成り上がり覚醒者は依頼が絶えない〜魔王から得た力で自分を虐げてきた人類を救っていく〜

酒井 曳野

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第1章 炎の国『イグニス』〜今こそ覚醒の時〜

第11話

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◇◇◇


「レイン……本当に強くなったね」


「どうした?」

 
 今日も変わらず剣と剣をぶつけていたアルティがいきなり攻撃をやめて呟いた。

 ちなみに阿頼耶はあれ以上大きくならなかった。条件があるのかどうかは分からないが分裂できる数が増えたのはありがたい。


 剣の刃を鞭のように伸ばして遠距離からも攻撃出来る。ブーツに変化させ、そのブーツの踵部分を突き刺す。
 足元の地面から剣を伸ばして刺突からの切っ先を周囲に拡散させる斬撃など手数も増えた。


 しかしアルティの強化が半端じゃない。見てから対応されるくらいの反射速度がある。

 ここに来て……多分6年?くらいは経ってる。まだ一撃も与えられない。


「レインが来てからもうすぐで10年だよ」


 10年経ってた。全く気付かなかった。


「……そんなに経ってるのか」


「もう私がそこそこ本気で戦っても数分は膠着しそうだよね。本当に強くなったよ」


 本当に強くなったのか自信がなくなる言葉ではあるが、まあ良い。


「……アルティのおかげだよ。Sランク覚醒者くらいの強さはありそうだな」


「Sランクってどんなもんなんだろうね。私は今の外の世界をあまり知らないから分からないね。さて……と!これからの話だけどね」


「うん……まあ10年過ごしたしかなり強くなれたし……エリスの所に戻ろうかな」


「うん……そうだね。だから私とはここまでだね。私にとっては……短い間だったけど……本当に楽し」


「え?!一緒に行くんだろ?ここから離れられないとかあるのか?」


「いや別にないよ?でも……迷惑じゃない?」 


 急によそよそしくならないでほしい。調子狂うなぁ。


「もう他人じゃないよ。若干忘れてたけどこの世界を守らないといけないんだった。アルティだって守ってみせるよ」


「…………あははッ!私よりまだ弱いのにね。ありがとう。じゃあこれからもよろしくね!」


「ああ、よろしく」


 アルティは笑顔で自分自身を取り囲むように黒い球体を作り出した。その球はどんどん小さくなっていく。そしてフワフワとこちらに飛んできてレインの胸の中に入ってきた。……どういう状況?


"よっしゃぁぁ!!!外の世界へ行っくぞぉぉ!!!"


「うるっさ!!!」

 頭の中でアルティの声が響いた。アルティは自分の身体を収納して精神だけの状態にした。それをレインに寄生させる事で外出できるようにしたらしい。

 そのままで外に出てしまうと存在を知られてしまうから危ないとの事だ。

 レインは姿形が違うから大丈夫なんじゃない?との事だった。


「さて……行くか。この家はどうする?」


 "別にこのままでいいんじゃない?特に使ってなかったし。それよりさ……なんかこっちに来てるね"


 「……そうだな。15人くらいか?」


 "ここに人が来るなんてあり得る?結構な迷路だと思うけどなぁ"


「……あー俺を騙してここに連れてきた奴らかな。やっとここに辿り着いたんだろうよ」


 "そんな奴らがいるの?!……レインが救う価値があると思うなら生かしてあげてもいいけどそうじゃないなら殺してもいいと思うよ?……というかレインは出来る?"


「……やった事ないから分からないな。でも大丈夫だと思う。アイツらこれまで何人同じやり方で人を殺してきてる……そんな奴らを生かしておく必要もないと思う」


 "レインがいいなら私は何も言わないよ。まあ殺しちゃうなら『傀儡』のスキルを使えるしちょうどいいと思うね"


「分かっ……」 


「うお!!なんだここ?!」


 レインとアルティの会話を遮るように頭の悪そうな叫び声がこの空間に響いた。


 10年ぶりだから忘れてたな。あの時はDランク覚醒者って事でかなり強いと思ってた。


 でも……こうして見ると……弱いな。かなり。


「あれぇ?お前!生きてたのか?!」


「………………なんとかね」


「良かったぜ!」


 リーダー格の男がニヤニヤしながらこちらに近付いてくる。


「……は?」


「お前が勝手に足を滑らせてここに落ちた時は焦ったぜ!まっ!こうして助けに来てやったんだから感謝してくれよな!」


 そう言ってレインと肩を組む。こいつは何を言っているんだ?


 ちなみに目立ちそうな阿頼耶は服とブーツとナイフに変化させている。その気になれば小さくする事もできるけどスライムを肩に乗せているというのもかなり目立つからな。装備にしていた方がいいと思った。


「…………はぁー」


 そんな事よりこの男の言い分にため息しか出ない。後ろで控えているこいつの仲間たちもクスクスと笑っている。助けに来たはずがない。

 ここにはアルティとその番犬しかいない。モンスターがいなくてレインが生きている事に焦ったんだろうな。苦しい言い訳だ。


「……まあ!ここで死んでもらうけどなー!!」


 そう言ってリーダー格の男はレインの腹部にナイフを突き立てた。何回も何回もナイフをレインに突き刺す。


「うおおお!リーダーやりますね!!」


「お前ら!さっさとこの屋敷みたいなの漁って帰るぞー!」

 
 リーダー格の男はレインを殺したと思い視界の先を屋敷へ向けた。


「…………リ、リーダー…そいつ……生きてます…よ?」


「はあ?俺が肩掴んでるから立ってるだけだって」


「……はぁー本当に救いようがないな。ここで死んでくれた方が世の中のためだな」


「はぁ?!なんで!お前生きてッ」


 ――ゴトッ

 リーダー格の男の首が落ちた。こいつが掴んでいた服は阿頼耶が変化したものだ。つまりどこからでも一刀両断の斬撃が放てる。

 
 そこからこいつのパーティーメンバーを全滅させるのに時間はかからなかった。



 
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