王子の凱旋

小野あやか

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レニドールSide

頑張ってイチャイチャしてみる

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えーと、セーラン先生の男を落とす方法をおさらいしてみるか。
・酔わしてボディタッチ。
・目を合わせて微笑む。
・同じ趣味で盛り上がる。
・吊り橋効果。
ボディタッチは結構やってるよな。
目は、さっき合わせて微笑んだ。同じ趣味は……、そういえば知らないな。
何という事だ! あんなに一緒にいて趣味や好きな物知らないなんて……っ! 後で聞こう。
吊り橋効果は、魔王討伐でできているのでは? ちょっと危ない目に合ってるしな。うん、趣味以外は殆ど実行できているのでは!?
俺達の仲の距離は縮まっているよな? そうだと思いたい!
「そういえばさ、ルーファスの趣味ってなんだ? 何か好きなこととか、物はあるのか?」
「趣味……、好きな物、ですか……」
質問が唐突すぎたか? ルーファスはきょとんとする。
「俺は城を抜け出して変装して市街を見回るの好きかな。趣味はなんだろ……、聖属性魔法がどこまで具現化できるかの研究かな」
とりあえず俺の事を伝えたが、面白みも色気も無いな……。
「前者はあまりお一人ではしてほしくないですが……。聖属性の研究とはさすがですね。そうですね、私は絵を描くことですかね。下手の横好きですが……」
ルーファスは照れ笑いしている。かわ!
って、え、何その高尚な趣味……。絵なんて王宮の壁という壁に飾られてるけど、何とも思ったこともなかったよ。どうしよう、全然盛り上がれる気がしない! 王宮では芸術の教育を受けてなかったから、貴族学院で軽く勉強したくらいだ。音楽は本当に苦労したぜ。
あれ、俺ただのバカ王子じゃないか……?
自分を改めて客観視してみて軽くショックを受けた。
そんなこんなで食べ終わった後、街の観光をする。大きな教会で礼拝した後、天井画や壁画を堪能した。よくわからなかったけど、ルーファスは何か感動してたな。
教会を出た後は商店を冷やかしてみたり。だって買うものや欲しいもの特に無かったし……。あれ、今思うとお互いに何か物を贈り合えば良かったのでは……。
商店を出て戦士ギルドへ行った。歴史ある意匠の建物の戦士ギルド内は、魔王の影響のせいか殺伐としていた。建物内に入ると戦士達の鋭い視線が痛い。
のほほんとデート気分で入ってきた俺とは纏う空気が違う。魔王倒したの俺だけどな! 
戦士ギルドは戦士登録、依頼受付、買取などの窓口が複数ある。
「一応戦士登録しとこうかな」
「……殿下には必要ないかと思いますが……」
ルーファスは何やら苦い顔をしている。
「一応だよ、一応。これからの魔石買い取りもスムーズになるし」
「……それなら私も一緒に登録します」
「そう? ルーファスこそ必要無さそうだけど」
いつか城を出ようとしているのを、薄々気づいているのかもしれない。死んでもいいと思われているし、弱い魔物の討伐に救世主とおだてて行かせるくらいだ。あそこに俺の居場所はもはやない。
その点ルーファスは近衛歩兵第二師団副隊長だし、いずれ隊長になったり、第一王子の側近になったりするだろう。第一王子が国王になったら、第一師団に繰り上がる。国二番の家柄で、出世街道まっしぐらのルーファスこそ登録は必要無いよな。
取り敢えず俺達は戦士登録をして、魔石を買い取りしてもらった。魔石の量が多すぎたみたいで、受付職員や周りの戦士達が凄い顔して見てくる。雑魚のクズ魔石なのに、この量はそんな珍しいのだろうか? 謎だ。


魔石買い取りの集計に意外と時間がかかり、空が薄暗くなってきた。そろそろ宿を探さないと! 宿! あぁ! これからまた宿でルーファスと……。まずい、軽く勃ってきた……。落ち着け! 
「殿下、本日の宿はそれなりの処に泊まりましょう」
「ふぇ!? 俺はどこでもいいけどっ!?」
 お前と一緒なら本当にどこでもいいけど! 
「……そういうわけには……。流石に昨日の様な処には殿下をお連れできません」
「ふぅん、そういうもんか? 昨日の宿は臭ったし壁薄かったけど、俺は別に嫌じゃない」
「で、殿下…………」
なんせあれのお陰でルーファスと一線を越えられたし。ルーファスは昨日の事を思い出したのか頬を赤くしている。俺相手に恥じらってくれているのが嬉しい。
「とにかく、大きい処にしますからね!」
「お、おぉ……」

街で一番大きくて豪華な宿に入り、夜はそこで食事を摂ることにした。鄙びた村の食堂とは違い、宿のコース料理は隣国の王宮で歓待された料理とはまた違う美味しさがある。この後お楽しみが待っているから、酒はそこそこにしとく! 
宿のベルパーソンに案内してもらい、王家の手形を使って最高級の部屋へ入った。
「へぇ、なかなかだな」
「この街では一番ですからね……。本来なら王族は領主館や迎賓館での宿泊ですからねっ」
ルーファスは宿の事になるといつも苦い顔するなぁ。
「貴族の邸は絶対嫌!」
隣国王宮も戸惑ったのに、またあんな感じになるのは堅苦しい。
荷物を置いて部屋にある水を飲み、一段落する。
「ふぅ、湯浴みするか」
「……かしこまりました。お手伝いしますか?」
「なっ!? ……ひ、一人で入る。もしかして、い、一緒に入りたいのかっ?」
ルーファスの申し出に吃驚して、裏返った声で変な事を言ってしまった。
「い、いえ! そういうわけでは……っ」
ルーファスも俺同様に動揺している。馬鹿な事を言ってしまったと反省して、そそくさと浴室に入り身体を洗う。
久しぶりの暖かいお湯と石鹸のいい香りに、気分が大分落ち着いた。身体の隅々を丹念に洗い、あの準備をする。ドキドキしながら備え付けのローブを羽織って浴室をでる。浴室の隣がすでにベッドルームとか……。
ルーファスは悠然とベッドに腰かけている。うう……俺はこんなにドキドキそわそわして、緊張しているのに……。
お前にとっては慣れた行為だから何とも思ってないのか? まさか、勉強の一環だから色事ではないと思ってるのか? 
「あの……」
「私も湯あみしてきますね」
俺の横を何とはなしに通り過ぎるルーファスの後姿に、寂しく感じる。
はぁー……、楽しみにしていたのは俺だけか……。現実は少し悲しいけど、今の段階でこれ以上を望むのは贅沢だよな……。
緊張しながらも落ち込んだりと忙しない感情でベッドに座って俯いていると、ルーファスが浴室から出てきた。同じ備え付けのローブを羽織るルーファスは、長い白金の髪は下ろされ、水が滴っている。壮絶な色気を放っていて、嬉しさの中にある寂しさや悲しさ、複雑な気持ちが一気に吹き飛んだ。
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