113 / 123
最終章 第4話
しおりを挟む
レインやディローネによって、機械の体を得て黄泉返りを遂げたユワは、人類を守る側ではなく、滅ぼす側についた。
人類や世界を災厄から守るため、14歳で生け贄にされた彼女にとって、それは当然の選択だった。
偶数翼の強硬派に合流した彼女は、ある空中戦艦を母艦とする部隊に、自ら願い出て所属した。
その戦艦の名は、飛翔艇オルフェウス1番艦エウリュディケ。
その艦長を務めていたのは、「16翼の女王」「天国のアリーヤ」と呼ばれるアリステラの歴代の女王のひとりだった。
アリステラがまだこの星ではなく、母なる星に存在した時代に最初に作られた1番艦エウリュディケは、2番艦以降のどんな艦よりも優れた空中戦艦だったらしい。
この星でアリステラが滅亡を迎える直前、当時の女王であったアマヤは、自分や特権階級に属する者たちだけを乗せて国を脱しようとしたそうだ。
しかし、アリステラはかねてからエーテルの枯渇が問題となっており、高性能すぎるが故に多くのエーテルを必要とするその艦は、発進後間もなく燃料切れとなり、トルコのアララト山に墜落、アマヤを含めた乗員の大半が死亡したという。
16翼のアリーヤが率いる部隊は、偶数翼の強硬派の中でもその存在の賛否が分かれるほど、最も過激な部隊だった。
3年前、アリーヤは10万年もの間アララト山に残骸が残っていたその艦を復元させると、奇数翼の穏健派が有する地球製の艦を次々と攻め、滅ぼした。
アーリヤの部隊が最後に攻めたのが、タカミを助けた7翼のアシーナが有する艦だった。
地球製の艦はすべて、タカミやディローネによって魔導人工頭脳が初期化され、飛ぶことができなくなっており、基地としてしか使えなくなっていた。
だが、アリーヤは圧倒的な戦力差があるにも関わらず、戦力を惜しむこともなければ容赦もすることもなく、1番艦と部隊の持つ全戦力を投入した。
その戦いは、互いの艦や兵をすべて失うほどの激しいものになったという。
最後は女王やその末裔同士の戦いとなり、アリーヤもまた15翼のアレクサと相討ちとなって戦士した。
「あのとき、お兄ちゃんもあそこにいたんだ……」
7翼のアシーナを討ち取り、その戦いで唯一生き残ったのがユワだった。
だから、ユワはそのことをタカミに話すことが出来なかった。
タカミはきっと、そんな自分さえも許してくれるだろう。
けれど話してしまったら、しこりのようなものが、きっと兄の中に出来てしまう。
それが直接の原因になることはないだろうけれど、ユワは、兄に嫌われてしまうことを何よりも恐れていた。
ユワが殺してしまったのは、アリーヤだけではなかった。
数えきれないほどの女王たちをその手にかけてきた。
2年あまりもレインを殺そうと追いかけまわしていたこともまた、十分しこりになり得るものだった。だから怖かった。
彼女には、家族と呼べる相手が兄しかいなかったからだ。
本当の兄妹のように育ったが、自分が養女だということを、いつも引け目に感じていた。
嫌われてしまったら、家族ですらいられなくなってしまう。
それが何よりも怖かった。
人類が滅び、世界が終わっても、まだそんなことを気にしている自分が、ユワは可笑しかった。
もうわたしは人間じゃないのに。
この体も、この頭も、全部機械なのに。
どうして心なんていう、邪魔なだけの余計なものがあるんだろう。
兄と再会できたことは、本当に嬉しかった。
けれど、なぜ兄なのだろう?
そんなことを考えてしまった自分がいた。
生き返ったのが兄ではなく、ショウゴだったとしても、何の問題もなかったはずなのに。
どうしてショウゴが帰ってきてくれないのだろう。
この体のせいだ、とユワは思った。
ショウゴが生き返ってしまったら、きっと自分は彼の子を欲しくなってしまう。
だけど、この体では彼の子どもを生むことはできない。
体はいくらでも形を変えられるから、女性器に似たものを作ることはできる。
彼に抱かれることができる。でも、それだけだ。
わたしの体がもし本物だったなら。
あぁ、やっぱりだめだ。
死んでしまっている間に、機械の体になってしまっている間に、自分が子宮を持たない状態で生まれてきたことを忘れてしまっていた。
千年細胞で蘇生されたというわたしの体はどうだったのだろう。
ちぎれてなくなってしまった手足さえも再生可能なあの細胞は、わたしに子宮を与えてくれていただろうか。
ショウゴではなく兄が生き返ってしまったのは、自分が子どもを生むことが出来なかったからだ。
ショウゴに会いたかった。一目会いたくてたまらなかった。
兄が帰ってこなければ、こんな気持ちにならなかったのに。
ユワはそんな風にしか考えられなくなってしまっていた。
それ以上に、自分をこんな体で黄泉返らせたあの女が、殺したいほど憎かった。
人類や世界を災厄から守るため、14歳で生け贄にされた彼女にとって、それは当然の選択だった。
偶数翼の強硬派に合流した彼女は、ある空中戦艦を母艦とする部隊に、自ら願い出て所属した。
その戦艦の名は、飛翔艇オルフェウス1番艦エウリュディケ。
その艦長を務めていたのは、「16翼の女王」「天国のアリーヤ」と呼ばれるアリステラの歴代の女王のひとりだった。
アリステラがまだこの星ではなく、母なる星に存在した時代に最初に作られた1番艦エウリュディケは、2番艦以降のどんな艦よりも優れた空中戦艦だったらしい。
この星でアリステラが滅亡を迎える直前、当時の女王であったアマヤは、自分や特権階級に属する者たちだけを乗せて国を脱しようとしたそうだ。
しかし、アリステラはかねてからエーテルの枯渇が問題となっており、高性能すぎるが故に多くのエーテルを必要とするその艦は、発進後間もなく燃料切れとなり、トルコのアララト山に墜落、アマヤを含めた乗員の大半が死亡したという。
16翼のアリーヤが率いる部隊は、偶数翼の強硬派の中でもその存在の賛否が分かれるほど、最も過激な部隊だった。
3年前、アリーヤは10万年もの間アララト山に残骸が残っていたその艦を復元させると、奇数翼の穏健派が有する地球製の艦を次々と攻め、滅ぼした。
アーリヤの部隊が最後に攻めたのが、タカミを助けた7翼のアシーナが有する艦だった。
地球製の艦はすべて、タカミやディローネによって魔導人工頭脳が初期化され、飛ぶことができなくなっており、基地としてしか使えなくなっていた。
だが、アリーヤは圧倒的な戦力差があるにも関わらず、戦力を惜しむこともなければ容赦もすることもなく、1番艦と部隊の持つ全戦力を投入した。
その戦いは、互いの艦や兵をすべて失うほどの激しいものになったという。
最後は女王やその末裔同士の戦いとなり、アリーヤもまた15翼のアレクサと相討ちとなって戦士した。
「あのとき、お兄ちゃんもあそこにいたんだ……」
7翼のアシーナを討ち取り、その戦いで唯一生き残ったのがユワだった。
だから、ユワはそのことをタカミに話すことが出来なかった。
タカミはきっと、そんな自分さえも許してくれるだろう。
けれど話してしまったら、しこりのようなものが、きっと兄の中に出来てしまう。
それが直接の原因になることはないだろうけれど、ユワは、兄に嫌われてしまうことを何よりも恐れていた。
ユワが殺してしまったのは、アリーヤだけではなかった。
数えきれないほどの女王たちをその手にかけてきた。
2年あまりもレインを殺そうと追いかけまわしていたこともまた、十分しこりになり得るものだった。だから怖かった。
彼女には、家族と呼べる相手が兄しかいなかったからだ。
本当の兄妹のように育ったが、自分が養女だということを、いつも引け目に感じていた。
嫌われてしまったら、家族ですらいられなくなってしまう。
それが何よりも怖かった。
人類が滅び、世界が終わっても、まだそんなことを気にしている自分が、ユワは可笑しかった。
もうわたしは人間じゃないのに。
この体も、この頭も、全部機械なのに。
どうして心なんていう、邪魔なだけの余計なものがあるんだろう。
兄と再会できたことは、本当に嬉しかった。
けれど、なぜ兄なのだろう?
そんなことを考えてしまった自分がいた。
生き返ったのが兄ではなく、ショウゴだったとしても、何の問題もなかったはずなのに。
どうしてショウゴが帰ってきてくれないのだろう。
この体のせいだ、とユワは思った。
ショウゴが生き返ってしまったら、きっと自分は彼の子を欲しくなってしまう。
だけど、この体では彼の子どもを生むことはできない。
体はいくらでも形を変えられるから、女性器に似たものを作ることはできる。
彼に抱かれることができる。でも、それだけだ。
わたしの体がもし本物だったなら。
あぁ、やっぱりだめだ。
死んでしまっている間に、機械の体になってしまっている間に、自分が子宮を持たない状態で生まれてきたことを忘れてしまっていた。
千年細胞で蘇生されたというわたしの体はどうだったのだろう。
ちぎれてなくなってしまった手足さえも再生可能なあの細胞は、わたしに子宮を与えてくれていただろうか。
ショウゴではなく兄が生き返ってしまったのは、自分が子どもを生むことが出来なかったからだ。
ショウゴに会いたかった。一目会いたくてたまらなかった。
兄が帰ってこなければ、こんな気持ちにならなかったのに。
ユワはそんな風にしか考えられなくなってしまっていた。
それ以上に、自分をこんな体で黄泉返らせたあの女が、殺したいほど憎かった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転
小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。
人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。
防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。
どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-
半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる