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第8章 第2話
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全裸でタカミの部屋に入ってきては、話の途中でそれに気づいて飛び出していき、アルペンの冬のCMくらい重装備になって戻ってきたレインは、年下のショウゴをボディーガードのように隣に同席させた。
ショウゴはショウゴで何故か雨合羽を着ており、さすがにその下にガンベルトはつけていな……つけているだと……!? 相変わらずジト目をタカミに向けていた。
「あのさ……この街でね、あの有名な『雨合羽の男』に、そんな目で見られるぼくの気持ち、わかるかなぁ?」
勘弁してほしかった。
「ぼくの目には、今のショウゴくんは、人斬り抜刀斎とか鬼殺隊の柱の人とか、あと北斗神拳の継承者とか、そういう何かに見えちゃうわけなんですよ。
ショウゴくんがね、優しくていい子なのは、もちろん知ってるんですよ。
でもね、その雨合羽とね、目がね、本当に怖いんですよ……」
「タカミさん? そろそろクルヌギアのお話を続けさせていただいても?」
あんたはとりあえず、うちの妹のアルペン一式を脱げ。スキー板を外せ。
と、言いたいところだったが、レインの手にストックがしっかり握られているのを見て、「かまいたちの夜」で恋人にストックで喉を刺されて死ぬバッドエンドを思い出したのでやめた。
「かまいたちの夜」は、まだ小学生だった妹が父から「コナンが好きならこれも楽しいぞ」と薦められたものの、「ユワにまだちょっと難しいから手伝って」と頼まれて、いっしょに犯人当てを楽しんでいたのだが、妹がよりによって主人公にタカミの名前をつけ、恋人に自分の名前をつけていたため、よりショッキングなバッドエンドとして、タカミの記憶に刻まれていた。
妹にストックで喉を刺されて死ぬとか、ゲームとはいえ地獄絵図過ぎた。
幼稚園の頃からショウゴのことが好きだったのだから、彼の名前をつければよかったのに、やはり兄の前では恥ずかしかったのだろうか。
「クルヌギアって?」
まだ何も知らないショウゴに、タカミは簡単に説明した。
「母から聞いた話では、クルヌギアはある日突然現れた国だということでした」
「異世界から来たアリステラと同じというわけか」
「はい。そのせいかクルヌギアは近隣諸国から一斉に攻撃を受けることになったそうです。
ですが、近隣諸国の兵士たちの武器では、クルヌギアの兵士には傷ひとつつけることができなかったと」
「旧石器時代の武器なんて、石や骨を削ったり磨いたりしたものだからね。
アリステラは10万年前の段階で、中世ヨーロッパくらいか、もしくは産業革命のあたり、もしかしたら現代よりもはるかに進んだ文明だったかもしれないし。おまけに魔法もあったわけだから」
「21世紀に生きる俺たちにも手が出せないような連中にかなうはずがないか……」
「母がしてくれた話では、魔法こそ出てきませんでしたが……
あぁ、大切なことをお話ししていませんでした。これを見て頂けますか?」
レインはそう言うと、いきなり手のひらにエーテルを集め始めた。
それがつい一週間ほど前に恐ろしい威力の火球になったことを知っているタカミとショウゴは物陰に隠れようとしたが、
「ショウゴさん、タカミさん、大丈夫ですよ。メラは撃ちませんから」
レインにそう言われ、とりあえず安心した。でもメラはやめようね、メラは。いい子だから。
レインは、手のひらの上でサッカーボールくらいの大きさの球体となったエーテルを、今度は凝縮し小さくさせていく。
やがて、ピンポン球くらいの大きさになった瞬間、キンという金属のような音と共に、エーテルはエネルギー体から結晶のような翡翠色の固形物へと変化していた。
「これは……風のクリスタル?」
「緑のオーブじゃないか?」
「オーブは違うんじゃないかなぁ。あれって宝玉でしょ。玉でしょ」
「クリスタルも違うだろ。これ、エアロ色のブリザラだし」
その場にいる全員が何でもゲームに例えてしまうゲーム脳の持ち主というカオスな状況に対し、一条がいないためツッコミを入れる者が誰もいないのはもはや地獄だった。
「エーテルは凝縮し続けると、このように結晶化するんです。
よろしければ触ってみてくださいな」
タカミがそれに触ると、ひんやりと冷たく、そして彼が知るどんな金属よりも硬く感じた。
硬いのに、手にとって両手で引っ張ってみると、よく伸びた。
「こんなに硬いものが、なんでこんなに伸縮性があるんだ?」
「それは、結晶化したエーテルが『形状を記憶する液体金属』だからだと思いです」
「液体金属って、T-1000のやつ?」
「T-1000とは何でしょうか?」
「ターミネーターっていう映画に出てくるアンドロイド。液体金属で出来ていて、普段はヒト型なんだけど、全身を液状にできたり、体の一部をナイフとか剣に変えたりできる」
「つまり、こういうことですね」
ショウゴの言葉に、レインは結晶化したエーテルに手を伸ばした。
彼女が触れた瞬間、結晶化したエーテルはその形状を一瞬で変化させ、日本刀のような形になった。
タカミも、そしてショウゴも、目の前で今起きた出来事に驚きを隠せなかった。
ショウゴはショウゴで何故か雨合羽を着ており、さすがにその下にガンベルトはつけていな……つけているだと……!? 相変わらずジト目をタカミに向けていた。
「あのさ……この街でね、あの有名な『雨合羽の男』に、そんな目で見られるぼくの気持ち、わかるかなぁ?」
勘弁してほしかった。
「ぼくの目には、今のショウゴくんは、人斬り抜刀斎とか鬼殺隊の柱の人とか、あと北斗神拳の継承者とか、そういう何かに見えちゃうわけなんですよ。
ショウゴくんがね、優しくていい子なのは、もちろん知ってるんですよ。
でもね、その雨合羽とね、目がね、本当に怖いんですよ……」
「タカミさん? そろそろクルヌギアのお話を続けさせていただいても?」
あんたはとりあえず、うちの妹のアルペン一式を脱げ。スキー板を外せ。
と、言いたいところだったが、レインの手にストックがしっかり握られているのを見て、「かまいたちの夜」で恋人にストックで喉を刺されて死ぬバッドエンドを思い出したのでやめた。
「かまいたちの夜」は、まだ小学生だった妹が父から「コナンが好きならこれも楽しいぞ」と薦められたものの、「ユワにまだちょっと難しいから手伝って」と頼まれて、いっしょに犯人当てを楽しんでいたのだが、妹がよりによって主人公にタカミの名前をつけ、恋人に自分の名前をつけていたため、よりショッキングなバッドエンドとして、タカミの記憶に刻まれていた。
妹にストックで喉を刺されて死ぬとか、ゲームとはいえ地獄絵図過ぎた。
幼稚園の頃からショウゴのことが好きだったのだから、彼の名前をつければよかったのに、やはり兄の前では恥ずかしかったのだろうか。
「クルヌギアって?」
まだ何も知らないショウゴに、タカミは簡単に説明した。
「母から聞いた話では、クルヌギアはある日突然現れた国だということでした」
「異世界から来たアリステラと同じというわけか」
「はい。そのせいかクルヌギアは近隣諸国から一斉に攻撃を受けることになったそうです。
ですが、近隣諸国の兵士たちの武器では、クルヌギアの兵士には傷ひとつつけることができなかったと」
「旧石器時代の武器なんて、石や骨を削ったり磨いたりしたものだからね。
アリステラは10万年前の段階で、中世ヨーロッパくらいか、もしくは産業革命のあたり、もしかしたら現代よりもはるかに進んだ文明だったかもしれないし。おまけに魔法もあったわけだから」
「21世紀に生きる俺たちにも手が出せないような連中にかなうはずがないか……」
「母がしてくれた話では、魔法こそ出てきませんでしたが……
あぁ、大切なことをお話ししていませんでした。これを見て頂けますか?」
レインはそう言うと、いきなり手のひらにエーテルを集め始めた。
それがつい一週間ほど前に恐ろしい威力の火球になったことを知っているタカミとショウゴは物陰に隠れようとしたが、
「ショウゴさん、タカミさん、大丈夫ですよ。メラは撃ちませんから」
レインにそう言われ、とりあえず安心した。でもメラはやめようね、メラは。いい子だから。
レインは、手のひらの上でサッカーボールくらいの大きさの球体となったエーテルを、今度は凝縮し小さくさせていく。
やがて、ピンポン球くらいの大きさになった瞬間、キンという金属のような音と共に、エーテルはエネルギー体から結晶のような翡翠色の固形物へと変化していた。
「これは……風のクリスタル?」
「緑のオーブじゃないか?」
「オーブは違うんじゃないかなぁ。あれって宝玉でしょ。玉でしょ」
「クリスタルも違うだろ。これ、エアロ色のブリザラだし」
その場にいる全員が何でもゲームに例えてしまうゲーム脳の持ち主というカオスな状況に対し、一条がいないためツッコミを入れる者が誰もいないのはもはや地獄だった。
「エーテルは凝縮し続けると、このように結晶化するんです。
よろしければ触ってみてくださいな」
タカミがそれに触ると、ひんやりと冷たく、そして彼が知るどんな金属よりも硬く感じた。
硬いのに、手にとって両手で引っ張ってみると、よく伸びた。
「こんなに硬いものが、なんでこんなに伸縮性があるんだ?」
「それは、結晶化したエーテルが『形状を記憶する液体金属』だからだと思いです」
「液体金属って、T-1000のやつ?」
「T-1000とは何でしょうか?」
「ターミネーターっていう映画に出てくるアンドロイド。液体金属で出来ていて、普段はヒト型なんだけど、全身を液状にできたり、体の一部をナイフとか剣に変えたりできる」
「つまり、こういうことですね」
ショウゴの言葉に、レインは結晶化したエーテルに手を伸ばした。
彼女が触れた瞬間、結晶化したエーテルはその形状を一瞬で変化させ、日本刀のような形になった。
タカミも、そしてショウゴも、目の前で今起きた出来事に驚きを隠せなかった。
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