Are you my……?

広瀬 晶

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 今自分は何をしているのだろう、と僕は思う。経緯は全て覚えているのに、訳が分からない。僕は濡れた髪をタオルで乾かしながら、彼を待っていた。

 試してみますか、と問われ。うん、と僕は答えた。正に、売り言葉に買い言葉。奇妙な需要と供給がそこにはあった。
 彼はひとつため息をつくと、僕に入浴してくるよう言った。行為の前にすることなど、聞きかじった程度の知識しかない。指示通りに入浴を済ませると、入れ替わりに彼が浴室に消えた。
 僕はこの行為で何を証明したいのだろう。彼に一体何を伝えようとしているのだろう。答えが出る前に、ドアが外側から開かれた。
 彼は部屋の中で借りてきた猫のように小さくなっている僕を見て、微かに目を見開いた。おそらく、逃げ出さなかったことに驚いたのだろうが。驚きを見せたのはほんの一瞬のことで、ベッドの端に浅く座る僕の前まで来ると、彼は確認するように言った。
「本当にいいんですか」
 頷くと、彼はまだ湿っている僕の髪を一筋掬い上げ、そこに口づけた。
「分かりました」
 先程までの溢れるような色気はそこにはなく、
僕のよく知る笑顔を見せてから、彼は首筋と頬に触れるか触れないかといったキスをした。頬へのキスが終わると、次は唇だった。
 触れるだけではなく、舌が口内へと侵入してくる。初めて知る他人の感触は熱くて、まるで自分が溶かされ、飲み込まれていくように感じる。その感覚に、僕は翻弄されていた。
 長い、長い時間に思えた。唇が離れていくと同時に、僕は息を吸い込んだ。呼吸が上手くできていなかったせいだろう。うっすらと張った涙の膜越しに、彼を見上げる。
「そんな反応されると……」
 彼の言葉も、あまり頭に入ってこない。困ったような響きに首を傾げると、座っている状態からベッドに押し倒される。
「名前で、呼んでもいいですか?」
「名前? 構いません、けど」
 こんなときに名字で呼び合うのは不自然、ということだろうか。戸惑う僕に、彼はやわらかな声で言った。
「瑞希」
 慈しむように名前を呼ばれて、胸が騒ぐ。心臓の音が全身に伝わるのを感じながら僕は、彼の手を受け入れた。シャツの裾が捲られ、素肌に直接指が触れる。そのままおなかを撫でられたことで、不意に声が出た。
 身体の形を確かめるように動く指先は、少しずつ上昇していき。膨らみのない胸元へとたどり着いた。普段意識したこともない場所に触れられ、知らない感覚を引き出される。くすぐったい、だけじゃない。じん、と痺れるような、熱さ。近い感覚が他になくて、例えようもない。
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