6 / 23
はじまりの10歳
6.参加しなくちゃ駄目ですか
しおりを挟む
「いっ、嫌です! 絶対出たくありません!」
わたしはこれでもかというくらい首を横に振った。
あんな傲慢王子に目を付けられるなんて冗談じゃない!
「だが、王家主催となれば、これといった理由もなしにこちらが断るのは難しい。できれば王家に無駄な貸しを作るのは避けたいしな」
「……もしかして、王家とあまりうまくいってないんですか?」
「いや、少なくとも王家の方はうまくやっていると思っているだろうな」
うん? お父様のこの言い方だと、辺境伯家では王家に不満があるのか?
「まあとにかく、おまえが茶会に参加するのは決定事項だ。明日にでも王都に向けて出立できるように準備をさせる」
「ええーっ、じゃあ仮病を使って……」
「却下」
うう、お父様に速攻で返されたよ。
わたしが記憶持ちだと告白した時の情けない姿はどうした。
「王都にはわたしも同行する。頼むからおかしな行動は取るな」
「……分かりました」
さすがにお父様が同行するんじゃ逃げられないよなあ……。
わたしは心の中で溜息をついた。
「父上、わたしも同行させていただいてもよろしいですか。あのような天啓があったブランシュが怯えるのも無理のないこと。できれば傍にいて、それを和らげたいのです」
あー……、お母様、お兄様達にそんな風に話したんだね。まあ、乙女ゲーム云々て、説明も難しいだろうからなあ。
「ファディル兄上の言うとおりです。是非とも俺もブランシュについていたい」
「あ! 僕も……」
「──いい加減になさい」
我も我もと同調したお兄様達に、お母様が一喝した。
「当主が不在の間、あなた達がこの地を守らなくてなんとするのです。妹が可愛いのは分かりますが、義務を怠ってはなりません」
お兄様達はその言葉に不承不承頷いた後、お父様に念押しした。
「父上、くれぐれもあの馬鹿王子にブランシュが害されることのないようにお願いしますよ」
「そうです。そもそも俺達の可愛いブランシュが、あの馬鹿王子の婚約者になるなど、耐えがたい。……いっそ、今から殺りにいくか」
ひぃっ! ランバートお兄様、仮にも王子を殺っちゃ駄目だから!
すると、ナジムお兄様が殺気を発しながらぼそっと呟いた。
「それはいいね……。ブランシュがあの馬鹿王子の婚約者なんてもったいなさすぎるし、それをあの馬鹿から破棄しようなんて許しがたい……」
ナジムお兄様、頼むからヤンデレを発症させるのだけはやめて!
「わ、わたしなら大丈夫です! なんとか王子の目に留まらないようにしますから!」
だから、殺人だけはやめてください! まだ、なにもされてないから!
わたしが必死に頼みこむと、お兄様達は顔を見合わせて、やれやれと言うように苦笑した。
「……ブランシュの頼みなら仕方ないね。ここはおとなしく引いておこう」
「でもなあ……、あの傲慢馬鹿王子に会わせたら、絶対ブランシュが不快になると思うんだよな」
ランバートお兄様がまだ不満そうに愚痴をこぼす。
ん? やっぱりルーニス王子って、ゲーム通りの人間性なのか? さっきもお兄様達、馬鹿王子って言ってたしな。
「そうだよね……。馬鹿なのにあの過剰な自信はどこから来るんだって思うよ」
……馬鹿な上に、傲慢で自信過剰って救いようがないな。
監禁陵辱フラグがなくても避けたい物件だ。
「おまえ達、口が過ぎるぞ。相手は仮にも王子なのだからな」
「……あなたも結構酷いですわよ」
お父様に、お母様の適切なツッコミが入る。うむ、仲の良いことだ。
……お父様はごまかすようにわざとらしく咳こんだ。
「まあ、ブランシュが王家と婚姻関係を結ぶのは以前から望ましくないとは思っていたし、わたしもそのようなことにならないように対処しよう」
「そうね。わたくしも少し考えてみるわ。あんな評判の悪い王子がブランシュの婚約者になるなんて嫌だもの」
……評判になるほど悪いのか。
これは他の婚約者候補も、内心では嫌がってそうだなあ。
わたしは暗澹たる気持ちになりながら、もらったパンをむしゃむしゃした。
わたしはこれでもかというくらい首を横に振った。
あんな傲慢王子に目を付けられるなんて冗談じゃない!
「だが、王家主催となれば、これといった理由もなしにこちらが断るのは難しい。できれば王家に無駄な貸しを作るのは避けたいしな」
「……もしかして、王家とあまりうまくいってないんですか?」
「いや、少なくとも王家の方はうまくやっていると思っているだろうな」
うん? お父様のこの言い方だと、辺境伯家では王家に不満があるのか?
「まあとにかく、おまえが茶会に参加するのは決定事項だ。明日にでも王都に向けて出立できるように準備をさせる」
「ええーっ、じゃあ仮病を使って……」
「却下」
うう、お父様に速攻で返されたよ。
わたしが記憶持ちだと告白した時の情けない姿はどうした。
「王都にはわたしも同行する。頼むからおかしな行動は取るな」
「……分かりました」
さすがにお父様が同行するんじゃ逃げられないよなあ……。
わたしは心の中で溜息をついた。
「父上、わたしも同行させていただいてもよろしいですか。あのような天啓があったブランシュが怯えるのも無理のないこと。できれば傍にいて、それを和らげたいのです」
あー……、お母様、お兄様達にそんな風に話したんだね。まあ、乙女ゲーム云々て、説明も難しいだろうからなあ。
「ファディル兄上の言うとおりです。是非とも俺もブランシュについていたい」
「あ! 僕も……」
「──いい加減になさい」
我も我もと同調したお兄様達に、お母様が一喝した。
「当主が不在の間、あなた達がこの地を守らなくてなんとするのです。妹が可愛いのは分かりますが、義務を怠ってはなりません」
お兄様達はその言葉に不承不承頷いた後、お父様に念押しした。
「父上、くれぐれもあの馬鹿王子にブランシュが害されることのないようにお願いしますよ」
「そうです。そもそも俺達の可愛いブランシュが、あの馬鹿王子の婚約者になるなど、耐えがたい。……いっそ、今から殺りにいくか」
ひぃっ! ランバートお兄様、仮にも王子を殺っちゃ駄目だから!
すると、ナジムお兄様が殺気を発しながらぼそっと呟いた。
「それはいいね……。ブランシュがあの馬鹿王子の婚約者なんてもったいなさすぎるし、それをあの馬鹿から破棄しようなんて許しがたい……」
ナジムお兄様、頼むからヤンデレを発症させるのだけはやめて!
「わ、わたしなら大丈夫です! なんとか王子の目に留まらないようにしますから!」
だから、殺人だけはやめてください! まだ、なにもされてないから!
わたしが必死に頼みこむと、お兄様達は顔を見合わせて、やれやれと言うように苦笑した。
「……ブランシュの頼みなら仕方ないね。ここはおとなしく引いておこう」
「でもなあ……、あの傲慢馬鹿王子に会わせたら、絶対ブランシュが不快になると思うんだよな」
ランバートお兄様がまだ不満そうに愚痴をこぼす。
ん? やっぱりルーニス王子って、ゲーム通りの人間性なのか? さっきもお兄様達、馬鹿王子って言ってたしな。
「そうだよね……。馬鹿なのにあの過剰な自信はどこから来るんだって思うよ」
……馬鹿な上に、傲慢で自信過剰って救いようがないな。
監禁陵辱フラグがなくても避けたい物件だ。
「おまえ達、口が過ぎるぞ。相手は仮にも王子なのだからな」
「……あなたも結構酷いですわよ」
お父様に、お母様の適切なツッコミが入る。うむ、仲の良いことだ。
……お父様はごまかすようにわざとらしく咳こんだ。
「まあ、ブランシュが王家と婚姻関係を結ぶのは以前から望ましくないとは思っていたし、わたしもそのようなことにならないように対処しよう」
「そうね。わたくしも少し考えてみるわ。あんな評判の悪い王子がブランシュの婚約者になるなんて嫌だもの」
……評判になるほど悪いのか。
これは他の婚約者候補も、内心では嫌がってそうだなあ。
わたしは暗澹たる気持ちになりながら、もらったパンをむしゃむしゃした。
2
あなたにおすすめの小説
ヒロインだと言われましたが、人違いです!
みおな
恋愛
目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でした。
って、ベタすぎなので勘弁してください。
しかも悪役令嬢にざまあされる運命のヒロインとかって、冗談じゃありません。
私はヒロインでも悪役令嬢でもありません。ですから、関わらないで下さい。
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する
ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。
皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。
ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。
なんとか成敗してみたい。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
彼女が高級娼婦と呼ばれる理由~元悪役令嬢の戦慄の日々~
プラネットプラント
恋愛
婚約者である王子の恋人をいじめたと婚約破棄され、実家から縁を切られたライラは娼館で暮らすことになる。だが、訪れる人々のせいでライラは怯えていた。
※完結済。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
気配消し令嬢の失敗
かな
恋愛
ユリアは公爵家の次女として生まれ、獣人国に攫われた長女エーリアの代わりに第1王子の婚約者候補の筆頭にされてしまう。王妃なんて面倒臭いと思ったユリアは、自分自身に認識阻害と気配消しの魔法を掛け、居るかいないかわからないと言われるほどの地味な令嬢を装った。
15才になり学園に入学すると、編入してきた男爵令嬢が第1王子と有力貴族令息を複数侍らかせることとなり、ユリア以外の婚約者候補と男爵令嬢の揉める事が日常茶飯事に。ユリアは遠くからボーッとそれを眺めながら〘 いつになったら婚約者候補から外してくれるのかな? 〙と思っていた。そんなユリアが失敗する話。
※王子は曾祖母コンです。
※ユリアは悪役令嬢ではありません。
※タグを少し修正しました。
初めての投稿なのでゆる〜く読んでください。ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください( *・ω・)*_ _))ペコリン
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる