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第三章:傾国の姫君
第24話 急変(1)
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「イルーシャ、おまえ酒は飲めるか」
「はあ?」
移動してきた途端、カディスから唐突にそう聞かれたので、わたしはつい間の抜けた声を上げてしまう。……いきなりなんなんだ、カディス。
カディスは既にお酒が入ってるみたいで、少し酔ってるみたいだ。でもまあ、さっきのことで気まずかったので、このくらいの方が話しやすいかもしれない。
「飲めない。そもそも私の国では法律で二十歳からじゃないと飲めないことになってるし」
「この国では十五から酒が飲めるし、結婚もできる。……まあ、少しくらいは飲め」
カディスに勧められて恐る恐るグラスに口を付けると、フルーティな味がした。果実酒だろうか。
なんだ、結構飲みやすいじゃないと思ってカディスに注がれるままくいくい飲んでると、キースが苦笑した。
「イルーシャ、あんまり飲まないほうがいいよ。このルルア酒は口当たりはいいけど、結構強いから」
「……それを早く言ってよ」
うっかり酔い潰れるところだったじゃない。危なかった。
……とはいえ、もう既に顔が熱くて、頭がふわふわしてる。
「あ、そういえば二人とも今日はごめんね。いろいろ迷惑かけちゃったみたいで」
散歩の件とか、ハーメイ国王の件とか。
「……おまえはしばらく散歩禁止だ。散歩で疲れるやつがあるか」
「ええ~……、それじゃ体なまっちゃうよ。ただでさえ体力ないのに」
なんだか、わたし既に酔っぱらいな気がする。気まずかったはずのカディスに普通に話してるよ。
「倒れて休養したのに、また懲りもせず疲れてくるからだ。自業自得だ、我慢しろ」
「今度は自重するから。少しくらいならいいでしょ? 本当言うと、走り込みしたいくらいなんだけど」
「走り込みなどやるな。おまえは本当に姫か? ……とにかくしばらくは駄目だ」
カディスに一蹴されて、わたしはがっかりする。……あ、散歩が駄目だとするとあれも駄目かなあ。
「それじゃ、夜のお花見も駄目?」
「もちろん駄目だ。諦めろ」
「ええ~……カディスひどいよ」
「なんとでも言え。駄目だと言ったら駄目だ」
今回のカディスは本当に頑固だ。自業自得とはいえ、本当に失敗したなあ。
楽しみにしていたお花見の予定が潰れてわたしがむくれていると、キースがくすくす笑った。
「まあ、それは仕方ないね。また倒れられても困るし」
「ええ? キース味方してくれないの?」
ちょっとずるいかもしれないけど、キースがカディスを説得してくれるの期待してたのに。
「今回ばかりはちょっと無理だね。我慢して」
「ええー……」
キースにあっさりと拒否されて、わたしは肩を落とす。
ああ、また退屈な休養期間に逆戻りかあ。……どうせだからこの際、本でも読んで勉強しようかな。明日図書館に本漁りに行こう。
「あと、城内をうろつくのも禁止だからね。散歩するのと対して変わらないから」
「そ、それも駄目なの?」
そこまで徹底されると、過保護通り越して、軟禁されているような気分になってきた。
「おい、キース。俺はそこまでは言ってないぞ」
「ちょっと、ハーメイの動きが不穏だからね。あの国王のイルーシャへの執着は尋常じゃなかったから」
キースのその言葉で、わたしはギリング王が諦めないと言った時のぎらぎらした目を思い出して身を竦めた。
「向こうはカディスだけでなく、僕がイルーシャに求婚していることも知っていたよ。情報源は、どうせウィルローだろうけど」
「……あの男がハーメイにいるのは少々やっかいだな」
真剣に話し込んでる二人にどうやって割り込んでいいのか分からなくて、わたしはおいしい料理をつつきつつ、ルルア酒をちびちびやる。……あ、お酒がなくなった。
手酌でグラスにルルア酒を注いでいると、キースがデカンターをわたしから取り上げた。
「イルーシャは、お酒はこれで終わり」
「ええー……、キースひどーい。おーぼー」
わたしは注いだお酒を奪われないように一気飲みした。
「ふふ、おいしーい。ルルア酒さいこー」
「……おまえ、完全に酔っぱらいだな」
「カディスがイルーシャにこんな強い酒を勧めるからだろう? いくら話しづらいからっていってもイルーシャは免疫ないんだから」
キースがカディスに抗議してくれる。いいぞ、もっとやれ。
「だいたいねえ、カディスは強引すぎるのよ。わたしは恋もしたことないのに、抱きたいとかドン引きだっつーの。分かる? あ、ドン引きって言うのはねぇー……」
「イ、イルーシャ、あれは俺が悪かった。だからもうやめてくれ」
カディスが懇願してくるけど、わたしはそんなことくらいでやめてなんかやらないんだからね。
「なーに、今更勝手なこと言っちゃってるのー? わたしは聞きたくないって言ってるのにカディスが無理矢理聞かせたんでしょーがぁ。このドスケベセクハラ大王ーっ!」
一人で盛り上がったわたしはテーブルをバンバン叩く。
うん、カディスにはこのくらい言ってやらなきゃね。わたしは満足感からにっこり笑う。
「イ、イルーシャ、カディスも反省していると思うからもうその辺で……」
「ねえねえ、キース。キースもわたしのこと抱きたいって思うの? どうなの?」
今度は仲裁に入ったキースにわたしは絡みだす。
「え……、それは、違うと言ったら嘘になるけど……」
珍しく困惑した様子のキースに、わたしは一言返す。
「このむっつりスケベ」
絶句するキースからデカンターを奪うのに成功したわたしは、ルルア酒をグラスに注いで飲む。
ああ、キースがこれじゃあ、ヒューもこんな感じなのかなあ。そんなこと出来そうにもない人に思えるけど。
「あー、やだやだ、男なんて。優しくしてくれたのも下心からなんだね? 結局体が目当てなんだー。不潔ーっ、けだものーっ」
う、叫んでたらなんだか泣きたくなってきた。
「イ、イルーシャ、そんなことはないぞっ。俺は本気でおまえを妃に迎えたいと思っている」
「僕は心から君を愛してるよ。そんな風に言わないでほしい」
「……二人の言うことなんて、わたしには分かんないよっ」
ぽろぽろと涙をこぼし始めたわたしに、二人が慌てる。
「な、泣くな、イルーシャ」
「イルーシャ、泣かないで」
ごそごそとハンカチを探してたら、リイナさんにハンカチを差し出された。
「ありがと、リイナさん」
「いいえ。イルーシャ様、御酒を召し上がり過ぎです。もう今夜はお休みになられた方がよいですわ」
「うん、そうだね」
涙を拭いながらリイナさんの提案ににっこりする。
こういう時は、なにも考えずに寝ちゃった方がいいよね。
昼間さんざん寝たから寝られるか心配だったけど、ちょうどいい具合に眠気も襲ってきた。
「じゃあ、部屋に送るから」
あ、キースが移動魔法で送ってくれるみたいだ。
「うん、二人ともおやすみーっ」
先程とは打ってかわって上機嫌のわたしに二人が溜息をつく。
「イルーシャ、良い夢を」
キースが手を一振りすると、わたしは自分の部屋に戻った。
暗闇の中、松明の明かりがいくつも見える。そのせいか、夜だというのに結構明るい。
「大変です! 隊長、ハーメイから敵が攻めてきます!」
「なんだと、馬鹿な!」
一人の兵からの報告に、ガルディア兵が一気に騒然となる。
砦の入り口付近で敵味方両方の兵が睨みあうと隊長と呼ばれていた人が言った。
「ハーメイのような小国が、ガルディアに攻め込むなど、愚の骨頂。攻め滅ぼされたいのか?」
その視線の先にはウィルローがいた。
「滅ぶかどうかは分からないでしょう。少なくともここにはわたしに対抗出来るだけの魔術師もいない」
そう言うと、ウィルローは右手を掲げた。その途端、ガルディア兵達はいくつものかまいたちに切り刻まれる。
飛び散る肉片、血飛沫、断末魔の叫び。
いやああああっ!!
わたしは視線を逸らすことも出来ずに、ただその凄惨な光景を見ていた。
「やれやれ、ヒルトリア砦もあっけないものですね。こうも簡単に攻め込まれるとは。大国という名にあぐらをかいた平和ボケですか?」
ウィルローが目の前に横たわる隊長の体を踏みにじる。
彼が先程言葉を交わしていた隊長は、とうに生きてはいないと分かる状態になっていた。
いや、いやだ! こんなのは見たくないよ!
わたしはこみ上げる吐き気をこらえながら、ウィルローを見ていた。
彼は、横たわって呻く魔術師と思わしき人に目を留めると言った。
「あなたは移動魔法が使えるようですから、見逃してさしあげます。ガルディア国王にお伝えください。我々の要求はイルーシャ姫。かの美姫をハーメイに差し出すことです。要求がのまれない場合は周囲の村を襲いますからそのつもりでいてください。……ああ、でもこの近くのトリア村には見せしめになってもらいましょうか」
そう言うと、ウィルローはハーメイの軍隊ごと移動した。
「やだ──っ!」
わたしは覚醒すると、慌ててベッドから降りて洗面所に向かった。
ガルディア兵の飛び散った首や手足がリアルに思い起こされて、とてもじゃないけど平静が保てない。起こった事の重大さに、自然と涙が流れてくる。
いやだ、あれはなに。
要求はわたしって、わたしのせいで大勢の人が死んだの? それもあんな死にかたで──
わたしは洗面所で胃液しか出ない状態まで吐くと、よろよろとそこを出て、今度こそキースを呼びだした。
「はあ?」
移動してきた途端、カディスから唐突にそう聞かれたので、わたしはつい間の抜けた声を上げてしまう。……いきなりなんなんだ、カディス。
カディスは既にお酒が入ってるみたいで、少し酔ってるみたいだ。でもまあ、さっきのことで気まずかったので、このくらいの方が話しやすいかもしれない。
「飲めない。そもそも私の国では法律で二十歳からじゃないと飲めないことになってるし」
「この国では十五から酒が飲めるし、結婚もできる。……まあ、少しくらいは飲め」
カディスに勧められて恐る恐るグラスに口を付けると、フルーティな味がした。果実酒だろうか。
なんだ、結構飲みやすいじゃないと思ってカディスに注がれるままくいくい飲んでると、キースが苦笑した。
「イルーシャ、あんまり飲まないほうがいいよ。このルルア酒は口当たりはいいけど、結構強いから」
「……それを早く言ってよ」
うっかり酔い潰れるところだったじゃない。危なかった。
……とはいえ、もう既に顔が熱くて、頭がふわふわしてる。
「あ、そういえば二人とも今日はごめんね。いろいろ迷惑かけちゃったみたいで」
散歩の件とか、ハーメイ国王の件とか。
「……おまえはしばらく散歩禁止だ。散歩で疲れるやつがあるか」
「ええ~……、それじゃ体なまっちゃうよ。ただでさえ体力ないのに」
なんだか、わたし既に酔っぱらいな気がする。気まずかったはずのカディスに普通に話してるよ。
「倒れて休養したのに、また懲りもせず疲れてくるからだ。自業自得だ、我慢しろ」
「今度は自重するから。少しくらいならいいでしょ? 本当言うと、走り込みしたいくらいなんだけど」
「走り込みなどやるな。おまえは本当に姫か? ……とにかくしばらくは駄目だ」
カディスに一蹴されて、わたしはがっかりする。……あ、散歩が駄目だとするとあれも駄目かなあ。
「それじゃ、夜のお花見も駄目?」
「もちろん駄目だ。諦めろ」
「ええ~……カディスひどいよ」
「なんとでも言え。駄目だと言ったら駄目だ」
今回のカディスは本当に頑固だ。自業自得とはいえ、本当に失敗したなあ。
楽しみにしていたお花見の予定が潰れてわたしがむくれていると、キースがくすくす笑った。
「まあ、それは仕方ないね。また倒れられても困るし」
「ええ? キース味方してくれないの?」
ちょっとずるいかもしれないけど、キースがカディスを説得してくれるの期待してたのに。
「今回ばかりはちょっと無理だね。我慢して」
「ええー……」
キースにあっさりと拒否されて、わたしは肩を落とす。
ああ、また退屈な休養期間に逆戻りかあ。……どうせだからこの際、本でも読んで勉強しようかな。明日図書館に本漁りに行こう。
「あと、城内をうろつくのも禁止だからね。散歩するのと対して変わらないから」
「そ、それも駄目なの?」
そこまで徹底されると、過保護通り越して、軟禁されているような気分になってきた。
「おい、キース。俺はそこまでは言ってないぞ」
「ちょっと、ハーメイの動きが不穏だからね。あの国王のイルーシャへの執着は尋常じゃなかったから」
キースのその言葉で、わたしはギリング王が諦めないと言った時のぎらぎらした目を思い出して身を竦めた。
「向こうはカディスだけでなく、僕がイルーシャに求婚していることも知っていたよ。情報源は、どうせウィルローだろうけど」
「……あの男がハーメイにいるのは少々やっかいだな」
真剣に話し込んでる二人にどうやって割り込んでいいのか分からなくて、わたしはおいしい料理をつつきつつ、ルルア酒をちびちびやる。……あ、お酒がなくなった。
手酌でグラスにルルア酒を注いでいると、キースがデカンターをわたしから取り上げた。
「イルーシャは、お酒はこれで終わり」
「ええー……、キースひどーい。おーぼー」
わたしは注いだお酒を奪われないように一気飲みした。
「ふふ、おいしーい。ルルア酒さいこー」
「……おまえ、完全に酔っぱらいだな」
「カディスがイルーシャにこんな強い酒を勧めるからだろう? いくら話しづらいからっていってもイルーシャは免疫ないんだから」
キースがカディスに抗議してくれる。いいぞ、もっとやれ。
「だいたいねえ、カディスは強引すぎるのよ。わたしは恋もしたことないのに、抱きたいとかドン引きだっつーの。分かる? あ、ドン引きって言うのはねぇー……」
「イ、イルーシャ、あれは俺が悪かった。だからもうやめてくれ」
カディスが懇願してくるけど、わたしはそんなことくらいでやめてなんかやらないんだからね。
「なーに、今更勝手なこと言っちゃってるのー? わたしは聞きたくないって言ってるのにカディスが無理矢理聞かせたんでしょーがぁ。このドスケベセクハラ大王ーっ!」
一人で盛り上がったわたしはテーブルをバンバン叩く。
うん、カディスにはこのくらい言ってやらなきゃね。わたしは満足感からにっこり笑う。
「イ、イルーシャ、カディスも反省していると思うからもうその辺で……」
「ねえねえ、キース。キースもわたしのこと抱きたいって思うの? どうなの?」
今度は仲裁に入ったキースにわたしは絡みだす。
「え……、それは、違うと言ったら嘘になるけど……」
珍しく困惑した様子のキースに、わたしは一言返す。
「このむっつりスケベ」
絶句するキースからデカンターを奪うのに成功したわたしは、ルルア酒をグラスに注いで飲む。
ああ、キースがこれじゃあ、ヒューもこんな感じなのかなあ。そんなこと出来そうにもない人に思えるけど。
「あー、やだやだ、男なんて。優しくしてくれたのも下心からなんだね? 結局体が目当てなんだー。不潔ーっ、けだものーっ」
う、叫んでたらなんだか泣きたくなってきた。
「イ、イルーシャ、そんなことはないぞっ。俺は本気でおまえを妃に迎えたいと思っている」
「僕は心から君を愛してるよ。そんな風に言わないでほしい」
「……二人の言うことなんて、わたしには分かんないよっ」
ぽろぽろと涙をこぼし始めたわたしに、二人が慌てる。
「な、泣くな、イルーシャ」
「イルーシャ、泣かないで」
ごそごそとハンカチを探してたら、リイナさんにハンカチを差し出された。
「ありがと、リイナさん」
「いいえ。イルーシャ様、御酒を召し上がり過ぎです。もう今夜はお休みになられた方がよいですわ」
「うん、そうだね」
涙を拭いながらリイナさんの提案ににっこりする。
こういう時は、なにも考えずに寝ちゃった方がいいよね。
昼間さんざん寝たから寝られるか心配だったけど、ちょうどいい具合に眠気も襲ってきた。
「じゃあ、部屋に送るから」
あ、キースが移動魔法で送ってくれるみたいだ。
「うん、二人ともおやすみーっ」
先程とは打ってかわって上機嫌のわたしに二人が溜息をつく。
「イルーシャ、良い夢を」
キースが手を一振りすると、わたしは自分の部屋に戻った。
暗闇の中、松明の明かりがいくつも見える。そのせいか、夜だというのに結構明るい。
「大変です! 隊長、ハーメイから敵が攻めてきます!」
「なんだと、馬鹿な!」
一人の兵からの報告に、ガルディア兵が一気に騒然となる。
砦の入り口付近で敵味方両方の兵が睨みあうと隊長と呼ばれていた人が言った。
「ハーメイのような小国が、ガルディアに攻め込むなど、愚の骨頂。攻め滅ぼされたいのか?」
その視線の先にはウィルローがいた。
「滅ぶかどうかは分からないでしょう。少なくともここにはわたしに対抗出来るだけの魔術師もいない」
そう言うと、ウィルローは右手を掲げた。その途端、ガルディア兵達はいくつものかまいたちに切り刻まれる。
飛び散る肉片、血飛沫、断末魔の叫び。
いやああああっ!!
わたしは視線を逸らすことも出来ずに、ただその凄惨な光景を見ていた。
「やれやれ、ヒルトリア砦もあっけないものですね。こうも簡単に攻め込まれるとは。大国という名にあぐらをかいた平和ボケですか?」
ウィルローが目の前に横たわる隊長の体を踏みにじる。
彼が先程言葉を交わしていた隊長は、とうに生きてはいないと分かる状態になっていた。
いや、いやだ! こんなのは見たくないよ!
わたしはこみ上げる吐き気をこらえながら、ウィルローを見ていた。
彼は、横たわって呻く魔術師と思わしき人に目を留めると言った。
「あなたは移動魔法が使えるようですから、見逃してさしあげます。ガルディア国王にお伝えください。我々の要求はイルーシャ姫。かの美姫をハーメイに差し出すことです。要求がのまれない場合は周囲の村を襲いますからそのつもりでいてください。……ああ、でもこの近くのトリア村には見せしめになってもらいましょうか」
そう言うと、ウィルローはハーメイの軍隊ごと移動した。
「やだ──っ!」
わたしは覚醒すると、慌ててベッドから降りて洗面所に向かった。
ガルディア兵の飛び散った首や手足がリアルに思い起こされて、とてもじゃないけど平静が保てない。起こった事の重大さに、自然と涙が流れてくる。
いやだ、あれはなに。
要求はわたしって、わたしのせいで大勢の人が死んだの? それもあんな死にかたで──
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