失明していたことだろう。
あるいは、足切村にテレビの電波だけを阻害する何かがあるのか、そういうギフトを持つ犠巫徒がいるのかもしれない。
とにかくいずれかだろう。
春頃に行われるというケーブル交換の話をしに来たそのケーブルテレビ会社の営業マンは、
「ついでにネットもうちにしませんか? BSも見れるようになりますよ」
と言ってきた。イルマは、
「NHKにこれ以上お金払いたくないからいいです」
と答えた。
最近のNHKのやり方にイルマは懐疑的だったからだ。
SNSには、「マンションの隣の部屋の住人が支払いをしていないからって、他人である私に払ってくださいと言ってきた」とか、「一人暮らしの父が他界したから、その家には誰も済んではないので解約したいと連絡したら解約手続きに半年かかった」とか、真偽は不明だが強引な集金方法を受けた人の被害報告が上がっている。
それだけなら別にいい。村戸家はちゃんと受信料を払っており、近隣に家はあっても、隣の家とはそこそこの距離があるからだ。
イルマが気に入らないのは、NHKプラスという独自の配信サービスを利用するためには受信料を払っていても、さらに追加料金を払う必要があるということだった。彼にしてみれば、受信料自体がすでに観たいときに観たい番組を観ることのできない不便なサブスクのようなものだったからだ。
それだけでなく、イルマが好きだったドラマが人気が出たからといってテレビシリーズを打ち切りにし、映画だけの展開になったりもしていた。受信料が一部とはいえ映画に使われているにも関わらず、映画料金を取られることが理解できなかった。映画館で払うとしたら、興行収入のうち映画館の取り分となる料金1000円程度でいいはずであり、NHKの取り分が発生することはおかしいと思っていた。
その映画のCMや番宣が民放で行われていることも理解できなかった。そこに使われているのもおそらく受信料の一部なのだ。
映画は一年も経てばNHKで放送されるが、それ以外にもプライムビデオ独占配信がある。2年も経てば民放の深夜に放送されたりもする。
つまり、映画で一度儲けを出した作品の放送権や配信権を売るか貸すことによって儲けを出していることになる。プライムビデオでは映画だけでなく、朝ドラや大河ドラマ、夜ドラなども配信されており、最近のNHKは商業主義に走り過ぎだと思っていた。
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