ひとりの少女を守るために70億の命を犠牲になんてできないから、ひとりの少女を犠牲にしてみた結果、事態がさらに悪化した件。

あめの みかな

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第6章 第7話

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 千里眼や未来予知能力など、そんなものがあるはずがない。
 タカミはそう思っていた。
 そんなものがあるのなら、テロが未遂に終わることが予知できたはすだ。教祖や幹部たち、実行犯の信者たちが軒並み逮捕され、教団が解体されることもまた予知できたはずだ。
 タカミや一条の存在が知られていたはずだ。

 だが、

『シンギュラリティによる邪魔が入った、と教祖は仰られていました』

『ええ、読んでいます、ずっと』

『そうですか。先ほどから気になってはいましたが、やはり一条刑事が来ているのですね』

『ご心配なく。一条刑事に私が何かするつもりはありませんから』

 タカミは、映像を観ていくうちに、ショウゴとアンナの会話に違和感を覚え始めていた。
 ショウゴは今何か話したか? アンナに何か質問したか?
 なぜ、アンナだけがひとり話している?
 独り言ではない。ショウゴが疑問に思うだろうこと、タカミが疑問に思ったことにアンナは回答しており、ふたりの会話が成立しているように見えるのだ。
 アンナには読心術がある、そう言われても納得してしまうようなやりとりだった。

 タカミはもう一度その部分を見返してみることにした。
 ショウゴの口は動いていない。

『ええ、読んでいます、ずっと』

 これは、ショウゴの心を、ということだろう。
 やはりアンナはショウゴが抱いていただろう疑問に答えていた。

 一条が来ていることもショウゴは話してはいなかった。
 口は動いていないし、紙などに質問を書いて見せてもいない。

 間違いなかった。
 アンナには読心術があった。


『我が教祖曰く、私の存在もまたシンギュラリティだと』

『つまり、アンナさんのように、他者の心を読むことができる人間が、シンギュラリティ?』

『そうですね。私だけでなく大和さんもまたシンギュラリティということになるでしょう』

 一条が言っていた。
 互いに拳銃を向けあったとき、ショウゴにはまるで心が読まれているようだったと。
 彼もまた読心術を交えながらアンナと会話をしているように映像からは見てとれた。
「まるで」だとか「ようだった」というわけではなかったのだ。


『ですが、正確に言えば、他者の心を読む力だけではなく、千里眼や予知能力をはじめとする様々な特殊な能力を持つ人間全般を指していたのだと思います』

『私もそう考えました。
 ですが、我が教祖は自分はシンギュラリティではないと』

『我が教祖によれば、私があなたの心を読み、あなたもまた私の心を読むことができるように、シンギュラリティの能力とは一方通行のものではなく、相互に干渉が可能なものである、と』

『シンギュラリティとは、先天的に持つ能力や、後天的に得た能力を自らの意思でコントロールすることが可能な者のみを指すのです。
 我が教祖は確かに千里眼をお持ちであり、未来を予知されることも可能でした。他にも様々な能力をお持ちになっていましたが』

『自分ではその能力をコントロールはできなかった?』

『ええ、千里眼や未来予知は、あくまで天からの啓示のような形でしかなかったと』

『我が教祖・朝倉現人は、信者へのマインドコントロールを行い、首相暗殺テロをはじめ、数々のテロを企てたとされています。
 ですが実際には、それはマインドコントロールではありませんでした』

『問題は、我が教祖にはその力をコントロールすることはできなかったということです』

『我が教祖はいつも心を痛めていらっしゃいました』


 その映像はすでにタカミの理解を超えていた。
 その後さらに理解を超えることが次々と起きていく。

 アナスタシアが手のひらから火球を出し、タンクローリーがロビーに突っ込んでくるとアンナが死に、死んだはずの彼女はアナスタシアに憑依していた。

 巨漢の暴徒は、肉体の限界を超えた動きをし、召喚か転移魔法のようにその手にマシンガンを取り出しただけではなく、アリステラの英雄アンフィスの弟子を自称した。
 10万年もの間、他者の肉体への憑依を繰り返すことで生き長らえてきたと。
 アンナが暴徒に二重憑依することで、自らマシンガンで自害させることに成功した。

 まるで安っぽい漫画が原作の安っぽい実写映画を見せられているような気分にさせられたが、これがここで実際に起きたことなのだ。

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