ぼくのクラスには宗教が存在した。

あめの みかな

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大和とはすぐにも別れたかった。
だがそれは、彼の自尊心を大きく傷つけることになり、面倒な事態を引き起こすことは目に見えていた。
彼は単純な男だ。自己顕示欲と承認欲求さえ満たしてやれば、いつかスクールカースト以外のことで役に立つかもしれない。それは彼を褒め続けてやっていれば維持できる。私はそんな風に考えていた。

今思えば、私はそんなことに時間を割いている場合ではなかった。
星野くんの連絡先は、たぶん先生なら知っているはずだった。私は先生の連絡先を知っていたから、たとえ辛い思いをしたとしても先生と連絡をとり、星野くんの連絡先を教えてもらうべきだった。
けれど、そのときの私にはそれから数ヶ月後に起きることなど想像もつかなかった。だから、諦めてしまった。

そして、私はあの大雪の日を迎えた。

その年の冬、数十年に一度あるかないかという大寒波がやってきた。
大寒波は滅多に雪が降らない私たちの街に大雪を降らせた。

その翌日の朝、紫帆先生は体育館の用具室の中で、凍死した姿で発見された。

用具室は外側からしか施錠や解錠を行うことはできず、中にいた先生は外に出たくても出られなかったのだ。
先生はスマホを持っておらず、助けを呼ぶことも出来なかった。鞄は職員室に置かれたままだったが、その中にも先生の車や自宅にもスマホはなかった。

天文部の顧問であり、体育教師でもなかった先生がどうしてそんな場所にいたのか、先生が中にいるのに外から鍵をかけたのは誰なのか、生徒たちはもちろん教師たちも誰もわからなかった。

しかし、先生のスマホがどこからも見つからない以上、絶対にその死は不慮の事故などではなかった。故意の殺人だということは明白だった。
誰かが先生をそこに呼び出し、スマホを奪い、閉じ込めた。そうとしか考えられなかった。

警察も最初は事件と事故の両面から捜査を開始した。
だが、校内の監視カメラの数は限られていて体育館にはなかった。少ない監視カメラでは犯人と思われる人物を特定することはできなかった。
逆に言えば、監視カメラの数や場所を知っている人間の犯行だということだった。
しかし警察は事件性はないと判断した。不慮の事故として先生の死を処理した。
学校も校内で殺人事件が起きたということにはしたくなかったに違いない。早々に事故だったことにして解決させたかったはずだ。生徒の親たちもきっとうるさかっただろう。

先生の死は、私がすべての選択肢を間違えた結果として迎えたバッドエンドだった。
ゲームと違ってやり直すことはできない。たとえやり直すことができたとしても、どこからやり直せばいいのかわからなかった。

先生に要らぬ心配をかけないよう、スクールカーストなどというくだらないゲームの参加者になってしまったのがいけなかったのだろうか。
星野くんのように、クラスの中で孤立していれば、私も彼のように先生のそばにいられたはずだった。
けれどそれでは、彼と同じか近いタイミングで私は先生に恋人がいることを知ってしまう。
タイミングが違うだけで私は必ず先生と距離を置くようになっただろう。

では私が先生と距離を置き始めたのがいけなかったのだろうか。

星野くんの連絡先を知らないままにしてしまったことがいけなかったのだろうか。

生徒たちの誰よりも先生のそばにいた星野くんですら、その死を防げなかったのだ。
でももし、私が彼と協力関係にあったなら?
駄目だ。そんな風に考えられるのは、先生が死んでしまうことを知っていなければ無理だった。

私には先生の死を防ぐことなど、どんな選択肢を選んでいたとしても無理だったのだ。

私に出来ることは、先生の死の真相を究明すること。ただそれだけだった。




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