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なぜ、教会はこれほどまでに隠蔽にこだわるのか。
元教会の関係者によると、その内容があまりにも衝撃的で、世界の宗教的・政治的秩序を根底から覆しかねないものだったからだという。
特に注目すべきは、予言の中に「2025年」という具体的な年号と「日本」という国名が明記されているという点らしい。
複数の研究者や神秘学者たちは、これは単なる偶然ではないと指摘しており、彼らは第四の予言には人類の未来に対する重大な警告が含まれていると主張している。
第四の予言には、2025年に日本が直面する3つの重大な危機が示されているという。
その第一は、南海トラフ巨大地震の可能性だ。
政府の地震調査委員会は、今後30年以内に発生確率が80%以上と警告しており、最大震度7クラスの揺れと巨大津波が予測されている。
第二の危機は、経済システムの崩壊であり、世界的な金融危機が引き金となり、日本の経済基盤が根底から揺らぐ可能性が指摘されている。
高齢化や人口減少、膨大な国債といった構造的な問題が一気に表面化し、社会システムそのものが機能不全に陥る危険性があるという。
第三の危機として、未知の脅威の出現が予言されているという。
新型感染症の世界的流行やAIの制御不能な暴走、さらには国際紛争への巻き込まれるなど、これまでの想定を超えた事態が起こる可能性が示唆されている。
特に注目すべきは、これらの危機が単独ではなく、複合的に発生する可能性が高いという点だった。
「なんだそれは……ラース様の仰られた言葉と同じじゃないか……」
「そうだよ。ラース様の預言はね、例の漫画家が夢に見たものを漫画にした本と、マティファ第四の予言なんていう存在しないものをかけあわせただけのキメラみたいなものなの。ラース様は、パパが信じてるようなメシアでも、預言者でもないんだよ」
何度目だろうか。萌衣が味方なのか敵なのかわからなくなるのは。
「教会も変だよね。どう考えてもマティファに聖母がくるわけないのに、来たことが公式に奇跡だと認められてるんだから。メシアの母親は、元々は聖母なんかじゃなかった。教会の教えは男尊女卑のものぁったから。メシア以外にも子どもを産んでるの。だから処女懐妊なんてあるはずがないの。彼女はね、女性信者を増やすための後付けの聖母だったの。だから、マティファに聖母が現れるはずがないんだよ。マティファの3人の子どもたちは、ギフトによって幻覚を見せられたんだと思うな。子どもたちの言葉を、教会の偉い人たちが認めたのは、教会もギフトによってそれを認めさせられた可能性があるんじゃないかな」
冷静に考えるとそうなるだろう。それが奇跡というものだと言われればそれまでだが、マティファの聖母は本当に謎だらけの出来事だったからだ。
地方の子ども3人だけが目撃した。しかし、教会が公式に承認した。
予言以外にも「太陽の奇跡」というものが起きており、それは数万人が見たとされている。何万もの群衆を前に太陽が狂ったように回転して見えたという。
水源のないところから水が湧き、飲む者に奇跡的な治癒があったともされていた。
何よりも疑わしいのは、教会は多くの宗派に分かれていたにも関わらず、予言の内容が特定の、そして最も勢力の強い教会の都合に絶妙にフィットしたものだったことだろう。
「本当に聖母が子どもにだけ降臨する必要、あると思う?そして、奇跡の現象が、視覚に依存した集団体験っていうのは妙だと思わない?誰も触れられない、映像のような現れ方……パパ、わたしはね、マティファの聖母は、ギフトによるものだったと思ってるの。そうじゃなかったら、『外部からのアップデート』かな」
「外部? 外部とはなんだ?」
「神様か、あるいは上位次元的存在のことかな。ゲームでいうなら、『宗教プロットの補強パッチ』みたいなものが当てられたんだよ。非公式なModかもしれないけど。あ、Modっていうのは、改造データのことね」
仮にそうだとすれば、その補強パッチかModかわからないものは、信仰の揺らぎを防ぐためだとか、女性信者をより強く取り込むためだとか、天からの監視を実感させるために行われたというところだろう。
その成果は抜群だったと言わざるを得ない。
なぜ聖母が現れたのがこどもたちの前だったのか。
それも単純な話だ。
大人よりも「世界の綻び」に敏感であり、見える存在だからだろう。
もし神や上位次元の存在が干渉するのなら、プログラムに柔らかい部分=脳を持つ子どもを狙うのが合理的だ。
宗教は世界観を司るシステムであり、マティファの聖母はそのアップデートファイルであり、教会は管理者権限の無いただの端末といったところだろう。
この世界はマティファの聖母を承認したのではなく、承認させられたのだ。
上位次元世界の誰かが「信仰曲線が下がってるぞ、補強しろ」と指示を出した。その結果がマティファの聖母だった。
「ふざけたことを。この世界は現実だ!神はラース様だけだ!」
「パパ、真理に近づくとき、世界は静かになるんだよ。わたしは今、すごく静かなところにいる。不思議だね。真理のそばにいると、音が聞こえなくなるの」
それはイルマも同じだった。
その瞬間、イルマは誰かが耳を澄ませている気がした。
ーーどうかな村戸イルマくん、ぼくたちの仲間には姫織星彦という男がいる。その男のギフトは、ありとあらゆる病や怪我を治すものなんだ。君やお姉さんが患っている若年性認知症を治すこともできる。鞍馬葉子と、藤島大地を解放してくれたら、君たち姉弟の病気を治すことを約束しよう。我々が欠けることなく生きている限り『大厄災』が起きることはないんだ。
鵜山京一郎の問いに、イルマが何と答えるか誰かが耳を澄ませている。そんな気がしたのだ。
「鵜山京一郎、ぼくがあんたの誘いを断ればどうなる?」
「私の息子であり、君の友人でもある恭介が、君のすぐそばにいる。私の息子が君を凍らせ、ただ存在するだけの存在になるだろう」
鵜山恭介も犠巫徒だったということだろう。
「君の存在に価値などない。価値があるのは君のお姉さんだけだ」
「じゃあ、姉さんの若年性認知症は治してくれるんだね」
治さなければ、いくら姉の目が『神の目』であり『ラプラスの悪魔』であっても、観測した未来をアウトプットすることができなくなってしまう。
だから、姉の病気は必ず治すだろうということは、イルマにはわかっていた。
元教会の関係者によると、その内容があまりにも衝撃的で、世界の宗教的・政治的秩序を根底から覆しかねないものだったからだという。
特に注目すべきは、予言の中に「2025年」という具体的な年号と「日本」という国名が明記されているという点らしい。
複数の研究者や神秘学者たちは、これは単なる偶然ではないと指摘しており、彼らは第四の予言には人類の未来に対する重大な警告が含まれていると主張している。
第四の予言には、2025年に日本が直面する3つの重大な危機が示されているという。
その第一は、南海トラフ巨大地震の可能性だ。
政府の地震調査委員会は、今後30年以内に発生確率が80%以上と警告しており、最大震度7クラスの揺れと巨大津波が予測されている。
第二の危機は、経済システムの崩壊であり、世界的な金融危機が引き金となり、日本の経済基盤が根底から揺らぐ可能性が指摘されている。
高齢化や人口減少、膨大な国債といった構造的な問題が一気に表面化し、社会システムそのものが機能不全に陥る危険性があるという。
第三の危機として、未知の脅威の出現が予言されているという。
新型感染症の世界的流行やAIの制御不能な暴走、さらには国際紛争への巻き込まれるなど、これまでの想定を超えた事態が起こる可能性が示唆されている。
特に注目すべきは、これらの危機が単独ではなく、複合的に発生する可能性が高いという点だった。
「なんだそれは……ラース様の仰られた言葉と同じじゃないか……」
「そうだよ。ラース様の預言はね、例の漫画家が夢に見たものを漫画にした本と、マティファ第四の予言なんていう存在しないものをかけあわせただけのキメラみたいなものなの。ラース様は、パパが信じてるようなメシアでも、預言者でもないんだよ」
何度目だろうか。萌衣が味方なのか敵なのかわからなくなるのは。
「教会も変だよね。どう考えてもマティファに聖母がくるわけないのに、来たことが公式に奇跡だと認められてるんだから。メシアの母親は、元々は聖母なんかじゃなかった。教会の教えは男尊女卑のものぁったから。メシア以外にも子どもを産んでるの。だから処女懐妊なんてあるはずがないの。彼女はね、女性信者を増やすための後付けの聖母だったの。だから、マティファに聖母が現れるはずがないんだよ。マティファの3人の子どもたちは、ギフトによって幻覚を見せられたんだと思うな。子どもたちの言葉を、教会の偉い人たちが認めたのは、教会もギフトによってそれを認めさせられた可能性があるんじゃないかな」
冷静に考えるとそうなるだろう。それが奇跡というものだと言われればそれまでだが、マティファの聖母は本当に謎だらけの出来事だったからだ。
地方の子ども3人だけが目撃した。しかし、教会が公式に承認した。
予言以外にも「太陽の奇跡」というものが起きており、それは数万人が見たとされている。何万もの群衆を前に太陽が狂ったように回転して見えたという。
水源のないところから水が湧き、飲む者に奇跡的な治癒があったともされていた。
何よりも疑わしいのは、教会は多くの宗派に分かれていたにも関わらず、予言の内容が特定の、そして最も勢力の強い教会の都合に絶妙にフィットしたものだったことだろう。
「本当に聖母が子どもにだけ降臨する必要、あると思う?そして、奇跡の現象が、視覚に依存した集団体験っていうのは妙だと思わない?誰も触れられない、映像のような現れ方……パパ、わたしはね、マティファの聖母は、ギフトによるものだったと思ってるの。そうじゃなかったら、『外部からのアップデート』かな」
「外部? 外部とはなんだ?」
「神様か、あるいは上位次元的存在のことかな。ゲームでいうなら、『宗教プロットの補強パッチ』みたいなものが当てられたんだよ。非公式なModかもしれないけど。あ、Modっていうのは、改造データのことね」
仮にそうだとすれば、その補強パッチかModかわからないものは、信仰の揺らぎを防ぐためだとか、女性信者をより強く取り込むためだとか、天からの監視を実感させるために行われたというところだろう。
その成果は抜群だったと言わざるを得ない。
なぜ聖母が現れたのがこどもたちの前だったのか。
それも単純な話だ。
大人よりも「世界の綻び」に敏感であり、見える存在だからだろう。
もし神や上位次元の存在が干渉するのなら、プログラムに柔らかい部分=脳を持つ子どもを狙うのが合理的だ。
宗教は世界観を司るシステムであり、マティファの聖母はそのアップデートファイルであり、教会は管理者権限の無いただの端末といったところだろう。
この世界はマティファの聖母を承認したのではなく、承認させられたのだ。
上位次元世界の誰かが「信仰曲線が下がってるぞ、補強しろ」と指示を出した。その結果がマティファの聖母だった。
「ふざけたことを。この世界は現実だ!神はラース様だけだ!」
「パパ、真理に近づくとき、世界は静かになるんだよ。わたしは今、すごく静かなところにいる。不思議だね。真理のそばにいると、音が聞こえなくなるの」
それはイルマも同じだった。
その瞬間、イルマは誰かが耳を澄ませている気がした。
ーーどうかな村戸イルマくん、ぼくたちの仲間には姫織星彦という男がいる。その男のギフトは、ありとあらゆる病や怪我を治すものなんだ。君やお姉さんが患っている若年性認知症を治すこともできる。鞍馬葉子と、藤島大地を解放してくれたら、君たち姉弟の病気を治すことを約束しよう。我々が欠けることなく生きている限り『大厄災』が起きることはないんだ。
鵜山京一郎の問いに、イルマが何と答えるか誰かが耳を澄ませている。そんな気がしたのだ。
「鵜山京一郎、ぼくがあんたの誘いを断ればどうなる?」
「私の息子であり、君の友人でもある恭介が、君のすぐそばにいる。私の息子が君を凍らせ、ただ存在するだけの存在になるだろう」
鵜山恭介も犠巫徒だったということだろう。
「君の存在に価値などない。価値があるのは君のお姉さんだけだ」
「じゃあ、姉さんの若年性認知症は治してくれるんだね」
治さなければ、いくら姉の目が『神の目』であり『ラプラスの悪魔』であっても、観測した未来をアウトプットすることができなくなってしまう。
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