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『マイクロビキニアーマーの女勇者 対 アナルバイブ男爵:Re-Birth』
エピローグ:『ピントの狂った正義の果て』
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冬の夜気は、私の肺を奥まで凍りつかせるほどに冷たかった。
背後でコンクリートを叩く、不器用な靴音。
荒い呼吸を乱しながら、必死に私を追う男。
私はあえて、彼が見失わない程度の速度を保ちながら、新宿の迷宮を抜けていく。
私の顔には、血に汚れた「検眼枠(テストフレーム)」が嵌まっている。
カチャカチャとレンズを入れ替え、世界の見え方を矯正するこの道具を、私は愛している。他人のピントを合わせるのが私の仕事だが、今の私の視界は、こびりついた返り血によって赤く歪んでいた。
純白だった私のタキシードは、つい先ほど「切除」した女……瑤島光の鮮血によって、どす黒く塗り潰されている。
『星喰いの凶星(ステラ・ディヴォアラー)』。
滑稽な二つ名だが、死を司る星々を喰らい、瑠璃を日常へ……いや、彼女が真に輝ける異世界へと還すための仮面としては、悪くない。
「くそったれが。なめやがって!」
背後の男――刑事、武御雷が叫ぶ。
私は予定通り、袋小路へと足を止めた。
「安心したまえ。私は逃げるつもりなどさらさらないさ」
悠然と振り返る。街灯の光が私の検眼枠を青白く照らし出し、彼の困惑と憎悪を鮮明に映し出す。
雷は、警察署の証拠品保管庫から持ち出したであろう拳銃を構えていた。法を犯してまで私を裁こうとするその姿は、実に「ピント」が合っている。
「お前が……連続殺人犯、星喰いの凶星だな?」
私は降参を示すように、優雅に両手を上げた。
「そうだね。その名前はあまり気に入っていないけれど……私が、君の探している男だよ」
彼は怒鳴る。「お前の血は何色だ?」と。
私は自分の左手首をナイフでなぞり、赤い液体が溢れ出すのを見つめた。
「血の色か。君が見ているその色と、私が見ている色が同じであれば、同じだよ。……それは君にも私にも、永遠にわからないことだがね」
ドロリと地面を汚していく赤。人間の血が赤いことは、人間であることの証明にはならない。
私は狼狽する雷を言葉で弄び、彼の「正義」という名の虚像を剥ぎ取っていく。貧しい家庭で育ち、不平等な社会に鬱屈した彼の内面。そのピントのズレを、私は丁寧に、残酷に指摘してやった。
「……うわああああああああッ!!」
闇を切り裂く銃声。
確かな衝撃が私の胸を叩く。だが、私は倒れない。
「痛いじゃないか。……防弾チョッキというものは、本当に痛いものなのだな」
タキシードに空いた穴を指でなぞる。
これで、彼は一線を越えた。法を執行する側から、私と同じ「こちら側」へと墜ちた。
「だが、これで君は本当に『こちら側』へ墜ちた。もう警察という光は君を守ってはくれない。……どうする? 君には、犯罪者としての素晴らしい素質がある」
私は、血に濡れた手を彼の方へと伸ばした。
背後では、瑠璃を送り届けた冬の星々が、冷たく、そして美しく瞬いている。
「私の相棒として……共にこの世に、美しき混沌をもたらさないか?」
私の誘いに、雷の瞳が揺れ、そして深い闇へと染まっていくのが見えた。
瑠璃。私のたった一人の希望。
お前を覚えている人間は、もうこの世界には私一人だけでいい。
お前の存在した痕跡を、私がこの闇の底で、完璧なピントで守り続けてやる。
私は、新しいレンズを検眼枠に差し込むように、目の前の新しい「共犯者」を見据えた。
さあ、永い夜の始まりだ。
ーー【その殺人鬼、『星喰いの凶星(ステラ・ディヴォアラー)』につき。】に続く。
背後でコンクリートを叩く、不器用な靴音。
荒い呼吸を乱しながら、必死に私を追う男。
私はあえて、彼が見失わない程度の速度を保ちながら、新宿の迷宮を抜けていく。
私の顔には、血に汚れた「検眼枠(テストフレーム)」が嵌まっている。
カチャカチャとレンズを入れ替え、世界の見え方を矯正するこの道具を、私は愛している。他人のピントを合わせるのが私の仕事だが、今の私の視界は、こびりついた返り血によって赤く歪んでいた。
純白だった私のタキシードは、つい先ほど「切除」した女……瑤島光の鮮血によって、どす黒く塗り潰されている。
『星喰いの凶星(ステラ・ディヴォアラー)』。
滑稽な二つ名だが、死を司る星々を喰らい、瑠璃を日常へ……いや、彼女が真に輝ける異世界へと還すための仮面としては、悪くない。
「くそったれが。なめやがって!」
背後の男――刑事、武御雷が叫ぶ。
私は予定通り、袋小路へと足を止めた。
「安心したまえ。私は逃げるつもりなどさらさらないさ」
悠然と振り返る。街灯の光が私の検眼枠を青白く照らし出し、彼の困惑と憎悪を鮮明に映し出す。
雷は、警察署の証拠品保管庫から持ち出したであろう拳銃を構えていた。法を犯してまで私を裁こうとするその姿は、実に「ピント」が合っている。
「お前が……連続殺人犯、星喰いの凶星だな?」
私は降参を示すように、優雅に両手を上げた。
「そうだね。その名前はあまり気に入っていないけれど……私が、君の探している男だよ」
彼は怒鳴る。「お前の血は何色だ?」と。
私は自分の左手首をナイフでなぞり、赤い液体が溢れ出すのを見つめた。
「血の色か。君が見ているその色と、私が見ている色が同じであれば、同じだよ。……それは君にも私にも、永遠にわからないことだがね」
ドロリと地面を汚していく赤。人間の血が赤いことは、人間であることの証明にはならない。
私は狼狽する雷を言葉で弄び、彼の「正義」という名の虚像を剥ぎ取っていく。貧しい家庭で育ち、不平等な社会に鬱屈した彼の内面。そのピントのズレを、私は丁寧に、残酷に指摘してやった。
「……うわああああああああッ!!」
闇を切り裂く銃声。
確かな衝撃が私の胸を叩く。だが、私は倒れない。
「痛いじゃないか。……防弾チョッキというものは、本当に痛いものなのだな」
タキシードに空いた穴を指でなぞる。
これで、彼は一線を越えた。法を執行する側から、私と同じ「こちら側」へと墜ちた。
「だが、これで君は本当に『こちら側』へ墜ちた。もう警察という光は君を守ってはくれない。……どうする? 君には、犯罪者としての素晴らしい素質がある」
私は、血に濡れた手を彼の方へと伸ばした。
背後では、瑠璃を送り届けた冬の星々が、冷たく、そして美しく瞬いている。
「私の相棒として……共にこの世に、美しき混沌をもたらさないか?」
私の誘いに、雷の瞳が揺れ、そして深い闇へと染まっていくのが見えた。
瑠璃。私のたった一人の希望。
お前を覚えている人間は、もうこの世界には私一人だけでいい。
お前の存在した痕跡を、私がこの闇の底で、完璧なピントで守り続けてやる。
私は、新しいレンズを検眼枠に差し込むように、目の前の新しい「共犯者」を見据えた。
さあ、永い夜の始まりだ。
ーー【その殺人鬼、『星喰いの凶星(ステラ・ディヴォアラー)』につき。】に続く。
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