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3章 高校編
40話
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~佐藤未来サイド~
私の名前は佐藤未来。17歳のバリバリの霞ヶ丘高校のJKである。私は現在どうしてか知らない人がつい最近まで使っていた血塗られた部屋のベッドの上に座っていた。
私を強引に襲おうとしたあの男と一緒の部屋で一晩を過ごすなどできるはずもなく、隣の空いてる部屋を家主に断りもなく使用していた。
部屋に入ってみれば想像していた通り……いや想像以上に酷い有様だった。
「私……本当にここで寝るの?悪夢とか見ないよね?」
正直部屋の中を見た途端一目散に逃げ出したい衝動に駆られていた。その衝動を抑えつけたのは私のちっぽけなプライドであった。
あの男の前で見栄を張って隣の部屋を使うと言った手前、部屋を見た途端血だらけで逃げ出すなど恥ずかしすぎてできなかったのだ。
「はぁ……そもそもこの部屋である必要もないじゃーん!」
そう。別に隣の部屋じゃなくても、2階でも1階でも空いていて1番綺麗な部屋で良かったのだ。むしろ普通そうしないとおかしい!
けどこの部屋を見た後に他の部屋を見たいだなんて口を裂けても言えるはずないじゃない。ここでも私のちっぽけなプライドが足を引っ張ってしまったのだ。
私でも思う、めんどくさい女だと……。
せめてあの男が後ろにいなければな。
「もうここで寝るって決めたんだ、覚悟を決めなさい未来!」
私は震える握り拳をもう片方の手で覆い温めながら、大きな布団を思いっきり頭の方まで被って血塗られた景色を遮る。
ちなみにこの敷布団と掛布団は襖の中に入っていて、外に元からあったベッドは勿論赤く濁っていたのですぐさま襖から取り出し上に重ねた。なので現在この白いベッドだけが私の聖域である。恐らくこの白い布団がなければ私は部屋の隅っこで小さく縮こまりながら体育座りをするしかなかっただろう。
「隣人さんありがとうございます……」
ぐぅ~~~
「!?」
お腹が鳴った……それはそうだ。あの男が帰ってきてからまだ何も食べてないのだ。それはお腹が空くに決まっている。
でもあの男と私は今別々の部屋にいる。だからあの部屋の中に山ほどあったカップ麺だったりの簡単調理できる食糧はここには無かった。
果物も多少はあるもののそれらに血が付着していると思うととても食欲が湧かない。
私は布団をどかして床に足を付ける。床についている血痕を避けながら冷蔵庫の中まで爪先立ちしながら歩く。
「どれどれ……はぁ……」
冷蔵庫の中を見てみるとお酒や調味料、もやしやキャベツなど如何にも一人暮らしの男の部屋という感じだった。幸い野菜はあるもののこれで腹は膨れないし何より……味気ない。
こんな世界でそんな贅沢を望んで良いはずがないというのも理解しているが、あの男の部屋にあったカップ麺を見つけてしまっては大人しく我慢するなど簡単じゃない。
「はぁ、あんなにあるなら一つくらい欲しかったな……今頃何不自由なく腹を満たしているのかな」
その姿を想像すると空腹なこともあってムカムカし出してしまった。完全に糖分が不足してしまっている。
「もうなんで1人になってあんな男の事考えないといけないのよっ!もうやだぁ!寝る!」
今度こそ絶対起きない!という強い想いで周りの光を布団で遮断する。寝てしまえば空腹なんて忘れてしまえるはずだから。
ぐぅ~~~ ぐぅ~~~~
「~~~~~~~っ!!」
やはり空腹の体はどうしても寝ることを許してくれなそうだ。私は渋々と体を起き上がらせて冷蔵庫の中にあるキャベツを食べる決心をした……そんな時だった。
ガサッ
「……なに?」
ドアの向こうから何やら音がしたような気がした。私はその音がどうしても気になり空腹なことを一瞬忘れてドアの壁穴から外を覗き見る。
「誰も……いない」
ゾンビでは無い?じゃあ偶然そんな音が鳴っただけ?それとも……
「あの男?」
私は音の正体が気になった為、ドアの外の周りに誰もいない事を確認してドアをゆっくりと開ける。
「やっぱり何も……あれ?」
何も無いと思いきや、ドアノブにある物がぶら下がっていた。
「これは……!お茶とカップラーメンが入ってる!あと菓子類もあるしこれ私の好きなグミ!」
こんな事できるのなんて1人しかいないじゃ無いけど、どうしてこんな……。
私は少なくともこんな差し入れを貰える程あの人に何かをしたつもりは無い。なんなら嫌われてもおかしくは無いくらいの対応をしていた自負はあった。
なのに……何でこんなこっそりと……。
「もうっ……最低で陰湿な人間ならずっとそうでいてよ……急に優しくするな。気持ち悪い」
こんな事をしてもあの男が私にしようとした事を許すつもりはない。例えそれが覚悟を試す為だったという理由でも。私はそれで一度自殺を試みてしまったのだ……そう簡単に切り替えることはできない。
だからあの男が私にどんなに優しくしようと私からの印象はずっと最悪なままから変わることは無い。
けど……
「何かおかしい……何故だか分からないけどあの男の事を心の底から嫌いになれない自分もいる……気がする」
この感情は最近のものでは無い……そうこれはもっと前。私が記憶をなくす前の感情。
つまり……
「私はあの男の事を知っている……?」
私の名前は佐藤未来。17歳のバリバリの霞ヶ丘高校のJKである。私は現在どうしてか知らない人がつい最近まで使っていた血塗られた部屋のベッドの上に座っていた。
私を強引に襲おうとしたあの男と一緒の部屋で一晩を過ごすなどできるはずもなく、隣の空いてる部屋を家主に断りもなく使用していた。
部屋に入ってみれば想像していた通り……いや想像以上に酷い有様だった。
「私……本当にここで寝るの?悪夢とか見ないよね?」
正直部屋の中を見た途端一目散に逃げ出したい衝動に駆られていた。その衝動を抑えつけたのは私のちっぽけなプライドであった。
あの男の前で見栄を張って隣の部屋を使うと言った手前、部屋を見た途端血だらけで逃げ出すなど恥ずかしすぎてできなかったのだ。
「はぁ……そもそもこの部屋である必要もないじゃーん!」
そう。別に隣の部屋じゃなくても、2階でも1階でも空いていて1番綺麗な部屋で良かったのだ。むしろ普通そうしないとおかしい!
けどこの部屋を見た後に他の部屋を見たいだなんて口を裂けても言えるはずないじゃない。ここでも私のちっぽけなプライドが足を引っ張ってしまったのだ。
私でも思う、めんどくさい女だと……。
せめてあの男が後ろにいなければな。
「もうここで寝るって決めたんだ、覚悟を決めなさい未来!」
私は震える握り拳をもう片方の手で覆い温めながら、大きな布団を思いっきり頭の方まで被って血塗られた景色を遮る。
ちなみにこの敷布団と掛布団は襖の中に入っていて、外に元からあったベッドは勿論赤く濁っていたのですぐさま襖から取り出し上に重ねた。なので現在この白いベッドだけが私の聖域である。恐らくこの白い布団がなければ私は部屋の隅っこで小さく縮こまりながら体育座りをするしかなかっただろう。
「隣人さんありがとうございます……」
ぐぅ~~~
「!?」
お腹が鳴った……それはそうだ。あの男が帰ってきてからまだ何も食べてないのだ。それはお腹が空くに決まっている。
でもあの男と私は今別々の部屋にいる。だからあの部屋の中に山ほどあったカップ麺だったりの簡単調理できる食糧はここには無かった。
果物も多少はあるもののそれらに血が付着していると思うととても食欲が湧かない。
私は布団をどかして床に足を付ける。床についている血痕を避けながら冷蔵庫の中まで爪先立ちしながら歩く。
「どれどれ……はぁ……」
冷蔵庫の中を見てみるとお酒や調味料、もやしやキャベツなど如何にも一人暮らしの男の部屋という感じだった。幸い野菜はあるもののこれで腹は膨れないし何より……味気ない。
こんな世界でそんな贅沢を望んで良いはずがないというのも理解しているが、あの男の部屋にあったカップ麺を見つけてしまっては大人しく我慢するなど簡単じゃない。
「はぁ、あんなにあるなら一つくらい欲しかったな……今頃何不自由なく腹を満たしているのかな」
その姿を想像すると空腹なこともあってムカムカし出してしまった。完全に糖分が不足してしまっている。
「もうなんで1人になってあんな男の事考えないといけないのよっ!もうやだぁ!寝る!」
今度こそ絶対起きない!という強い想いで周りの光を布団で遮断する。寝てしまえば空腹なんて忘れてしまえるはずだから。
ぐぅ~~~ ぐぅ~~~~
「~~~~~~~っ!!」
やはり空腹の体はどうしても寝ることを許してくれなそうだ。私は渋々と体を起き上がらせて冷蔵庫の中にあるキャベツを食べる決心をした……そんな時だった。
ガサッ
「……なに?」
ドアの向こうから何やら音がしたような気がした。私はその音がどうしても気になり空腹なことを一瞬忘れてドアの壁穴から外を覗き見る。
「誰も……いない」
ゾンビでは無い?じゃあ偶然そんな音が鳴っただけ?それとも……
「あの男?」
私は音の正体が気になった為、ドアの外の周りに誰もいない事を確認してドアをゆっくりと開ける。
「やっぱり何も……あれ?」
何も無いと思いきや、ドアノブにある物がぶら下がっていた。
「これは……!お茶とカップラーメンが入ってる!あと菓子類もあるしこれ私の好きなグミ!」
こんな事できるのなんて1人しかいないじゃ無いけど、どうしてこんな……。
私は少なくともこんな差し入れを貰える程あの人に何かをしたつもりは無い。なんなら嫌われてもおかしくは無いくらいの対応をしていた自負はあった。
なのに……何でこんなこっそりと……。
「もうっ……最低で陰湿な人間ならずっとそうでいてよ……急に優しくするな。気持ち悪い」
こんな事をしてもあの男が私にしようとした事を許すつもりはない。例えそれが覚悟を試す為だったという理由でも。私はそれで一度自殺を試みてしまったのだ……そう簡単に切り替えることはできない。
だからあの男が私にどんなに優しくしようと私からの印象はずっと最悪なままから変わることは無い。
けど……
「何かおかしい……何故だか分からないけどあの男の事を心の底から嫌いになれない自分もいる……気がする」
この感情は最近のものでは無い……そうこれはもっと前。私が記憶をなくす前の感情。
つまり……
「私はあの男の事を知っている……?」
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