空想お仕事シリーズ・ボーイズサイド「僕は今日も人の死を笑いに行く」「死神のタナトーシス」「赤ワインとチーズとブロッコリーのトリアージュ」他

あめの みかな

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「導かれなかった者たちへ」#19「要 雅雪編 1」

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ーーーーーー 要 雅雪編 ーーーーーー


八王子鳴海と、いつも彼のそばにいる
翌檜紫帆(あすなろ しほ)という少女のことは、入学式のときから半年以上ずっと気になっていた。
いや、それよりもっと前、受験のときからだった。

受験生ではない女子が部屋着のようなモコモコのパステルカラーの服を着たまま、受験生で学ラン姿の男子のそばに立ち、ひそひそと回答を教えていたのだから、ふたりは受験会場で滅茶苦茶目立っていた。

翌檜はまるで、八王子の姉のようでもあり、妹のようでもあった。幼なじみのようにも見えたし、恋人のようにも見えた。
2年ほど前、両親が連れ子持ち同士の再婚をしたから、俺にはひまりという血の繋がらない妹がいた。
だが、ずっとひまりとの距離感がわからないまま、お互いに遠慮をしながら家族のふりをするような日々を過ごしていたから、ふたりの関係性をすごく羨ましく思ったことを覚えていた。

試験会場にふたり一組で堂々とやってきて入試に挑むくらいだから、ふたりとも翌檜のことが他人には見えていないと思い込んでいるようだった。
だが、俺には丸見えだった。
たぶん八王子がギフトを持っていて、俺もギフトを持っていたから、彼女の姿やふたりのやりとりを見たり聞いたりできたのだと思う。
彼のギフトで産み出されたイマジナリーフレンドのような存在が、翌檜だということは何となくわかった。

不思議だったのは翌檜の体がいつ見ても、別の写真から切り取って張り付けたかのような違和感があったことだった。一体どんなギフトを持っていたら、他人が認識可能なイマジナリーフレンドを作れるのだろう。俺は彼にとても興味を持った。
八王子鳴海に対する興味は、同じクラスになったことによって日に日に大きくなっていった。

この蠱毒のようなデスゲームの参加者に選ばれたとき、真っ先に浮かんだのはふたりのことだった。
いつも幸せそうにしているあのふたりが、このゲームに巻き込まれてしまうことで、怪我をしたりどちらかが死んでしまうようなことになったら嫌だなと、俺は自分の心配をするよりも先にふたりの心配をしていることに気づいて、苦笑してしまった。

例の本は、生徒会の副会長の御手洗琥珀に渡されたその日のうちに、図書室に隠した。木を隠すなら森の中というやつだ。
俺は図書委員だったから、ちょうどその日に入ってきていた新刊何冊かとカバーをシャッフルした。カバーのサイズが合わないものばかりだったが、表紙にあるタイトルや著者名さえわかれば、それ以外の部分を多少切ってしまっても、そういう装丁に見せかける方法はいくらでもあった。縦や横に真っ直ぐに切るのではなく斜めに切ることで、意外とそれっぽく見えるものなのだ。

学校の図書室や街の図書館にある本に、特殊な加工がされているのを見たことがあると思う。
あれは、ブックカバーフィルムと呼ばれる透明のフィルムが貼られている。新刊を入れた際に、図書委員が一冊ずつ行う仕事のひとつで、「ブッカーかけ」とか「ブッカー貼り」とか呼ばれている。
せっかく集めた漫画を自宅の本棚にならべていたら、背表紙が真っ白になりタイトルが読み取りにくくなったり、色が退色して青白くなってしまった経験がある人は多いと思う。日当たりの良い場所だと特にそうなりやすい。
ブッカーかけは紫外線によるダメージを軽減させ、劣化を抑えて長期保存を可能にさせる役割がある。
また、図書室の本は不特定多数の利用者が触れる機会が多いため、ウイルスや菌に敏感な時期には、感染症対策を行い除菌などを行う。優れた抗菌作用を持っており、表紙に貼ることで撥水効果がプラスされ、アルコールクリーナーを使った除菌や拭きとりを可能にする。
ブッカーかけをした後は、図書室のどの棚の何列目かを示すシールを一枚余分に作り、完全に図書室の蔵書にした上で、一番人気がないコーナーの本が並ぶその奥に隠した。


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