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第21話 兵、らっしゃい!
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◎コント仕立てです。遅くなりましたが、新年の初笑いに少しでもお口に合えば幸いです。
一人のサラリーマン(治:20代前半)が寿司屋の前に立っている。
治「昼休みもまだ時間あるし、たまには高級寿司でも味わうか!」
治、寿司屋の戸を開けて入店。中はカウンター式で、店長らしき男(30代半ば)が立っている。
男「よく来たな、新人!早く入れ!」
治「は?」
治、驚いて男を見る。
男は割烹着の下にいかめしい軍服を着て、ミリタリーキャップをかぶっている。
男「グズグズするな!さっさと座れ!」
治「えっと、ここ寿司屋ですよね?」
男「新人が気安く話しかけるな!」
治「あなた、大将?」
男「大将じゃない。俺のことは、『隊長』と呼べ」
治「隊長?」
男「よし!今日もいいネタが入って来たな、バリバリ特訓してやろう」
治「特訓!?」
男「まずは好きなメニューを選べ」
治「よく分からないけど、寿司食えるんだよね?」
男「さっさと選べ!ネタの鮮度が落ちるぞ、バカ!」
治「優しいけど言葉遣いひでーな」
男「今日のメニューはこの二つだ。
カツオのたたき上げか、鉄火の軍艦巻きか。
好きな方を選べ」
治「なにココ、自衛隊の食堂なの?」
男「文句を言う奴に食わせる寿司はない!」
治「じゃあ、軍艦巻きで!」
隊長がカウンター内で酢飯を握り始める。治、その様子を見守る。
隊長「このシャリの白さ……むかし、ジャングルで散った仲間の骨のようだ」
治「すげえ客を無視した例えだな」
隊長「マイケル……陽気でいい奴だったのに……ちくしょぉ」
隊長がうつむき、気まずくなる治。
隊長「前線で倒れなきゃ、今ごろは家族と一緒に……ぐすっ」
治「早く寿司握ってほしいんだけどなー」
隊長「ったく、泣かせやがるぜ」
隊長、鼻水を拭き取った手でシャリを握る。
治「ちょっとぉ!手ぇ洗えよ!!」
隊長「ん?どうかしたか?」
治「汚ねぇだろーが、衛生的に!」
隊長「安心しろ。衛生兵なら、この奥で待機している」
治「そっちの衛生じゃねえ!」
隊長、手を洗ってシャリを握り直す。治、その様子を不安げに見つめる。
治「なんかやべーとこ来ちゃったなぁ」
隊長「よし、出来たぞ」
治「おっ、美味そう!じゃ早いとこ食っちゃお……って、どこ行くんだよ!?」
隊長、寿司を乗せた皿を持ってカウンターから出ると、裏口のドアに向かう。
隊長「ついてこい、こっちだ」
治「はあ!?どこで食わせる気だよ!」
隊長、治を連れて裏口を出る。空き地が二人の前に広がっている。
隊長「大佐!お食事をお持ちしました!大佐!」
治「誰だよ大佐って?」
空き地の隅からガサガサと音が聞こえる。何かが姿を現す。
猫「にゃあ~ん」
隊長「遅くなって申し訳ございません!おニャンコ大佐!」
治「いや、野良猫にやるのかよ!その寿司!」
隊長「貴様!おニャンコ大佐に向かって失礼だぞ!」
治「お前の呼び方のほうが失礼だわ」
隊長、猫に寿司をやり、食べる様子を愛おしそうに見つめる。
隊長「(ものすごく野太い声で)
おニャンコ大佐~、美味しいですか~?にゃあ~ん」
治「うわー、引くわー」
隊長「おニャンコ大佐~、可愛いですね~。にゃあ~ん」
そう言いながら、猫を抱っこする隊長。呆れ顔で眺める治。
隊長「よし、そろそろ戻るぞ」
治「今から握るとか、いつまで待たせんだよ」
隊長と治、野良猫をあとにして、裏口から店内に戻る。
隊長、猫の毛まみれの手をシャリに突っ込む。
治「手ぇ洗えや!!隊っ長おぉー!!」
隊長「また文句か」
治「衛生的にダメだって!!」
隊長「だから衛生兵なら、奥で待機してると」
治「繰り返すんじゃねー!!」
治、息切れで肩を上下させる。隊長、手を洗ってシャリを手に取る。
治「つーか、こんなとこで衛生兵なにやってんだよ」
隊長「それより貴様、腹ごしらえに時間がかかりすぎだ」
治「お前のせいだろ」
隊長、シャリを握り始めた途端、顔をしかめる。
隊長「うっ、しまったぁ!」
治「どうした!?」
隊長「さっき、おニャンコ大佐を担ぎ上げていたせいで……指に力が入らない!」
治「ネコ抱っこしてただけだろーが!」
隊長「こうなったら仕方がない。俺の兵糧食を分けてやろう」
治「大丈夫かよ」
隊長、冷蔵庫から寿司の乗った皿を取り出して、治の前に出す。
治「まあ、ネタは美味しそうだな……いただきます」
治、寿司を口に入れる。
治「うん、これは美味い……って、辛い!」
隊長「迷彩柄と言えば、ワサビだからな。
たっぷり仕込んでおいた。これも訓練だ」
治、激しくせき込む。
治「水、水をくれ!」
隊長「ダメだ!メニュー完遂まで水分補給は認めん!」
治「ウッ、米が喉に!き、気管に入った!」
隊長「俺のことか?それなら大丈夫だ」
治「その『貴官』じゃねーよ!バカ!」
治、苦悶の末になんとかやり過ごす。隊長、腕組みをしてうなずく。
隊長「新人にしては、よく頑張ったな」
治、隊長をにらみつける。
治「くっそぉ!生まれて初めて寿司職人を殴りたくなったぜぇ」
そのとき、寿司屋の戸が開いて人が入ってくる。
調理用白衣を着た中年男性が、入るなり隊長に目を留める。
男性「やい、てめえ!俺の許可なくカウンター入るなっつっただろう!」
隊長「いやあの、これはですね、その」
男性「自衛隊3日で辞めたくせに、軍人みたいな格好しやがって。
ちょっとは新人らしく掃除でもしたらどうだ!」
治「お前も新人やったんかい!」
(了)
◎おニャンコ大佐は特殊な訓練を受けています。
人間の食べ物を猫にあげるのは、猫の健康上良くないので控えましょう。
一人のサラリーマン(治:20代前半)が寿司屋の前に立っている。
治「昼休みもまだ時間あるし、たまには高級寿司でも味わうか!」
治、寿司屋の戸を開けて入店。中はカウンター式で、店長らしき男(30代半ば)が立っている。
男「よく来たな、新人!早く入れ!」
治「は?」
治、驚いて男を見る。
男は割烹着の下にいかめしい軍服を着て、ミリタリーキャップをかぶっている。
男「グズグズするな!さっさと座れ!」
治「えっと、ここ寿司屋ですよね?」
男「新人が気安く話しかけるな!」
治「あなた、大将?」
男「大将じゃない。俺のことは、『隊長』と呼べ」
治「隊長?」
男「よし!今日もいいネタが入って来たな、バリバリ特訓してやろう」
治「特訓!?」
男「まずは好きなメニューを選べ」
治「よく分からないけど、寿司食えるんだよね?」
男「さっさと選べ!ネタの鮮度が落ちるぞ、バカ!」
治「優しいけど言葉遣いひでーな」
男「今日のメニューはこの二つだ。
カツオのたたき上げか、鉄火の軍艦巻きか。
好きな方を選べ」
治「なにココ、自衛隊の食堂なの?」
男「文句を言う奴に食わせる寿司はない!」
治「じゃあ、軍艦巻きで!」
隊長がカウンター内で酢飯を握り始める。治、その様子を見守る。
隊長「このシャリの白さ……むかし、ジャングルで散った仲間の骨のようだ」
治「すげえ客を無視した例えだな」
隊長「マイケル……陽気でいい奴だったのに……ちくしょぉ」
隊長がうつむき、気まずくなる治。
隊長「前線で倒れなきゃ、今ごろは家族と一緒に……ぐすっ」
治「早く寿司握ってほしいんだけどなー」
隊長「ったく、泣かせやがるぜ」
隊長、鼻水を拭き取った手でシャリを握る。
治「ちょっとぉ!手ぇ洗えよ!!」
隊長「ん?どうかしたか?」
治「汚ねぇだろーが、衛生的に!」
隊長「安心しろ。衛生兵なら、この奥で待機している」
治「そっちの衛生じゃねえ!」
隊長、手を洗ってシャリを握り直す。治、その様子を不安げに見つめる。
治「なんかやべーとこ来ちゃったなぁ」
隊長「よし、出来たぞ」
治「おっ、美味そう!じゃ早いとこ食っちゃお……って、どこ行くんだよ!?」
隊長、寿司を乗せた皿を持ってカウンターから出ると、裏口のドアに向かう。
隊長「ついてこい、こっちだ」
治「はあ!?どこで食わせる気だよ!」
隊長、治を連れて裏口を出る。空き地が二人の前に広がっている。
隊長「大佐!お食事をお持ちしました!大佐!」
治「誰だよ大佐って?」
空き地の隅からガサガサと音が聞こえる。何かが姿を現す。
猫「にゃあ~ん」
隊長「遅くなって申し訳ございません!おニャンコ大佐!」
治「いや、野良猫にやるのかよ!その寿司!」
隊長「貴様!おニャンコ大佐に向かって失礼だぞ!」
治「お前の呼び方のほうが失礼だわ」
隊長、猫に寿司をやり、食べる様子を愛おしそうに見つめる。
隊長「(ものすごく野太い声で)
おニャンコ大佐~、美味しいですか~?にゃあ~ん」
治「うわー、引くわー」
隊長「おニャンコ大佐~、可愛いですね~。にゃあ~ん」
そう言いながら、猫を抱っこする隊長。呆れ顔で眺める治。
隊長「よし、そろそろ戻るぞ」
治「今から握るとか、いつまで待たせんだよ」
隊長と治、野良猫をあとにして、裏口から店内に戻る。
隊長、猫の毛まみれの手をシャリに突っ込む。
治「手ぇ洗えや!!隊っ長おぉー!!」
隊長「また文句か」
治「衛生的にダメだって!!」
隊長「だから衛生兵なら、奥で待機してると」
治「繰り返すんじゃねー!!」
治、息切れで肩を上下させる。隊長、手を洗ってシャリを手に取る。
治「つーか、こんなとこで衛生兵なにやってんだよ」
隊長「それより貴様、腹ごしらえに時間がかかりすぎだ」
治「お前のせいだろ」
隊長、シャリを握り始めた途端、顔をしかめる。
隊長「うっ、しまったぁ!」
治「どうした!?」
隊長「さっき、おニャンコ大佐を担ぎ上げていたせいで……指に力が入らない!」
治「ネコ抱っこしてただけだろーが!」
隊長「こうなったら仕方がない。俺の兵糧食を分けてやろう」
治「大丈夫かよ」
隊長、冷蔵庫から寿司の乗った皿を取り出して、治の前に出す。
治「まあ、ネタは美味しそうだな……いただきます」
治、寿司を口に入れる。
治「うん、これは美味い……って、辛い!」
隊長「迷彩柄と言えば、ワサビだからな。
たっぷり仕込んでおいた。これも訓練だ」
治、激しくせき込む。
治「水、水をくれ!」
隊長「ダメだ!メニュー完遂まで水分補給は認めん!」
治「ウッ、米が喉に!き、気管に入った!」
隊長「俺のことか?それなら大丈夫だ」
治「その『貴官』じゃねーよ!バカ!」
治、苦悶の末になんとかやり過ごす。隊長、腕組みをしてうなずく。
隊長「新人にしては、よく頑張ったな」
治、隊長をにらみつける。
治「くっそぉ!生まれて初めて寿司職人を殴りたくなったぜぇ」
そのとき、寿司屋の戸が開いて人が入ってくる。
調理用白衣を着た中年男性が、入るなり隊長に目を留める。
男性「やい、てめえ!俺の許可なくカウンター入るなっつっただろう!」
隊長「いやあの、これはですね、その」
男性「自衛隊3日で辞めたくせに、軍人みたいな格好しやがって。
ちょっとは新人らしく掃除でもしたらどうだ!」
治「お前も新人やったんかい!」
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