成り上がり覚醒者は依頼が絶えない〜魔王から得た力で自分を虐げてきた人類を救っていく〜

酒井 曳野

文字の大きさ
13 / 114
第1章 炎の国『イグニス』〜今こそ覚醒の時〜

第12話

しおりを挟む









「……さてこれはどうしようか」


 "放置はやめてね?一応私たちの家なわけだし?こんなの置いてたら臭いがヤバいよ。傀儡にしてもこれはここに残るからね!"


「…………うーん…本当にどうしよう」


 その時、肩から阿頼耶が少しだけ出てきてレインの頬をつついた。


「どうした?」

 阿頼耶は覚醒者たちの亡骸とレインの顔を交互に見る。と言っても目はないからキョロキョロしてるように見えるだけだ。


「もしかして……食べたいのか?」


 阿頼耶はうんうんと首?を縦に振った。食べる……というか取り込むのかな?

「じゃあスキルを使った後ならいいよ。少し待ってくれな?」


 阿頼耶は分かった!と言わんばかりにスリスリしてくる。

 レインは手をかざしてスキル『傀儡』を使う。これに関しては使うのは初めてだ。

 スキルに関しては口に出す事なく使えるようにはなっている。『傀儡』を使おうとすると亡骸から黒い煙が立ち昇る。   
 多分これが傀儡にする事が出来ますよっている印だと思う。


 "全て傀儡にする"


――ズズズズッ!!


「うわっ!キモっ!」


 "おい!私のスキルをキモいとか言うな!"

 覚醒者の亡骸から真っ黒な鎧を来た者たちが這い出るように出てきた。全員がフルプレートメイルを着用している。生きてた頃に装備していた物は全然違う。


――『傀儡の兵士 剣士』を15体獲得しました――


「アルティ……なんか違うような気がする」


 "あーそれは今のレインの強さと元の素材の強さと何が得意だったかで装備が変わるんだよ。

 全員が鎧と剣だから……まあそんなもんなんじゃない?剣士なんて雑兵みたいなもんだしね。数揃えてたら良い感じになるんじゃない?"


 適当だなぁ。……まあいいや。Dランクの兵士が15人手に入ったみたいなもんだしな。

 『傀儡の兵士』はそれ専用の収納場所があるから召喚解除で消える。


 とりあえずこんなのを引き連れて歩くわけにもいかないから収納しておく。
 そして阿頼耶は自分の一部を分裂させて覚醒者たちの亡骸への近付いていく。
 

 阿頼耶は身体を大きく広げで亡骸の上へ被さるように乗った。そして徐々に小さくなっていって1人を完全に取り込んだ。それを15回繰り返した。

 そして……。

「ご主人様……こうして直接意思をお伝えできるようになった事……私にとって至上の喜びでございます。何なりと私にご命令下さい」

 レインの目の前にはアルティと同じ黒髪を持つ全裸の女性が跪いていた。


「……誰?!」
"……誰?!"

 アルティと全く同じ反応をする。

「誰……とはまたおかしな事を仰いますね。私は『阿頼耶』。貴方様の剣となり盾となる存在でございます」


「…………阿頼耶?何で?人の姿に?」


 駄目だ。疑問が多すぎで考えもまとまらない。とりあえず服を着て欲しいかな!


「私はご主人様とずっとお話ししたいと思っておりました。
 しかしその為の身体がなかったのです。こうして会話が出来るようになったのはあの者たちを取り込み、言語と知識と声を手に入れたからです」


「……そうなのか。それで……その姿は?俺が殺したのは覚醒者だけだが?」


「この姿と声は魔王アルティを参考に致しました。ご主人様にとってもこの方がよろしいかと思いまして……」


 "様をつけろ!様を!!"


「アルティが様をつけろって怒ってるよ」


「私のご主人様は今までもこれからもレイン様だけです。それ以外の者は有象無象です」


 ……やっぱりこれってレインが選ばれてるって事だよな。……でも魔神の武器だったって言ってなかった?


「……あれ?魔神は?」

「あの時、私はあれが持つスキルによって無理やり従わされておりました。私が主人と認めるのはレイン様だけです」


「そうか……とりあえず服着てもらえる?」


「かしこまりました」


 阿頼耶は自分の一部を使って服……というか軽鎧を作った。黒を基調にした簡素な鎧だ。
 アルティを参考にしているだけあって綺麗な顔立ちだな。髪が肩までの長さなのは違いを持たせるためか?


「その姿で出来る事って何かある?」


「基本的な戦闘は可能です。レイン様と共に戦える事、大変喜ばしく思います。さらにこの身体の特性上、物理攻撃に対してはそれなりの耐性を有しております。
 スキルに関しては『回復』スキルを持っております。レイン様が怪我をされた時、お亡くなりになっていなければ怪我を回復させる事が出来ます」


 "回復スキル持ちだったのか。これはかなり稀少だよ!良い収穫じゃん!"


「そうなのか?……じゃあ俺が持ってるこの武器はどうなんの?」


「それも今まで通りで問題ございません。この分裂もスキルによるものですから。
 ただ現状は私の方に多くの力を割いておりますので弱体化している部分もあります。お望みであれば元の姿に戻ります」


「そうするともう戻れないのか?会話も出来ないのか?」


「いえすぐにこの姿にもなれます。しかし会話が可能なのはこの姿だけです」


 「なら大丈夫。とりあえずはその姿のままで頼むよ……まあこれからもよろしく頼む」


「誠心誠意お仕え致します」

 

◇◇◇


 そこからレインは阿頼耶を連れて外へと向かう。迷うかもと思ったがそんな事はなかった。


 とても懐かしく思う光を目の前する。あの時、転げ落ちた急な坂を容易く登る。


「ああ……眩しいな」


 外は夜明けくらいだった。ここに来たのが夕方の時間だったから……10時間くらい経過していた。と言う事は外の1時間があそこでは1年くらいか。
 

「……帰るか」


 こうして10年間死に物狂いで鍛えレインは現実の世界へ戻ってきた。
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中

あ、まん。@田中子樹
ファンタジー
仕事一筋40年。 結婚もせずに会社に尽くしてきた二瓶豆丸。 定年を迎え、静かな余生を求めて山奥へ移住する。 だが、突如世界が“数値化”され、現実がゲームのように変貌。 唯一の趣味だった15年続けた積みゲー「モリモリ」が、 なぜか現実世界とリンクし始める。 化け物が徘徊する世界で出会ったひとりの少女、滝川歩茶。 彼女を守るため、豆丸は“積みゲー”スキルを駆使して立ち上がる。 現金化されるコイン、召喚されるゲームキャラたち、 そして迫りくる謎の敵――。 これは、還暦オジが挑む、〝人生最後の積みゲー〟であり〝世界最後の攻略戦〟である。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

R・P・G ~女神に不死の身体にされたけど、使命が最低最悪なので全力で拒否して俺が天下統一します~

イット
ファンタジー
オカルト雑誌の編集者として働いていた瀬川凛人(40)は、怪現象の現地調査のために訪れた山の中で異世界の大地の女神と接触する。 半ば強制的に異世界へと転生させられた凛人。しかしその世界は、欲と争いにまみれた戦乱の世だった。 凛人はその惑星の化身となり、星の防人として、人間から不死の絶対的な存在へとクラスチェンジを果たす。 だが、不死となった代償として女神から与えられた使命はとんでもないものであった…… 同じく地球から勇者として転生した異国の者たちも巻き込み、女神の使命を「絶対拒否」し続ける凛人の人生は、果たして!? 一見頼りない、ただのおっさんだった男が織りなす最強一味の異世界治世ドラマ、ここに開幕!

元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~

下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。 二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。 帝国は武力を求めていたのだ。 フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。 帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。 「ここから逃げて、田舎に籠るか」 給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。 帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。 鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。 「私も連れて行ってください、お兄様」 「いやだ」 止めるフェアに、強引なマトビア。 なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。 ※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。

処理中です...