情報迷宮≪実験≫都市アルゴリア -THE NEW WORLD MAKER-

あめの みかな

文字の大きさ
70 / 109

#66.66 『偽りの仏縁起(いつわりのぶつえんぎ)』

しおりを挟む
『偽りの仏縁起(いつわりのぶつえんぎ)』

第一章 神々の葬儀

奈良の御代、帝が高天原に渡り、そこがすでに滅びていたことを知ってから幾ばくもせず──
都には新たな教えがもたらされた。

遠き西の地より来た“仏”の道である。

しかし、帝の耳に届いたその教えは、はじめから歪められていた。
天の神々を超える存在として“仏”を掲げ、天の死を覆い隠すために創られた儀礼的な虚構だったのだ。

高僧たちは言った。

「神々は死せり。ゆえに、仏の手によりて救済されねばならぬ。」

その言葉のもと、高天原の神々を“仏の化身”として祀る儀式が行われた。
それこそが──神仏習合の起こり。

だが、実のところその儀式は、神々を神ではないものに堕とす葬式であった。
神の座を降ろされ、仏の影に縛られた八百万の魂は、やがて名も姿も消し、“祈りの空洞”だけをこの国に残した。


第二章 偽りの仏

儀式の夜、僧たちの読経が響く中、
ひとりの巫女が泣き叫んだ。

「あれは仏にあらず……光を喰らう影ぞ……!」

その声を聞いた者は、まもなく狂い、あるいは沈黙した。

祀られた“仏像”には、もはや悟りの光はなく、かわりに死した神々の怨念が宿っていた。
やがてそれらは自ら形を変え、“偽りの仏”として人に語りかけるようになった。

「われこそ真の光なり。
 信ぜよ。捧げよ。祈りよ──」

こうして、“信仰”の皮をまとった黄泉の声が、日本全土に広がっていった。


第三章 第六天魔王の誕生

時が経ち、戦乱の世となる。ある帝が高天原を訪れた夜、廃墟の天で“黄の光”と出会った。

その光こそ、滅びの女神・**黄泉照(ヨミテラス)**であった。
彼女は帝の魂に囁いた。

「神々は死に、仏は偽り。ならば、この世を治めるのは“魔”のみ。」

その契約により、ひとりの男が“第六天魔王”となった。
それは、人の王でもなく、神の使いでもなく、偽りの仏が人に取り憑いた存在であった。

人々はその名を恐れて封じた。
だが、記録の奥には続きがある。

「第六にあらず、他にも在り。第一より第五、そして第七以降──その名は史より抹され、いまも偉人の影に潜みおわす。」


第四章 影の系譜

第一の魔は、言葉を操り国を欺いた賢人。
第二の魔は、天を飛ぶ術を広めた異国の術師。
第三の魔は、永遠の若さを得た皇族の影。
第四の魔は、歌をもって民を狂わせた女。
第五の魔は、刃をもって神を屠った将。
そして第六天魔王は、すべての力を統べ、“神なき天を支配する王”と化した。

第七以降の魔は、歴史に名を残しながらも、その本質は“人に偽りの悟りを見せる者”であった。

ゆえに、時代を動かす英雄たちの影には、いつも“もうひとつの顔”が潜んでいた。
彼らは皆、黄泉照の微笑を胸に刻まれていたのである。


終章 封印の書

この縁起は、東大寺の奥、誰も知らぬ地下の経蔵に封じられたという。
“神仏習合”の真実を記すそれは、ただひとつの警句で結ばれている。

「神は死に、仏は偽り、されど祈る者あれば、魔もまた神となる。」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

漆黒の闇から

一宮 沙耶
ホラー
邪悪な霊が引き起こす事件の数々 若い頃から霊が見え、精神を病んでいた私が事件を解決していく ただ、自分も黄泉の世界に巻き込まれてしまう

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

10年ぶりに現れた正ヒロインが強すぎて、10年来のダメ系幼馴染型ヒロインが敗北しそうな件について。

神崎あら
青春
 10年ぶりに再会した彼女はまさに正ヒロインと呼ぶにふさわしい容姿、性格、人望を手にしていた。  それに対して10年間一緒にいた幼馴染は、堕落し酒に溺れ、泰平の世話なしには生きられないペットのような生き物になっている。  そんな対照的な2人のヒロインが戦う(一方的にダメ幼馴染が社会的にボコられる)物語が今始まる!!

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

N -Revolution

フロイライン
ライト文芸
プロレスラーを目指す桐生珀は、何度も入門試験をクリアできず、ひょんな事からニューハーフプロレスの団体への参加を持ちかけられるが…

処理中です...