王子の凱旋

レニドールSide

次の日

翌日俺達は村を出て、大きな辺境街に行くため森を馬でゆっくり駆けた。討伐に向かう時と違い、急ぐ必要はないから。のんびりルーファスと森デートの気分だ。
魔王の影響のせいで、まだ結構魔物が残っていて歩くたび襲ってくるのが鬱陶しいが……。

ギャアッギャアア！　
ブチッグシュッ
「ふー、まだまだ魔物多いな」
「そうですね……。行きは余裕ありませんでしたから、帰りは魔物の魔石を回収していきましょう。お金になりますから」
「そっか……そうだよな」
魔物の死骸からでる魔石は色々な加工品として使えるため、大きさによって価格が変わるがお金になる。城から出た金をなるべく使いたくない俺は、魔石集めをしなければいけない。魔王と魔王側近達の魔石は回収済みだ。これが結構重いんだが、それは売るわけにはいかないからな。
「次の街に戦士ギルドがあるので、そこで買取りしてもらいましょう」
「……わかった」
地面に散らばる魔石を集め、鞄に詰め込み再び進む。面倒だけど、急いでないしな！　
チラリと横にいるルーファスを見る。至って普通だ。白金の長い髪がキラキラと風にそよいでいる。昨日一線を越えたとは思えない程の普通さだ。いや、むしろ爽やか。
甘い雰囲気になれないのは魔物が鬱陶しく襲ってくるせいもあるのだが。
はぁ……、昨日のルーファスは、本当に素敵だった……。芸術彫刻の様にたくましく、突かれる度にうねる割れた腹筋。いつもは優しい顔立ちなのに、ギラギラと欲情した顔。粗い息遣い。後半激しく突かれ、もう頭の中が真っ白になり、わけがわからない状態だったが、とにかく凄かった……。
思い出してポヤンとしてしまった。
いかん、なに昨日の情交を反芻してるんだ。キモいな、俺……。
反芻しただらしない顔を見られたくなくて、息を吐き出して平常を装う。でも、また今夜彼が抱いてくれる。しかも中でもイケるようにしてくれるらしい。そう思うと期待しすぎてまたもポヤンとしてしまう。
「……殿下？　まだ疲れが残ってますか？　疲れが残っているなら少し休みましょうか」
物思いに耽っていたら、ルーファスが心配そうに見ている。
「ふぇ!?　だ、大丈夫……！」
ヤバいヤバい、気を付けないと。魔物の残党を切り捨て、潰しながら森を抜け、辺境領で三番目に大きい街に着く。
「おおぉ、やっぱり外国なんだなー。俺達の国と建物が違う」
「そうですね、もう昼過ぎですし、何か食べましょう。それから街を周りますか」
「うん！　昼飯は屋台がいいな」
「ふふっお好きな物選んで下さいね」
「あ、あれっあの大きい葉に包まれたやつがいい！」
屋台街は色々な料理が販売されていて、串物が多い中大きい葉を皿代わりにした香ばしい香りの肉料理が目についた。
「ではお持ちするのでここで待っていて下さい」
「なんだよ、一緒に行こうぜ」
何気なくを装ってルーファスの手を握り、目当ての屋台の前に行く。これがボディタッチと言うやつだよな。料理を購入して、空いているベンチへ並んで座り、料理を堪能した。葉に包んで焼いた香ばしい匂いと濃い味付けの肉がたまらない！
「んー！　美味しい！　外で食べるの最高ーっ」
「ええ、とても美味しいですね。ああ殿下、タレが服に…」
ルーファスは手に持った傾いた葉を、俺の手を支えて直した。隣に座るルーファスが更に近づいて、手を触るもんだからドキリとしてしまう。俺はルーファスを見上げる。
「あ、ありがと……」
顔を赤くしながら微笑む。
うん、傍から見るとこれ恋人同士に見えるんじゃないか？　いい雰囲気だよな！　あー、このままキスしたいな。無理か……恋人じゃないし。昨日のも、教育の一貫みたいな感じだし……。というか、これからどうやって俺に気持ちを向けさせればいいんだ？　わからん。セーラン先生に今聞きたいよ。
「殿下ほら、手が止まってますよ」
ルーファスが小さい串に肉を刺して、せっせと口へ運んでくれる。
「ん……お前も食べろよ」
俺もルーファスの真似をして口へ運んだり。
はぁー、ルーファスにとってはこれも護衛騎士の仕事なんかな。恋人みたいな雰囲気だなーと思ってるの俺だけなんかな。
ルーファスの一挙手一投足にいちいち気分が上下して忙しないな。



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お読み下さってありがとうございます！

この世界では
戦士＝冒険者としてます。
レニドールは最低限の基礎教育しか受けていないので、感情豊かです。