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それから何日か私は学校を休み、週明けからはまた学校に通い始めた。
休んでいる間、鬱陶しいほどに加藤麻衣や小島雪、鈴木芹香から無料通話アプリのチャットが届いた。
返事をするのも面倒で、一度でも返せば何度かやりとりをしなければいけなくなるのを考えると本当に面倒になり、無視し続けた。
グループによっては何分以内に返事をしなければいけないといったルールがあるらしい。考えただけでうんざりする話だ。
私がいたグループにはそんなルールはなかったが、数日ぶりに登校した私を見ても、三人とも話しかけて来なかった。
どうせ本当に心配などしてはいない。心配してるふりをしてあげてやったのに、という感覚なのだろう。それなのに無視をされたことが腹立たしいのだろう。
彼女たちとの関係は終わらせようと思っていた。だからちょうどよかった。
私は先生のことも避けるようになった。教室では目を合わさないようにし、天文部に顔を出さなくなった。
どんな顔をして会えばいいのかわからなかった。
空を見上げることもしなくなった。
先生が好きだから星を好きになったわけではなかったのに、星を見るだけで先生のことを思い出して辛くなってしまう。
星を好きだという気持ちは日に日に薄れていった。
まるで自分が自分でなくなっていくような感覚だった。
星野くんは昼休みになると、相変わらず屋上に向かった。
好きな人に、付き合っている好きな人がいる。
そのことは星野くんも変わらないはずなのに、彼はどうしてそんなつらい事実を受け入れられたのだろう。
何故昼食を共にし、会話を楽しむことができるのだろう。
受け入れられない私がおかしいのだろうか。
私にはよくわからなかった。
よくわからないまま梅雨が終わり、よくわからないまま夏を迎えた。
私は自暴自棄になっていたのかもしれない。自傷行為をするような感覚で、夏休み前にたまたま告白をしてきた男の子と付き合うことにした。
大和将吾(やまと しょうご)という、男子グループの最上位に所属する男の子だった。
大和は身長が182センチあり、部活はサッカー部で、中学のときには全国大会にも出たことがあるらしかった。
1年のときから先輩たちを差し置いてレギュラーメンバー? というのだろうか、それになり、試合に出ているらしかった。体育の授業ではバスケもバスケ部員以上に上手だという話だった。サッカーにもバスケにも興味がなかったから、すごいね、という言葉しか思い浮かばなかった。
すごいね以外の褒め言葉は何かないか、私は赤堀に訊ねると、
「そのサッカー部の馬の骨は、スカイラブハリケーンはできるのですか?」
サッカーの技の名前だろうか、そんなことを逆に聞き返された。
「よく知らないけど、聞いたことないから出来ないと思う」
赤堀は、つまらなそうにフンッと言った。
出来ないなら大した選手ではないということだろうか。
どんな技なのか検索をして動画を見たけれど、昔のサッカーアニメに出てきた技だった。素人目にも生身の人間には出来ない技に見えた。
スクールカーストは付き合う相手によっても変動する。
まるで主婦が、夫の職業や収入によってママ友グループ内での立場が決まってしまうように、誰と付き合うかもまたスクールカーストというくだらないゲームでは、重要な要素となる。
私はまたスクールカーストの一部を担う存在になった。
好きでもない男の子と夏休みのほとんどを過ごしながら、私は星野くんのことを考えていた。
彼は夏休みをどう過ごしているのだろうか。
先生に会えなくて寂しい思いをしているのか、それともほっとしているのか。
私は大和に星野くんの連絡先を知らないか訊いた。
「知らない。てか、誰それ?」
彼は素っ気なく答えた。星野くんの存在を本当に認識していないようだった。
「何で俺といる時に他の男のことを考えてるんだよ」
ショッピングモールの中で怒鳴り散らされた。
大和は自尊心が高く、自分のことを完璧な人間だと思い込んでいるような男だった。こういう人間が何の成長もせず大人になり社会に出ていくのだろう。セクハラやパワハラをするような大人になるのだろう。
赤堀とも星野くんともまるで違う。くだらない生き物に見えた。
彼といることで、スクールカーストでは上位にいられても、自分までくだらない生き物に思えてくるから不思議だった。
私はいつか星野くんが話していた、エキストラにもカップルがいるという話を思い出した。
私と大和はそれだった。
休んでいる間、鬱陶しいほどに加藤麻衣や小島雪、鈴木芹香から無料通話アプリのチャットが届いた。
返事をするのも面倒で、一度でも返せば何度かやりとりをしなければいけなくなるのを考えると本当に面倒になり、無視し続けた。
グループによっては何分以内に返事をしなければいけないといったルールがあるらしい。考えただけでうんざりする話だ。
私がいたグループにはそんなルールはなかったが、数日ぶりに登校した私を見ても、三人とも話しかけて来なかった。
どうせ本当に心配などしてはいない。心配してるふりをしてあげてやったのに、という感覚なのだろう。それなのに無視をされたことが腹立たしいのだろう。
彼女たちとの関係は終わらせようと思っていた。だからちょうどよかった。
私は先生のことも避けるようになった。教室では目を合わさないようにし、天文部に顔を出さなくなった。
どんな顔をして会えばいいのかわからなかった。
空を見上げることもしなくなった。
先生が好きだから星を好きになったわけではなかったのに、星を見るだけで先生のことを思い出して辛くなってしまう。
星を好きだという気持ちは日に日に薄れていった。
まるで自分が自分でなくなっていくような感覚だった。
星野くんは昼休みになると、相変わらず屋上に向かった。
好きな人に、付き合っている好きな人がいる。
そのことは星野くんも変わらないはずなのに、彼はどうしてそんなつらい事実を受け入れられたのだろう。
何故昼食を共にし、会話を楽しむことができるのだろう。
受け入れられない私がおかしいのだろうか。
私にはよくわからなかった。
よくわからないまま梅雨が終わり、よくわからないまま夏を迎えた。
私は自暴自棄になっていたのかもしれない。自傷行為をするような感覚で、夏休み前にたまたま告白をしてきた男の子と付き合うことにした。
大和将吾(やまと しょうご)という、男子グループの最上位に所属する男の子だった。
大和は身長が182センチあり、部活はサッカー部で、中学のときには全国大会にも出たことがあるらしかった。
1年のときから先輩たちを差し置いてレギュラーメンバー? というのだろうか、それになり、試合に出ているらしかった。体育の授業ではバスケもバスケ部員以上に上手だという話だった。サッカーにもバスケにも興味がなかったから、すごいね、という言葉しか思い浮かばなかった。
すごいね以外の褒め言葉は何かないか、私は赤堀に訊ねると、
「そのサッカー部の馬の骨は、スカイラブハリケーンはできるのですか?」
サッカーの技の名前だろうか、そんなことを逆に聞き返された。
「よく知らないけど、聞いたことないから出来ないと思う」
赤堀は、つまらなそうにフンッと言った。
出来ないなら大した選手ではないということだろうか。
どんな技なのか検索をして動画を見たけれど、昔のサッカーアニメに出てきた技だった。素人目にも生身の人間には出来ない技に見えた。
スクールカーストは付き合う相手によっても変動する。
まるで主婦が、夫の職業や収入によってママ友グループ内での立場が決まってしまうように、誰と付き合うかもまたスクールカーストというくだらないゲームでは、重要な要素となる。
私はまたスクールカーストの一部を担う存在になった。
好きでもない男の子と夏休みのほとんどを過ごしながら、私は星野くんのことを考えていた。
彼は夏休みをどう過ごしているのだろうか。
先生に会えなくて寂しい思いをしているのか、それともほっとしているのか。
私は大和に星野くんの連絡先を知らないか訊いた。
「知らない。てか、誰それ?」
彼は素っ気なく答えた。星野くんの存在を本当に認識していないようだった。
「何で俺といる時に他の男のことを考えてるんだよ」
ショッピングモールの中で怒鳴り散らされた。
大和は自尊心が高く、自分のことを完璧な人間だと思い込んでいるような男だった。こういう人間が何の成長もせず大人になり社会に出ていくのだろう。セクハラやパワハラをするような大人になるのだろう。
赤堀とも星野くんともまるで違う。くだらない生き物に見えた。
彼といることで、スクールカーストでは上位にいられても、自分までくだらない生き物に思えてくるから不思議だった。
私はいつか星野くんが話していた、エキストラにもカップルがいるという話を思い出した。
私と大和はそれだった。
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