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すべての始まりは、イルマが白目病の手術を受けた翌日、退院したイルマが姉と共に病院から乗ってきたタクシーだった。
その運転手が殺した子どもを足切池に遺棄したことがわかったからだった。
萌衣の判断で足切池の水を抜き、運転手が遺棄した遺体も含め、9体の遺体が見つかった。
そして、姉や萌衣や木島の同級生である足切村の駐在警官が、恋人をDVで死なせてしまい遺棄していたことが判明し、イルマの担任教師であったが名前も忘れてしまった男は認知症の母親を殺して遺棄していたことがわかった。
やはりまた名前を忘れてしまったが、元自衛官の男がトランスジェンダーの息子を殺し、遺棄していた。
そして、鞍馬葉子に、藤島大地、尾上カナイ、姫織星彦、多々良崇、鵜山京一郎。
これが遺体10体の犯人だ。
鞍馬葉子は犯人ではなかったかもしれない。犯人だったのは工藤明だったかもしれない。
この2ヶ月の間に、イルマの中で担任教師にかけられたギフトによる若年性認知症がかなり進んでいて、記憶がかなり混濁していた。
「わたしもエミリちゃんも玲くんも、茶川ひよりも、それからイルマくんも、みんな『救厄の聖者たち』なんだよ」
「全部で15人?随分中途半端な人数なんだね」
「イルマくんは、救厄の聖者のことをメシアとその弟子の数だと思ってない? それともアーサー王と円卓の騎士かな? トランプのエースからキングまでの枚数にジョーカーを足した感じ?」
どうせ、タロットカードと同じ21人いるとか言い出すんだろうなと思った。
ラース様と呼ばれる素雲教の教祖やその幹部たちを加えるとちょうどそのくらいになるはずだった。
「救厄の聖者は数が決まってないの。今回はたまたま17人だっただけ。17回目の『大厄災』ーー人類文明のリセットを止めるために生まれたのがわたしたちだから」
本当にどうかしていた。
80年代や90年代の漫画やアニメじゃあるまいしと思った。
洗脳でもされているとしか思えなかった。
「萌衣、いつまでその男とじゃれているつもりだ?」
鵜山京一郎の声がした。
ーーRemnants of Justice(レムナンツ・オブ・ジャスティス(正義の残骸))、アンレムナンツ。
そして、そのギフトによって隠していた姿を現した。
彼はずっと家の中にいたのだ。おそらく他の犯人たちもこの家の中にいるのだろう。
鵜山京一郎は、髪をオールバックにしており、高級そうなスーツの上にロングコートを羽織った、刑事ドラマに出てくるような、いかにも出来る刑事という見た目の男だった。
「ごめんなさい、パパ」
萌衣はその鵜山をパパと呼んだ
「でも、イルマくんのギフトについては話したでしょ? 彼の『ニュー・ワールド・メーカー』は、すごく危険なの」
「こちらにはすでにその少年の姉がいる。その少年も姉も、田山治のギフトで若年性認知症になっているんだろう?」
そうだった。あの担任教師は田山治という名前だった。
学校では婿養子になっていたときの佐伯治という名前のまま、離婚後も教壇に立っていたんだった。
「どうかな村戸イルマくん、ぼくたちの仲間には姫織星彦という男がいる。その男のギフトは、ありとあらゆる病や怪我を治すものなんだ。君やお姉さんが患っている若年性認知症を治すこともできる。鞍馬葉子と、藤島大地を解放してくれたら、君たち姉弟の病気を治すことを約束しよう。我々が欠けることなく生きている限り『大厄災』が起きることはないんだ」
それはつまり、誰か一人でも欠けることがあれば、『大厄災』による人類文明のリセットは始まってしまうということなのだろう。
この男には人類の未来のことなど関係ないのだ。自分が生きている間さえ乗り切れればいい。そう考えているのだ。
「鞍馬葉子も、藤島大地も、確かにぼくの五臓六腑の中にいる。でも、悪いけど、ふたりとも死んでるよ」
「嘘はいけないな、村戸イルマくん。ふたりがすでに死んでいるとしたら、その瞬間、『大厄災』が起きていたはずだ。7月5日に起きるはずだった日本列島をふたつに割るほどの巨大地震のエネルギーが何らかの形でこの世界に降り注いでいないとおかしいんだよ」
大厄災は巨大地震がその始まりとは限らないのだろう。
降り注ぐということは、巨大隕石の落下などの可能性もあるということだった。
7月5日に起きていたら巨大地震になっていたが、それ以外の日なら地震にはならないのだろう。
どちらにせよ、その後に起きる世界最終戦争こそがこの男たちが信じる大厄災であり、地震はそのきっかけに過ぎなかったのだ。
「あんたたちが信じてる、その『大厄災』なんてものは存在しないんじゃない?ふたりが死んでることは、萌衣さんも知ってるはずだよね?」
萌衣は鵜山に向かって黙って頷いた。
「どういうことだ? 萌衣。ラース様のお言葉が間違っていたというつもりか?」
「ねぇ、パパ、100年くらい前に『マティファの聖母』っていうのがあったでしょ?」
萌衣は父親に言い聞かせるような口調で話し出した。
「マティファの聖母? 何の話だ?」
「なーんだ、知らないんだ?パパは本当に素雲教のことと警察でする悪巧みのことしか知らないんだね」
マティファの聖母とは、1917年、バルトガルのマティファという地で、3人の羊飼いの子どとたちの前に聖母が現れたとされる出来事と、その聖母が子どもたちに聞かせた3つの予言のことだ。
その予言の内容は、地獄の存在、第一次世界大戦の終焉と第二次世界大戦の勃発、そして「第三の予言」として知られる封印された予言である。
第三の予言は教皇の暗殺未遂のことであったと後に発表されたが、第一の予言や第二の予言に比べて、その内容があまりにも薄く、個人的すぎると疑問視されており、3人の子どもたちの中で唯一長命であったシンシアは、晩年にその内容を否定している。
そのせいか、教会の最深部、厳重に警備された機密文書保管庫の奥深くに、人類の運命を変えうる「第四の予言」が封印されているという隠謀論まで産まれていた。
第三の予言はその内容が長年秘匿されていたが、第四の予言は、その存在すら長年否定され続けてきたというものだ。
その運転手が殺した子どもを足切池に遺棄したことがわかったからだった。
萌衣の判断で足切池の水を抜き、運転手が遺棄した遺体も含め、9体の遺体が見つかった。
そして、姉や萌衣や木島の同級生である足切村の駐在警官が、恋人をDVで死なせてしまい遺棄していたことが判明し、イルマの担任教師であったが名前も忘れてしまった男は認知症の母親を殺して遺棄していたことがわかった。
やはりまた名前を忘れてしまったが、元自衛官の男がトランスジェンダーの息子を殺し、遺棄していた。
そして、鞍馬葉子に、藤島大地、尾上カナイ、姫織星彦、多々良崇、鵜山京一郎。
これが遺体10体の犯人だ。
鞍馬葉子は犯人ではなかったかもしれない。犯人だったのは工藤明だったかもしれない。
この2ヶ月の間に、イルマの中で担任教師にかけられたギフトによる若年性認知症がかなり進んでいて、記憶がかなり混濁していた。
「わたしもエミリちゃんも玲くんも、茶川ひよりも、それからイルマくんも、みんな『救厄の聖者たち』なんだよ」
「全部で15人?随分中途半端な人数なんだね」
「イルマくんは、救厄の聖者のことをメシアとその弟子の数だと思ってない? それともアーサー王と円卓の騎士かな? トランプのエースからキングまでの枚数にジョーカーを足した感じ?」
どうせ、タロットカードと同じ21人いるとか言い出すんだろうなと思った。
ラース様と呼ばれる素雲教の教祖やその幹部たちを加えるとちょうどそのくらいになるはずだった。
「救厄の聖者は数が決まってないの。今回はたまたま17人だっただけ。17回目の『大厄災』ーー人類文明のリセットを止めるために生まれたのがわたしたちだから」
本当にどうかしていた。
80年代や90年代の漫画やアニメじゃあるまいしと思った。
洗脳でもされているとしか思えなかった。
「萌衣、いつまでその男とじゃれているつもりだ?」
鵜山京一郎の声がした。
ーーRemnants of Justice(レムナンツ・オブ・ジャスティス(正義の残骸))、アンレムナンツ。
そして、そのギフトによって隠していた姿を現した。
彼はずっと家の中にいたのだ。おそらく他の犯人たちもこの家の中にいるのだろう。
鵜山京一郎は、髪をオールバックにしており、高級そうなスーツの上にロングコートを羽織った、刑事ドラマに出てくるような、いかにも出来る刑事という見た目の男だった。
「ごめんなさい、パパ」
萌衣はその鵜山をパパと呼んだ
「でも、イルマくんのギフトについては話したでしょ? 彼の『ニュー・ワールド・メーカー』は、すごく危険なの」
「こちらにはすでにその少年の姉がいる。その少年も姉も、田山治のギフトで若年性認知症になっているんだろう?」
そうだった。あの担任教師は田山治という名前だった。
学校では婿養子になっていたときの佐伯治という名前のまま、離婚後も教壇に立っていたんだった。
「どうかな村戸イルマくん、ぼくたちの仲間には姫織星彦という男がいる。その男のギフトは、ありとあらゆる病や怪我を治すものなんだ。君やお姉さんが患っている若年性認知症を治すこともできる。鞍馬葉子と、藤島大地を解放してくれたら、君たち姉弟の病気を治すことを約束しよう。我々が欠けることなく生きている限り『大厄災』が起きることはないんだ」
それはつまり、誰か一人でも欠けることがあれば、『大厄災』による人類文明のリセットは始まってしまうということなのだろう。
この男には人類の未来のことなど関係ないのだ。自分が生きている間さえ乗り切れればいい。そう考えているのだ。
「鞍馬葉子も、藤島大地も、確かにぼくの五臓六腑の中にいる。でも、悪いけど、ふたりとも死んでるよ」
「嘘はいけないな、村戸イルマくん。ふたりがすでに死んでいるとしたら、その瞬間、『大厄災』が起きていたはずだ。7月5日に起きるはずだった日本列島をふたつに割るほどの巨大地震のエネルギーが何らかの形でこの世界に降り注いでいないとおかしいんだよ」
大厄災は巨大地震がその始まりとは限らないのだろう。
降り注ぐということは、巨大隕石の落下などの可能性もあるということだった。
7月5日に起きていたら巨大地震になっていたが、それ以外の日なら地震にはならないのだろう。
どちらにせよ、その後に起きる世界最終戦争こそがこの男たちが信じる大厄災であり、地震はそのきっかけに過ぎなかったのだ。
「あんたたちが信じてる、その『大厄災』なんてものは存在しないんじゃない?ふたりが死んでることは、萌衣さんも知ってるはずだよね?」
萌衣は鵜山に向かって黙って頷いた。
「どういうことだ? 萌衣。ラース様のお言葉が間違っていたというつもりか?」
「ねぇ、パパ、100年くらい前に『マティファの聖母』っていうのがあったでしょ?」
萌衣は父親に言い聞かせるような口調で話し出した。
「マティファの聖母? 何の話だ?」
「なーんだ、知らないんだ?パパは本当に素雲教のことと警察でする悪巧みのことしか知らないんだね」
マティファの聖母とは、1917年、バルトガルのマティファという地で、3人の羊飼いの子どとたちの前に聖母が現れたとされる出来事と、その聖母が子どもたちに聞かせた3つの予言のことだ。
その予言の内容は、地獄の存在、第一次世界大戦の終焉と第二次世界大戦の勃発、そして「第三の予言」として知られる封印された予言である。
第三の予言は教皇の暗殺未遂のことであったと後に発表されたが、第一の予言や第二の予言に比べて、その内容があまりにも薄く、個人的すぎると疑問視されており、3人の子どもたちの中で唯一長命であったシンシアは、晩年にその内容を否定している。
そのせいか、教会の最深部、厳重に警備された機密文書保管庫の奥深くに、人類の運命を変えうる「第四の予言」が封印されているという隠謀論まで産まれていた。
第三の予言はその内容が長年秘匿されていたが、第四の予言は、その存在すら長年否定され続けてきたというものだ。
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