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#88.8 『ヨミテラスと第六天魔王の契約』と『ヨミテラスの真の目的』
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✧『ヨミテラスと第六天魔王の契約』✧
――滅びの星を照らす黒き光――
はるか昔。
仏と神の境界がまだ曖昧だった時代。
葦原中国では終わらぬ戦が続き、
血と煙が大地を覆っていた。
人々の怨嗟は渦となり、ついに――黄泉の門を穿った。
その闇からあらわれたのが、ヨミテラス。
黄泉の国を統べる、“死の太陽”。
「救いを求める声、確かに聞こえた。わたしに応えよ、と」
しかし、葦原中国の神々はすでに滅び、光はどこにもなかった。
そこへひとりの“仏ならざる仏”が近づいた。
第六天魔王である。
この世の煩悩を種に咲き誇る、破戒の王。
魔王は言った。
「光が足りぬなら……我が闇を灯せばよいだろう?」
ヨミテラスが魔王に問う。
「闇は光を食む。おまえは何を望む?」
魔王は答える。
「ただ、信仰が欲しい。死を恐れる心すべてを、我に差し出せ」
そして、契約は静かに結ばれた。
ヨミテラスは死者の魂を、魔王は生者の恐怖を供物とし、ふたりは一つの太陽を掲げた。
黒き日輪――『第六の救い』である。
その偽りの光は、戦場に散った兵を蘇らせ、怨霊を聖者へと祀りかえした。
だが、それは慈悲ではない。
死を利用し、生を操る支配の信仰。
こうして、第六天魔王は、人の世の信仰を掴み始める。
そして――
ヨミテラスは魔王にささやいた。
「帝が来る。その絶望を喰らい尽くせ」
帝は救いを求め、高天原を訪れたと信じた。
けれど彼が見たのは、滅びの神座と、闇の契約だけ。
帝は語らず、ただ国へ戻り、ひとりで死んだ。
その死を、魔王は“信仰の証”として飲み込み、さらに強くなっていった。
✦ 天上なき世の夜明け
神々なき世界でも、人は救いを求める。
その光が闇でも――気づかずに。
この日から「死」は救いとなり、恐怖は祈りとなった。
そして七魔の時代が、静かに幕を開けたのである。
✧『ヨミテラスの真の目的』✧
――終わりの先の、もう一つの始まり――
黄泉の深淵に生まれし太陽、ヨミテラス。
その光は、生者には見えず、死者だけを照らす。
けれど彼女は、死を愛しているわけではなかった。
むしろ逆であった。
死に奪われた者たちの嘆きを、誰よりも痛んでいる神だった。
しかし高天原の創造主・造化三神は言った。
「死は秩序なり」
「死者の願いに耳を貸すな」
「死は終焉であり、戻る道はない」
それを否定した神――それこそがヨミテラスであった。
「戻りたいと願うならば、帰る道を造ろう。生者が忘れた愛を、死者に還そう」
その思想は、天の理を破る禁断。
ヨミテラスは裏造化三神と共に黄泉の国を創造し、死者の声を支え続けた。
しかし、死者の数は年々増え、愛は怨嗟へと変わり、彼の国は嘆きの海となる。
「このままでは死者は救えぬ。生者の方が、あまりにも弱い」
だからヨミテラスは決断する。
この世界を、一度終わらせると。
生と死の境そのものを壊し、神の理を崩し、新たな循環を造るために――。
そのために彼女は、第六天魔王と契約を結び、信仰を「死の力」へ変換し始めた。
「たとえ一度この世が滅んでも、そのあとに来る世界こそ真の救済。生と死が対等な世界を、わたしは創る」
――それがヨミテラスの悲願。
恐れも、痛みも、孤独も、死が奪った優しさを、取り戻すために。
✧ 神々から見たヨミテラス
彼女は、「死を司る悪神」ではなかった。
むしろ、死者のために神々へ反逆した慈悲深い神。
ゆえに造化三神はこう呼んだ。
「最も優しく、最も危うい神」
✧ 闇の太陽が望むもの
ヨミテラスが求めるのは――ただひとつ。
すべての魂が、もう一度陽の下に立てる世界。
しかし、それを実現するには、今ある世界は邪魔でしかない。
ゆえに彼女は今日も語りかける。
「いまの陽の光は、いずれ滅ぶ。そのときこそ――わたしの夜明け」
――滅びの星を照らす黒き光――
はるか昔。
仏と神の境界がまだ曖昧だった時代。
葦原中国では終わらぬ戦が続き、
血と煙が大地を覆っていた。
人々の怨嗟は渦となり、ついに――黄泉の門を穿った。
その闇からあらわれたのが、ヨミテラス。
黄泉の国を統べる、“死の太陽”。
「救いを求める声、確かに聞こえた。わたしに応えよ、と」
しかし、葦原中国の神々はすでに滅び、光はどこにもなかった。
そこへひとりの“仏ならざる仏”が近づいた。
第六天魔王である。
この世の煩悩を種に咲き誇る、破戒の王。
魔王は言った。
「光が足りぬなら……我が闇を灯せばよいだろう?」
ヨミテラスが魔王に問う。
「闇は光を食む。おまえは何を望む?」
魔王は答える。
「ただ、信仰が欲しい。死を恐れる心すべてを、我に差し出せ」
そして、契約は静かに結ばれた。
ヨミテラスは死者の魂を、魔王は生者の恐怖を供物とし、ふたりは一つの太陽を掲げた。
黒き日輪――『第六の救い』である。
その偽りの光は、戦場に散った兵を蘇らせ、怨霊を聖者へと祀りかえした。
だが、それは慈悲ではない。
死を利用し、生を操る支配の信仰。
こうして、第六天魔王は、人の世の信仰を掴み始める。
そして――
ヨミテラスは魔王にささやいた。
「帝が来る。その絶望を喰らい尽くせ」
帝は救いを求め、高天原を訪れたと信じた。
けれど彼が見たのは、滅びの神座と、闇の契約だけ。
帝は語らず、ただ国へ戻り、ひとりで死んだ。
その死を、魔王は“信仰の証”として飲み込み、さらに強くなっていった。
✦ 天上なき世の夜明け
神々なき世界でも、人は救いを求める。
その光が闇でも――気づかずに。
この日から「死」は救いとなり、恐怖は祈りとなった。
そして七魔の時代が、静かに幕を開けたのである。
✧『ヨミテラスの真の目的』✧
――終わりの先の、もう一つの始まり――
黄泉の深淵に生まれし太陽、ヨミテラス。
その光は、生者には見えず、死者だけを照らす。
けれど彼女は、死を愛しているわけではなかった。
むしろ逆であった。
死に奪われた者たちの嘆きを、誰よりも痛んでいる神だった。
しかし高天原の創造主・造化三神は言った。
「死は秩序なり」
「死者の願いに耳を貸すな」
「死は終焉であり、戻る道はない」
それを否定した神――それこそがヨミテラスであった。
「戻りたいと願うならば、帰る道を造ろう。生者が忘れた愛を、死者に還そう」
その思想は、天の理を破る禁断。
ヨミテラスは裏造化三神と共に黄泉の国を創造し、死者の声を支え続けた。
しかし、死者の数は年々増え、愛は怨嗟へと変わり、彼の国は嘆きの海となる。
「このままでは死者は救えぬ。生者の方が、あまりにも弱い」
だからヨミテラスは決断する。
この世界を、一度終わらせると。
生と死の境そのものを壊し、神の理を崩し、新たな循環を造るために――。
そのために彼女は、第六天魔王と契約を結び、信仰を「死の力」へ変換し始めた。
「たとえ一度この世が滅んでも、そのあとに来る世界こそ真の救済。生と死が対等な世界を、わたしは創る」
――それがヨミテラスの悲願。
恐れも、痛みも、孤独も、死が奪った優しさを、取り戻すために。
✧ 神々から見たヨミテラス
彼女は、「死を司る悪神」ではなかった。
むしろ、死者のために神々へ反逆した慈悲深い神。
ゆえに造化三神はこう呼んだ。
「最も優しく、最も危うい神」
✧ 闇の太陽が望むもの
ヨミテラスが求めるのは――ただひとつ。
すべての魂が、もう一度陽の下に立てる世界。
しかし、それを実現するには、今ある世界は邪魔でしかない。
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