吸血鬼ですが、能力も吸血衝動もありません。

透織

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血液検査の結果

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ああ、またあの夢だ。
いや、夢なのか……あった事なのか……



ザーーーーーと雨が降っている。
また、あの人が殺される夢。



『レ、イっ……いたっ、ぃ』
目の前で、シュインが殺される夢。




『シュ、イン……!!』
レイと呼ばれる僕はいつも間に合わない。駆け付けた時には、黒い影のような者達に殺されかけていて敵に攻撃をしようにもシュインを盾にされていて何も出来ない。


シュインからは、身体から血が止まらず雨が降る地面が真っ赤に染まっている。




『玖央レイ様』
『玖央様』
『我が君』
黒い影に名前を煩いほど呼ばれ囲まれ、シュインが目の前で冷たくなるのをずっと眺めていることしか出来ない。



悪夢だ……






「やめて!!!」
ばっと目が覚め、勢いで上半身を起こした。


はあはあと息切れが止まらない。
「……ゆ、めか…」

夢と分かっても、途端に怖くなり身体を小さくする様に座ったまま丸くなる。
目の前で、シュインと言う人が倒れているを見て夢の僕は、心臓まで冷たくなった。


ただただ、悪夢だ……これを見せて何があるのだろうか、?








「……薫?声が聞こえたけれど大丈夫?」
「薫君?」


「……先生、と尊さん……?」
叫び声で駆け付けてくれたみたいだ。




「大丈夫です。ちょっと、怖い夢見てしまったみたいで…」
あはははと苦笑いをする。



「薫」
「お2人とも屋敷に用ですか?」
何か言われる前にと思い、お2人に質問をぶつける。下手くそだけれど、これ以上この事は聞かないで欲しい。


てっきり、朝かと思ったら外の空は夕日色だった。吸血鬼の活動時間帯だった。




「薫君の様子を見に来たくて先生にお願いしたのですよ。身体の方は大丈夫ですか?」
これは、尊さんに気を使わせてしまった様だ。空気を読んでくれたみたいで助かった。



「はい、体力は落ちてますが貧血もだいぶ落ち着きました。あの、尊さん先生を呼んできて頂いてありがとうございました」 ぺこりと頭を下げる。


「いえいえ、ここまで回復出来て良かったです。先生からの指示がなければ処置出来なかったので良かったです。少し薫君、触診しても良いですか?」
先生からの指示?え?
と言うより、触診?

尊さんは……


「薫、尊は医師免許も持ってるんだ。だから、診てもらって?」
ああ、やっぱり。じゃあ、倒れた僕を処置してくれたのも尊さんなのか。


「重ね重ねありがとうございます。尊さん」

「いえいえ、少し触りますよ?」
そこから、5分ほど尊さんの診察は続いた。





_________________。
先生と尊さんはベッドの近くに椅子を持って来て座っている。
尊さんの後ろで先生は、何やら書いている。

「貧血もだいぶ良くなってますね。ただ、まだ数値が戻っている訳では無いのでこの鉄剤は服用してください。その代わり、献血はそのパックが終わったらおしまいです」
鉄剤?薬??ずっと気になっていたことがある。
この治療法って吸血鬼仕様ではない。と言うより、吸血鬼がこうなる事ほぼ無いので正しい処置の仕方が分からないけれど…… 
確か、場合によって献血することもあるらしいが、この血液は人間用だ。



「ずっと気になっていたのですが……」

「?」
「どうした?」
2人揃って首を傾ける姿に笑いそうになった。


「僕の身体には、人間の治療法が効くのでしょうか?」


「!驚いた……そうだよね」
「薫君……不安にさせてすみません。説明とせずに処置してしまいました。ちゃんとお話しますね」
2人とも驚いたと言う表情から、真剣な顔になったので僕も思わず構える。




「まず、今から薫自身の事を話そうと思うのだけれどこの話を薫の両親、兄弟に話してもいいかい?これは、薫の体質の事になるから知っていた方がいいと思っている」
なるほど、それは同意した方がいいと思った。


「構いません。今からみんなを呼びますか?説明するなら1回で済む方が良いかと思うのですが……」
幸い、今日は屋敷に全員居ると昨日聞いていた。さなり兄様も学園から戻って来ているそうだ。



「薫が良いのであれば、呼んでくるから少し待っていてくれ」
そう言って、伯父上は席を立ち、部屋を後にした。







「あの、尊さん……」

「どうしました?」
尊さんは、書類など片付けながらこちらの様子を見て来る。



「違ったら、すみません……もしかして、尊さんのパートナーさんって……伯父上ですか?」
口に出して、ハッとする。
いや、今言うことでは無いだろう!




「薫君……君は、賢い子ですね」
はははは、と笑い出した尊さんはツボったらしい。ヒィヒィ言いながら笑い始めた。


「あ、の尊さん……すみません、要らないこと言いました……忘れてください」
こんなに笑わなくてもいいのでは!?
段々恥ずかしくなって来た……!!!



「薫!呼んで来たよ!」
タイミング悪い事に、伯父上がみんなを率いて戻って来た。
それでも、尊さんの笑いは止まらず伯父上も混乱していた。


「な、何があった……?」
その答えに、返事をする者はいなかった……







_________________。

尊さんが落ち着いてから、ベッドを囲む様に皆が椅子を持って来て座った。
ここには、従者以外の玖央家の者がいる。



「今から話す事は、他言無用で外部には漏らさないこと。いいね?」
そう、伯父上がみんなに問いかけた。

みんな無言で頷いた。



「1ヶ月ほど前に、薫の血液検査をした。結果は、配った紙に書いてある」
手元にある紙を捲って、中身を見る。



?何これ、数値がおかしい。
この検査結果が僕のだとしたら……


「先生、尊さん……僕は、人間なのでしょうか?」
ボソッと紙に向かって呟く。


「!!!どういう事ですの!?」
「雪姫……」
雪姫は、混乱しているようだった。
雪姫だけでは無い、みんなの表情は困惑と言うような顔だった。



「落ち着いてくれ、この数値だけを見ると分からないだろうからちゃんと説明する。……分かった?」
「申し訳、ありません……」
「……」





「血液検査からして、確かに人間の標準値と似ているけれど薫を人間とイコールするのは違うんだよ」 
その言葉にパッと顔を上げる。
……え、人間では無い?吸血鬼でも無いのに?




「薫の場合、白血球、血小板の数値が異常に低い。そして、ヘモグロビンは逆に数値が高い。この数値は、吸血鬼の物よりも高い」
つまり……?どういうことなのだろう?
血の気が多いと言うこと?え?


「薫君の場合、白血球や、血小板が少ない為、治癒力が人間並または、それ以下。なので、怪我をすると治るのに時間がとてもかかるという事ですね。
逆に血が多い為、吸血衝動が必要ないのでは無いかと私達は考察したのです。なので、薫君が人間か吸血鬼かましてや、半吸血かというのは分からないという答えでした」
それで、怪我をしても直ぐには治らないのか。吸血衝動が血が多いから今の身体には外部からの血を摂取する事は必要ないと言う事なのだろうか??

結局のところ、推測なので分からない。


「ただ、吸血鬼よりも人間の数値に近いので、人間が治療受けるような処置をしてます」
と、尊さんがこちらを見た。
なるほど、それであの質問に答えてくれたのか。













    
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