67 / 123
第8章 第2話
しおりを挟む
全裸でタカミの部屋に入ってきては、話の途中でそれに気づいて飛び出していき、アルペンの冬のCMくらい重装備になって戻ってきたレインは、年下のショウゴをボディーガードのように隣に同席させた。
ショウゴはショウゴで何故か雨合羽を着ており、さすがにその下にガンベルトはつけていな……つけているだと……!? 相変わらずジト目をタカミに向けていた。
「あのさ……この街でね、あの有名な『雨合羽の男』に、そんな目で見られるぼくの気持ち、わかるかなぁ?」
勘弁してほしかった。
「ぼくの目には、今のショウゴくんは、人斬り抜刀斎とか鬼殺隊の柱の人とか、あと北斗神拳の継承者とか、そういう何かに見えちゃうわけなんですよ。
ショウゴくんがね、優しくていい子なのは、もちろん知ってるんですよ。
でもね、その雨合羽とね、目がね、本当に怖いんですよ……」
「タカミさん? そろそろクルヌギアのお話を続けさせていただいても?」
あんたはとりあえず、うちの妹のアルペン一式を脱げ。スキー板を外せ。
と、言いたいところだったが、レインの手にストックがしっかり握られているのを見て、「かまいたちの夜」で恋人にストックで喉を刺されて死ぬバッドエンドを思い出したのでやめた。
「かまいたちの夜」は、まだ小学生だった妹が父から「コナンが好きならこれも楽しいぞ」と薦められたものの、「ユワにまだちょっと難しいから手伝って」と頼まれて、いっしょに犯人当てを楽しんでいたのだが、妹がよりによって主人公にタカミの名前をつけ、恋人に自分の名前をつけていたため、よりショッキングなバッドエンドとして、タカミの記憶に刻まれていた。
妹にストックで喉を刺されて死ぬとか、ゲームとはいえ地獄絵図過ぎた。
幼稚園の頃からショウゴのことが好きだったのだから、彼の名前をつければよかったのに、やはり兄の前では恥ずかしかったのだろうか。
「クルヌギアって?」
まだ何も知らないショウゴに、タカミは簡単に説明した。
「母から聞いた話では、クルヌギアはある日突然現れた国だということでした」
「異世界から来たアリステラと同じというわけか」
「はい。そのせいかクルヌギアは近隣諸国から一斉に攻撃を受けることになったそうです。
ですが、近隣諸国の兵士たちの武器では、クルヌギアの兵士には傷ひとつつけることができなかったと」
「旧石器時代の武器なんて、石や骨を削ったり磨いたりしたものだからね。
アリステラは10万年前の段階で、中世ヨーロッパくらいか、もしくは産業革命のあたり、もしかしたら現代よりもはるかに進んだ文明だったかもしれないし。おまけに魔法もあったわけだから」
「21世紀に生きる俺たちにも手が出せないような連中にかなうはずがないか……」
「母がしてくれた話では、魔法こそ出てきませんでしたが……
あぁ、大切なことをお話ししていませんでした。これを見て頂けますか?」
レインはそう言うと、いきなり手のひらにエーテルを集め始めた。
それがつい一週間ほど前に恐ろしい威力の火球になったことを知っているタカミとショウゴは物陰に隠れようとしたが、
「ショウゴさん、タカミさん、大丈夫ですよ。メラは撃ちませんから」
レインにそう言われ、とりあえず安心した。でもメラはやめようね、メラは。いい子だから。
レインは、手のひらの上でサッカーボールくらいの大きさの球体となったエーテルを、今度は凝縮し小さくさせていく。
やがて、ピンポン球くらいの大きさになった瞬間、キンという金属のような音と共に、エーテルはエネルギー体から結晶のような翡翠色の固形物へと変化していた。
「これは……風のクリスタル?」
「緑のオーブじゃないか?」
「オーブは違うんじゃないかなぁ。あれって宝玉でしょ。玉でしょ」
「クリスタルも違うだろ。これ、エアロ色のブリザラだし」
その場にいる全員が何でもゲームに例えてしまうゲーム脳の持ち主というカオスな状況に対し、一条がいないためツッコミを入れる者が誰もいないのはもはや地獄だった。
「エーテルは凝縮し続けると、このように結晶化するんです。
よろしければ触ってみてくださいな」
タカミがそれに触ると、ひんやりと冷たく、そして彼が知るどんな金属よりも硬く感じた。
硬いのに、手にとって両手で引っ張ってみると、よく伸びた。
「こんなに硬いものが、なんでこんなに伸縮性があるんだ?」
「それは、結晶化したエーテルが『形状を記憶する液体金属』だからだと思いです」
「液体金属って、T-1000のやつ?」
「T-1000とは何でしょうか?」
「ターミネーターっていう映画に出てくるアンドロイド。液体金属で出来ていて、普段はヒト型なんだけど、全身を液状にできたり、体の一部をナイフとか剣に変えたりできる」
「つまり、こういうことですね」
ショウゴの言葉に、レインは結晶化したエーテルに手を伸ばした。
彼女が触れた瞬間、結晶化したエーテルはその形状を一瞬で変化させ、日本刀のような形になった。
タカミも、そしてショウゴも、目の前で今起きた出来事に驚きを隠せなかった。
ショウゴはショウゴで何故か雨合羽を着ており、さすがにその下にガンベルトはつけていな……つけているだと……!? 相変わらずジト目をタカミに向けていた。
「あのさ……この街でね、あの有名な『雨合羽の男』に、そんな目で見られるぼくの気持ち、わかるかなぁ?」
勘弁してほしかった。
「ぼくの目には、今のショウゴくんは、人斬り抜刀斎とか鬼殺隊の柱の人とか、あと北斗神拳の継承者とか、そういう何かに見えちゃうわけなんですよ。
ショウゴくんがね、優しくていい子なのは、もちろん知ってるんですよ。
でもね、その雨合羽とね、目がね、本当に怖いんですよ……」
「タカミさん? そろそろクルヌギアのお話を続けさせていただいても?」
あんたはとりあえず、うちの妹のアルペン一式を脱げ。スキー板を外せ。
と、言いたいところだったが、レインの手にストックがしっかり握られているのを見て、「かまいたちの夜」で恋人にストックで喉を刺されて死ぬバッドエンドを思い出したのでやめた。
「かまいたちの夜」は、まだ小学生だった妹が父から「コナンが好きならこれも楽しいぞ」と薦められたものの、「ユワにまだちょっと難しいから手伝って」と頼まれて、いっしょに犯人当てを楽しんでいたのだが、妹がよりによって主人公にタカミの名前をつけ、恋人に自分の名前をつけていたため、よりショッキングなバッドエンドとして、タカミの記憶に刻まれていた。
妹にストックで喉を刺されて死ぬとか、ゲームとはいえ地獄絵図過ぎた。
幼稚園の頃からショウゴのことが好きだったのだから、彼の名前をつければよかったのに、やはり兄の前では恥ずかしかったのだろうか。
「クルヌギアって?」
まだ何も知らないショウゴに、タカミは簡単に説明した。
「母から聞いた話では、クルヌギアはある日突然現れた国だということでした」
「異世界から来たアリステラと同じというわけか」
「はい。そのせいかクルヌギアは近隣諸国から一斉に攻撃を受けることになったそうです。
ですが、近隣諸国の兵士たちの武器では、クルヌギアの兵士には傷ひとつつけることができなかったと」
「旧石器時代の武器なんて、石や骨を削ったり磨いたりしたものだからね。
アリステラは10万年前の段階で、中世ヨーロッパくらいか、もしくは産業革命のあたり、もしかしたら現代よりもはるかに進んだ文明だったかもしれないし。おまけに魔法もあったわけだから」
「21世紀に生きる俺たちにも手が出せないような連中にかなうはずがないか……」
「母がしてくれた話では、魔法こそ出てきませんでしたが……
あぁ、大切なことをお話ししていませんでした。これを見て頂けますか?」
レインはそう言うと、いきなり手のひらにエーテルを集め始めた。
それがつい一週間ほど前に恐ろしい威力の火球になったことを知っているタカミとショウゴは物陰に隠れようとしたが、
「ショウゴさん、タカミさん、大丈夫ですよ。メラは撃ちませんから」
レインにそう言われ、とりあえず安心した。でもメラはやめようね、メラは。いい子だから。
レインは、手のひらの上でサッカーボールくらいの大きさの球体となったエーテルを、今度は凝縮し小さくさせていく。
やがて、ピンポン球くらいの大きさになった瞬間、キンという金属のような音と共に、エーテルはエネルギー体から結晶のような翡翠色の固形物へと変化していた。
「これは……風のクリスタル?」
「緑のオーブじゃないか?」
「オーブは違うんじゃないかなぁ。あれって宝玉でしょ。玉でしょ」
「クリスタルも違うだろ。これ、エアロ色のブリザラだし」
その場にいる全員が何でもゲームに例えてしまうゲーム脳の持ち主というカオスな状況に対し、一条がいないためツッコミを入れる者が誰もいないのはもはや地獄だった。
「エーテルは凝縮し続けると、このように結晶化するんです。
よろしければ触ってみてくださいな」
タカミがそれに触ると、ひんやりと冷たく、そして彼が知るどんな金属よりも硬く感じた。
硬いのに、手にとって両手で引っ張ってみると、よく伸びた。
「こんなに硬いものが、なんでこんなに伸縮性があるんだ?」
「それは、結晶化したエーテルが『形状を記憶する液体金属』だからだと思いです」
「液体金属って、T-1000のやつ?」
「T-1000とは何でしょうか?」
「ターミネーターっていう映画に出てくるアンドロイド。液体金属で出来ていて、普段はヒト型なんだけど、全身を液状にできたり、体の一部をナイフとか剣に変えたりできる」
「つまり、こういうことですね」
ショウゴの言葉に、レインは結晶化したエーテルに手を伸ばした。
彼女が触れた瞬間、結晶化したエーテルはその形状を一瞬で変化させ、日本刀のような形になった。
タカミも、そしてショウゴも、目の前で今起きた出来事に驚きを隠せなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転
小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。
人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。
防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。
どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-
半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる