ひとりの少女を守るために70億の命を犠牲になんてできないから、ひとりの少女を犠牲にしてみた結果、事態がさらに悪化した件。

あめの みかな

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第10章 第13話

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 タカミは次は8翼のアシーナの足元に現れた。
 そして、新生アリステラの兵士の死体から拝借した4本の両刃の剣のうちの1本を、彼女の腹部に突き立てた。

 痛覚を持たない機械の体だというのに、アシーナは苦痛に満ちた顔をした。どうやら衝撃は感じるようだった。

 タカミの攻撃はそれだけでは終わらなかった。剣の柄にあるしかけを作動させたのだ。
 そのしかけは、両刃の剣を2本の反りのない直刀に分離させるようになっていた。その瞬間、2本の直刀は勢いよく左右に分かれる、そういうしかけだった。
 生身の人間ならその勢いだけで、体が真っ二つになっていただろう。だが、相手は全身がタカミの剣と同じヒヒイロカネで出来ていたからそうはいかない。
 タカミはその勢いを利用して、彼女の腹部を左右の手に持った直刀で真っ二つに切り裂いた。

「まさか……ゲートを利用して……? こんな近距離での転移を……?
 ろくに魔法も使えない野蛮なホモサピエンスがなぜこんな攻撃を……」

 下半身を失い、床に落下した8翼のアシーナは、驚愕の声を漏らした。

「魔法が使えないからこそだよ。だからぼくみたいな普通の人間は知恵を絞るんだ」

「いくら機械の体とはいえ、わたしの下半身を斬り落とした罪は重いぞ、ホモサピエンス」

「8枚も翼があるあんたにとっちゃ、脚なんてまさに飾りってやつじゃないのか?」

「貴様ぁぁぁぁっ!!」

 タカミは、本来ならばショウゴが遣田の魔法「窮奇鎌鼬(きゅうきかまいたち)」にされたように、彼女の脚の切断を狙いたかった。
 しかし、彼が相手にしているのは、北欧神話の主神オーディンの軍馬のように8本も脚がある化け物なのだ。
 二足歩行の人間や四足歩行の動物などと違い、8本も脚があれば、1、2本切断したところで簡単に体勢を崩したりはしないだろう。

「悪いけどぼくは、神話の時代から数えたら2000年以上、ずっと狭い島国で土地を奪い合い、憎み合い殺し合いを続けていたような国の生まれでね」

 彼女の体勢を崩させるには上半身と下半身を真っ二つにするしかなかったのだ。
 それに翼を何枚か浮遊のために使い始めてくれれば、その数だけ翼からの魔法を気にしなくてもよくなる。
 あとは残りの翼と両手を斬り落としてやるだけだ。
 すぐにでも斬り落としてやりたかったが、ヒット&ウェイがこの作戦の肝だ。一度攻撃をしかけたら、それが当たろうが当たらなかろうが、すぐにゲートに飛び込み、もう一度死角から現れ攻撃に転じなければ相手に反撃を許してしまう。

 1対2という不利な状況をいつまでも続けたくはなかった。どちらか片方だけでも先に潰しておきたかったが、場所が悪かった。一番近いゲートの転移先はアシーナの死角ではなかったからだ。

 だが、迷ってはいられない。
 迷う暇があるなら、すぐに移動しなければいけない。
 タカミはすぐそばのゲートに飛び込むと、今度は6翼のアマヤの頭上に現れた。
 両刃の剣は、2本の直刀に分かれるだけでなく、柄に鞘を取りつけることができ、槍状にすることが可能だった。
 ゲートの中で槍状にした剣を、今度はアマヤの首筋に突き刺した。
 ゲートによる転移には高速に近い速度があった。その速度を彼は攻撃に転用し、さらにゲートからの落下の際の速度までをも利用した。
 全体重をかけて首筋に突き刺した槍は簡単に脇腹まで貫通してくれた。
 彼は槍から手を離し、彼女の背中にしがみつくと、そこに刺したままだった刀「白雪」を引き抜き、

「ぼくの体には、あんたらの言う野蛮なホモサピエンスの中でも、最も野蛮かもしれない民族の血が流れてるんだよ」

 引き抜いた勢いを利用して、回転しながら6翼のアマヤの上半身を、翼ごと真っ二つに切り裂こうとした。
 だが、その瞬間彼は、しまった! と思った。
 このままでは、白雪と先程の槍が、彼女の体の中でぶつかってしまう。
 そのことに気づいたときには、すでに遅かった。
 その衝撃にタカミの両手は白雪の柄から離れてしまった。体もまた本来次に飛び込むはずだったゲートから大きく逸れた。

 そこはほんの少し前までは女王の間の一部であったが、6翼のアマヤの業火連弾によってすでに破壊されてしまっており、ゲート以外には何もない空中だった。
 女王の間の外に身を投げ出されたタカミは、落下しながら慌てて残り2本の剣を鞘から抜いた。
 剣を城塞戦車の外壁に突き立てることには成功したものの、そのままぶら下がることしか出来なかった。外壁や剣を足場にして、女王の間に戻ることは、筋力も体力も運動神経も皆無のタカミには到底不可能だった。
 もし手を離し落下してしまえば命はない。タカミのマンションの最上階の部屋よりもそこははるかに高い場所に存在していた。

「ここまでか……どっちもやりそこねちゃったな……
 まぁ、ぼくにしてはよくやったってところかな……」

 腕立て伏せも満足に出来ないタカミの腕は、すぐに限界がやってきた。
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