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グループチャットに招待されてから一週間が過ぎた。
その日は平日だったけれど、学校は創立記念日で休みだった。
「小学生の下校の時間になりました」
午後3時、
「子どもたちが安全に帰れるように見守ってください」
そんな放送が近隣の小学校から聞こえてきた。
わたしはスマホを片手にベッドから起き上がると、
「狩りの時間ね」
そう呟いた。
スマホではなく拳銃を片手に、一時間の制限時間の中で一体何人の小学生を殺せるか、そんなことを想像した。
でも想像だけ。実際にはそんな馬鹿げたことはしない。
ただ、わたしは思うのだ。
わたしが頭の中で殺していく小学生たちも、スクールカーストの頂点に君臨する明石家珠莉や西日野亜美、八王子梨沙たちも、わたしの慈悲によって生かされているだけなのだ。
その気になりさえすれば、わたしはいつでもあの女たちを殺せる。
鞄の中にいつも入っているペンケースの中の筆記用具でも人は殺せるからだ。
それにあの女たちは知らない。
杉本紫帆先生を殺したのが、あの3人だということを、わたしが知っていることを。
わたしは自ら手を汚さずとも、いつでも社会的にあの女たちを抹殺できる立場にあったのだ。
あの女たちは、金持ちの家に生まれたくせに、スリルを楽しむだとかダサいことを言っては万引きをする常習犯だった。
彼女たちは高2の夏休みにそれを始め、同じグループのわたしも巻き込まれた。
冬休みになる少し前、わたしはそのことを先生に相談した。
そしてクリスマスシーズンのある日、先生にわたしたちを尾行してもらうことにしたのだった。
市内のショッピングモールの中で、わたしはスマホをスピーカー通話にしたままにしてバッグに入れておき、常にわたしたちの居場所が先生にわかるようにした。
万引きをするためだけに入ったアクセサリー屋さんで、わたしは商品をバッグに入れるふりだけをした。
わたしは先に店を出て、事前に買っておいたアクセサリーを先生に渡した。わたしだけが万引きしていないとなれば、3人に怪しまれるからだ。わたしも万引きをしたことにしておかなければいけなかった。
3人がそれぞれひとつずつ商品をバッグに入れ、次々店を出たところで、たまたまその場に居合わせた体を装った先生が3人に声をかける。わたしはすでに見つかってしまっている。そういう計画だった。
計画は成功した。
先生は3人とわたしを連れ店に戻ると、担任の教師であることや教え子たちが万引きをしたことを店員に謝罪した。彼女たちのことは私がちゃんと指導しますから、警察には通報はしないようにお願いします、と何度も頭を下げた。
おかげで、ただスリルを楽しむだけの馬鹿馬鹿しいゲームがようやく終わった。
でもそれは、あくまでわたしの計画の第一段階に過ぎなかった。
先生に弱みを握られたと感じた3人が、その後どういう行動を取るのかくらいわたしには手に取るようにわかっていた。
3人に先生を殺させる、それがわたしの計画の第二段階だった。
先生である必要はなかった。
ただ、人は他人の感情を支配することで、どこまでその者を操ることができるのか知りたかっただけだ。
計算外だったのは、明石家珠莉や八王子梨沙はともかく、西日野亜美がわたしの想像以上に頭が良かったということだった。
亜美が勉強ができることは知っていた。けれど、彼女のありきたりとも言えるような万引きの手口を見ていたわたしには、ただ勉強ができるだけで決して頭が良いわけではないことを知っていたつもりだった。
でも違っていた。
亜美は珠莉や梨沙たちにうまく合わせていただけだったのだ。
亜美が先生を殺すために考えた計画は、クラスメイトの男子たちの中でも特に利用しやすい自分たちの彼氏を利用するというものだった。
リンチをさせるだとか、レイプをさせるだとか、そういう珠莉や梨沙が考えそうなことではなく、亜美はひとりひとりに別々の些細な行動を取らせるだけ。
その行動は本当に些細なものでしかなく、それが先生を殺すことに繋がる行為だとは、翌朝先生が死体で発見されるまで誰もわからないようにするというものだった。
亜美はその計画をわたしには秘密で3人だけで進めようとしていた。
まさか彼女も毎日着ている制服に盗聴機がしかけられているとは思いもよらなかっただろう。
その日は平日だったけれど、学校は創立記念日で休みだった。
「小学生の下校の時間になりました」
午後3時、
「子どもたちが安全に帰れるように見守ってください」
そんな放送が近隣の小学校から聞こえてきた。
わたしはスマホを片手にベッドから起き上がると、
「狩りの時間ね」
そう呟いた。
スマホではなく拳銃を片手に、一時間の制限時間の中で一体何人の小学生を殺せるか、そんなことを想像した。
でも想像だけ。実際にはそんな馬鹿げたことはしない。
ただ、わたしは思うのだ。
わたしが頭の中で殺していく小学生たちも、スクールカーストの頂点に君臨する明石家珠莉や西日野亜美、八王子梨沙たちも、わたしの慈悲によって生かされているだけなのだ。
その気になりさえすれば、わたしはいつでもあの女たちを殺せる。
鞄の中にいつも入っているペンケースの中の筆記用具でも人は殺せるからだ。
それにあの女たちは知らない。
杉本紫帆先生を殺したのが、あの3人だということを、わたしが知っていることを。
わたしは自ら手を汚さずとも、いつでも社会的にあの女たちを抹殺できる立場にあったのだ。
あの女たちは、金持ちの家に生まれたくせに、スリルを楽しむだとかダサいことを言っては万引きをする常習犯だった。
彼女たちは高2の夏休みにそれを始め、同じグループのわたしも巻き込まれた。
冬休みになる少し前、わたしはそのことを先生に相談した。
そしてクリスマスシーズンのある日、先生にわたしたちを尾行してもらうことにしたのだった。
市内のショッピングモールの中で、わたしはスマホをスピーカー通話にしたままにしてバッグに入れておき、常にわたしたちの居場所が先生にわかるようにした。
万引きをするためだけに入ったアクセサリー屋さんで、わたしは商品をバッグに入れるふりだけをした。
わたしは先に店を出て、事前に買っておいたアクセサリーを先生に渡した。わたしだけが万引きしていないとなれば、3人に怪しまれるからだ。わたしも万引きをしたことにしておかなければいけなかった。
3人がそれぞれひとつずつ商品をバッグに入れ、次々店を出たところで、たまたまその場に居合わせた体を装った先生が3人に声をかける。わたしはすでに見つかってしまっている。そういう計画だった。
計画は成功した。
先生は3人とわたしを連れ店に戻ると、担任の教師であることや教え子たちが万引きをしたことを店員に謝罪した。彼女たちのことは私がちゃんと指導しますから、警察には通報はしないようにお願いします、と何度も頭を下げた。
おかげで、ただスリルを楽しむだけの馬鹿馬鹿しいゲームがようやく終わった。
でもそれは、あくまでわたしの計画の第一段階に過ぎなかった。
先生に弱みを握られたと感じた3人が、その後どういう行動を取るのかくらいわたしには手に取るようにわかっていた。
3人に先生を殺させる、それがわたしの計画の第二段階だった。
先生である必要はなかった。
ただ、人は他人の感情を支配することで、どこまでその者を操ることができるのか知りたかっただけだ。
計算外だったのは、明石家珠莉や八王子梨沙はともかく、西日野亜美がわたしの想像以上に頭が良かったということだった。
亜美が勉強ができることは知っていた。けれど、彼女のありきたりとも言えるような万引きの手口を見ていたわたしには、ただ勉強ができるだけで決して頭が良いわけではないことを知っていたつもりだった。
でも違っていた。
亜美は珠莉や梨沙たちにうまく合わせていただけだったのだ。
亜美が先生を殺すために考えた計画は、クラスメイトの男子たちの中でも特に利用しやすい自分たちの彼氏を利用するというものだった。
リンチをさせるだとか、レイプをさせるだとか、そういう珠莉や梨沙が考えそうなことではなく、亜美はひとりひとりに別々の些細な行動を取らせるだけ。
その行動は本当に些細なものでしかなく、それが先生を殺すことに繋がる行為だとは、翌朝先生が死体で発見されるまで誰もわからないようにするというものだった。
亜美はその計画をわたしには秘密で3人だけで進めようとしていた。
まさか彼女も毎日着ている制服に盗聴機がしかけられているとは思いもよらなかっただろう。
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