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パフェを食べた終えた後は、予定通りスーパーに入った。すっかり食事担当として定着してしまった佐藤君が、手際よく食材をカートの中に入れていく。
「慣れてるね」
「小学校の高学年くらいからやってたので」
「そうなんだ」
自分はずっと実家暮らしで、両親が海外に移るまでは、すべての家事を任せきりにしていた。今は掃除洗濯は人並みにするようになったが、料理は他の家事と比べると頻度が少ない。
「俺はただ、必要に迫られてやってただけですし」
僕の表情を見て、佐藤君がフォローを入れてくれる。
「それに俺、女性と結婚する可能性を捨ててるから。料理くらい自分でできないとまずいでしょ」
いろいろ考えてるんだな。単調に生きてきた自分と彼との間に、大きな隔たりを感じた。
「佐藤君、モテるでしょう」
何となく落ち込んだ気分をごまかそうとして、話を替えた。
「普通、だと思いますけど。周りにもっとモテてるやついるし。第一、女子にモテても仕方ないので」
類は友を呼ぶというが、佐藤君の周りはイケメンだらけなのだろうか。そういえば、元彼もかわいい系の整った顔立ちをしていた気がする。
「村上さんだって」
彼が豚バラ肉のパックを手に取りながら言う。
「普通に彼女いそうな感じじゃないですか」
「え?」
「優しいし、雰囲気癒し系だし」
癒し系、は初めて言われたが。
「僕は女子から、男として見られてないから」
「それ、村上さんががっついてないからだと思うけどな」
適度にがっついていないと、そういう雰囲気にはなりにくいらしい。なるほど。
彼女がほしいと思わなかったわけではないが、何がなんでもほしい、とは思わなかった。だからだと言われれば、反論の余地はない。
「村上さんのそういうとこ、俺は好きですけど」
「え?」
好き、の一言が妙に胸に刺さる。間近で触れ合った後遺症かもしれない。
「無欲っていうか、自然体っていうか……。何か、ほっとします」
「そ、そう。ありがとう」
気まずさを覚えているのが自分だけ、というのがさらに気まずい。
「今日、ごはん何?」
「え? ああ、豚の角煮でも作ろうかなと」
「うわ、楽しみ」
距離感、と僕は自分に言い聞かせる。彼は、僕の兄の息子、かもしれないひと。ただそれだけだ。
その夜、兄からメールが来た。来週の日曜日、こちらの家に来るということだった。それを佐藤君に伝えると、何とも言えない顔で笑った。見ることはできないが、おそらく僕も同じ顔をしていたに違いない。
「慣れてるね」
「小学校の高学年くらいからやってたので」
「そうなんだ」
自分はずっと実家暮らしで、両親が海外に移るまでは、すべての家事を任せきりにしていた。今は掃除洗濯は人並みにするようになったが、料理は他の家事と比べると頻度が少ない。
「俺はただ、必要に迫られてやってただけですし」
僕の表情を見て、佐藤君がフォローを入れてくれる。
「それに俺、女性と結婚する可能性を捨ててるから。料理くらい自分でできないとまずいでしょ」
いろいろ考えてるんだな。単調に生きてきた自分と彼との間に、大きな隔たりを感じた。
「佐藤君、モテるでしょう」
何となく落ち込んだ気分をごまかそうとして、話を替えた。
「普通、だと思いますけど。周りにもっとモテてるやついるし。第一、女子にモテても仕方ないので」
類は友を呼ぶというが、佐藤君の周りはイケメンだらけなのだろうか。そういえば、元彼もかわいい系の整った顔立ちをしていた気がする。
「村上さんだって」
彼が豚バラ肉のパックを手に取りながら言う。
「普通に彼女いそうな感じじゃないですか」
「え?」
「優しいし、雰囲気癒し系だし」
癒し系、は初めて言われたが。
「僕は女子から、男として見られてないから」
「それ、村上さんががっついてないからだと思うけどな」
適度にがっついていないと、そういう雰囲気にはなりにくいらしい。なるほど。
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「村上さんのそういうとこ、俺は好きですけど」
「え?」
好き、の一言が妙に胸に刺さる。間近で触れ合った後遺症かもしれない。
「無欲っていうか、自然体っていうか……。何か、ほっとします」
「そ、そう。ありがとう」
気まずさを覚えているのが自分だけ、というのがさらに気まずい。
「今日、ごはん何?」
「え? ああ、豚の角煮でも作ろうかなと」
「うわ、楽しみ」
距離感、と僕は自分に言い聞かせる。彼は、僕の兄の息子、かもしれないひと。ただそれだけだ。
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