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明石家珠莉は、このクラスにいくつかあった女子グループの中でも最上位グループのリーダーだった。グループチャットを作ったのも、おそらくはそのグループの誰かだろう。
「アカシャについてはそんなところだよ。アーカーシャ層と呼ばれるものがあり、このクラスには明石家という芸人のような名前の生徒がいたというだけだ。問題は、門だ」
と、先生は言った。
アリステラピノアを名乗る人物は、アカシックレコードにクラスメイトたちを連れていこうとしていた。
どこにあるのかも、存在するかどうかもわからない場所へ皆を連れていくためには、門となるものが必要だった。
それが無料通話アプリのグループチャット、アカシャの門。
そしてその門をくぐるためには肉体を捨てる必要があると説いた。
皆、知りたい真実があったから、アリステラピノアの口車に乗せられ、昨晩12時に各々違う場所で別々の方法で自殺をした。
これまでの話を整理すると、こういうことになるのだろう。だが、ひとりやふたりならともかく29人全員を自殺させることなど可能なのだろうか。
ぼくには到底不可能に思えた。だが事実として、29人全員を自殺させているのだ。不可能を可能にしたからくりがあるのだ。
その日何度目かのチャイムが鳴った。
時計を見ると、3限が始まっていた。
「佐野陽子は、明石家珠莉のグループに属していた。グループチャットを最初までさかのぼればわかるが、このクラスのグループチャットを始めたのも明石家のグループだ。だが佐野はグループ内では底辺の存在だった。佐野がグループチャットに招待されたときにはすでに明石家をはじめ、佐野を除くグループメンバーの他にアリステラピノアがいた」
先生の言葉を聞き、ぼくは佐野が同じグループの女子たちのために、毎日昼休みになると購買へパンやジュースのパシリをさせられているのを何度か見たことがあるのを思い出した。
グループとは無縁の高校生活を送っていたぼくには全く理解できないが、最上位のグループでパシリをさせられるくらいなら、ワンランクかツーランク落としたグループに所属しようとは思わないのだろうか。
簡単には抜け出せないものなのだろうか。
だとしたら、スクールカーストのグループはブラック企業や反社会的組織と変わらないのではないだろうか。
違う。
スクールカーストは確かに社会の縮図であり、グループとはそういうものかもしれないが、このクラスには明らかに変化が起きたタイミングがあった。
昨年の冬だ。
あの大雪の日の朝に起きた出来事が、傍目には何も変化がないように見えても、クラス全員の何かを変えてしまったのだ。それは生死感すら変えてしまうほどだったのだ。
「おそらくはアリステラピノアは明石家のグループの誰かだろう。無料通話アプリの登録には電話番号が必要となる。だからスマホ一台につき、アカウントはひとつしか取得できない」
それはつまり、明石家のグループの中の誰かが、スマホを二台持っていれば、自身とアリステラピノアの二役を演じることが可能だったということになる。
「佐野のスマホでは、佐野が招待された後からのやりとりしか確認できないが、アリステラピノアの存在について疑問を抱いている様子はなかった。佐野が発言を消去している可能性もあるが、その後招待された者たちも皆疑問を抱いている様子はなかった。誰か他の、できれば明石家に近しい者のスマホを見れば、佐野が発言を消去していたかどうかの確認がとれるが、現状としては難しいね」
佐野のスマホだけが唯一の手がかりだということだ。
「既読数……」
ぼくはスマホの画面を見ながら、ふと気になったことを呟いた。
「既読数がどうかしたのかい?」
「アリステラピノアが退会するまで、このグループチャットの参加者は30人だったんですよね?
だったら既読数がおかしいです」
皆が名前や自殺の方法を書き込み、アリステラピノアが「それでは、今夜12時に」と書き込み退会する。それまでの既読数は発言者を除いた29人でなければおかしいはずだ。
だが、その発言の前から既読数は28になっていたのだ。
「アリステラピノアが退会したからじゃないのか?」
「退会しても既読数が減ることはないはずです」
「アリステラピノアは、二台のスマホでふたつのアカウントを使い分けていた。自分の名前と自殺の方法の書き込みを終えた後は、アリステラピノアとしてしかその後を見ていないってことか」
「既読数が29から28に減っているタイミングがどこかにあるはずです。その直前とは限らないけど、それ以前に書き込んだ人物が、アリステラピノアを演じていた可能性が高いんじゃないですか?」
ぼくは慌てて、画面をスクロールさせて会話をさかのぼった。
そのときだ。
「renjiさんが退会しました」
「satoshiさんが退会しました」
「risaさんが退会しました」
死んだはずのクラスメイトたちが次々とグループチャットを退会し始めたのだ。
明石家珠莉は、このクラスにいくつかあった女子グループの中でも最上位グループのリーダーだった。グループチャットを作ったのも、おそらくはそのグループの誰かだろう。
「アカシャについてはそんなところだよ。アーカーシャ層と呼ばれるものがあり、このクラスには明石家という芸人のような名前の生徒がいたというだけだ。問題は、門だ」
と、先生は言った。
アリステラピノアを名乗る人物は、アカシックレコードにクラスメイトたちを連れていこうとしていた。
どこにあるのかも、存在するかどうかもわからない場所へ皆を連れていくためには、門となるものが必要だった。
それが無料通話アプリのグループチャット、アカシャの門。
そしてその門をくぐるためには肉体を捨てる必要があると説いた。
皆、知りたい真実があったから、アリステラピノアの口車に乗せられ、昨晩12時に各々違う場所で別々の方法で自殺をした。
これまでの話を整理すると、こういうことになるのだろう。だが、ひとりやふたりならともかく29人全員を自殺させることなど可能なのだろうか。
ぼくには到底不可能に思えた。だが事実として、29人全員を自殺させているのだ。不可能を可能にしたからくりがあるのだ。
その日何度目かのチャイムが鳴った。
時計を見ると、3限が始まっていた。
「佐野陽子は、明石家珠莉のグループに属していた。グループチャットを最初までさかのぼればわかるが、このクラスのグループチャットを始めたのも明石家のグループだ。だが佐野はグループ内では底辺の存在だった。佐野がグループチャットに招待されたときにはすでに明石家をはじめ、佐野を除くグループメンバーの他にアリステラピノアがいた」
先生の言葉を聞き、ぼくは佐野が同じグループの女子たちのために、毎日昼休みになると購買へパンやジュースのパシリをさせられているのを何度か見たことがあるのを思い出した。
グループとは無縁の高校生活を送っていたぼくには全く理解できないが、最上位のグループでパシリをさせられるくらいなら、ワンランクかツーランク落としたグループに所属しようとは思わないのだろうか。
簡単には抜け出せないものなのだろうか。
だとしたら、スクールカーストのグループはブラック企業や反社会的組織と変わらないのではないだろうか。
違う。
スクールカーストは確かに社会の縮図であり、グループとはそういうものかもしれないが、このクラスには明らかに変化が起きたタイミングがあった。
昨年の冬だ。
あの大雪の日の朝に起きた出来事が、傍目には何も変化がないように見えても、クラス全員の何かを変えてしまったのだ。それは生死感すら変えてしまうほどだったのだ。
「おそらくはアリステラピノアは明石家のグループの誰かだろう。無料通話アプリの登録には電話番号が必要となる。だからスマホ一台につき、アカウントはひとつしか取得できない」
それはつまり、明石家のグループの中の誰かが、スマホを二台持っていれば、自身とアリステラピノアの二役を演じることが可能だったということになる。
「佐野のスマホでは、佐野が招待された後からのやりとりしか確認できないが、アリステラピノアの存在について疑問を抱いている様子はなかった。佐野が発言を消去している可能性もあるが、その後招待された者たちも皆疑問を抱いている様子はなかった。誰か他の、できれば明石家に近しい者のスマホを見れば、佐野が発言を消去していたかどうかの確認がとれるが、現状としては難しいね」
佐野のスマホだけが唯一の手がかりだということだ。
「既読数……」
ぼくはスマホの画面を見ながら、ふと気になったことを呟いた。
「既読数がどうかしたのかい?」
「アリステラピノアが退会するまで、このグループチャットの参加者は30人だったんですよね?
だったら既読数がおかしいです」
皆が名前や自殺の方法を書き込み、アリステラピノアが「それでは、今夜12時に」と書き込み退会する。それまでの既読数は発言者を除いた29人でなければおかしいはずだ。
だが、その発言の前から既読数は28になっていたのだ。
「アリステラピノアが退会したからじゃないのか?」
「退会しても既読数が減ることはないはずです」
「アリステラピノアは、二台のスマホでふたつのアカウントを使い分けていた。自分の名前と自殺の方法の書き込みを終えた後は、アリステラピノアとしてしかその後を見ていないってことか」
「既読数が29から28に減っているタイミングがどこかにあるはずです。その直前とは限らないけど、それ以前に書き込んだ人物が、アリステラピノアを演じていた可能性が高いんじゃないですか?」
ぼくは慌てて、画面をスクロールさせて会話をさかのぼった。
そのときだ。
「renjiさんが退会しました」
「satoshiさんが退会しました」
「risaさんが退会しました」
死んだはずのクラスメイトたちが次々とグループチャットを退会し始めたのだ。
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