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喜怒哀楽

堕天使

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彼女は留守電を聞いてくれたようで、家に行ったら彼女が開けてくれた。
「...どうぞ。上がって」
「....ありがとう」
こんなにもあからさまに落ち込んでいると、どう声を掛けて良いか分からない。
変に声をかけて嫌われたりしても困るし。正直、思い悩んでいた。
そんな僕を見計みはからって、お茶を出してくれた。
「...今日は来てくれてありがとうね」
満面の笑みで僕をもてなす。
まただ。彼女はいつも無理をしている。分かってる。
彼女は僕に心配をかけたくない。打ち明けたら嫌われると思っている。
僕はそういうところが嫌いだ。君が学校に来なくなった理由だって、
先生に単位の事で圧力をかけられて、僕の事を引き合いに出されて
何も言い返さなかった。ずっと笑顔で謝罪してたらしいじゃないか。
君を見てる僕までも辛くなってくる。もう、偽りの笑顔はいらないんだよ。
「....俺も会いたかったから...」
そんなこと言えるわけ無かった。彼女の何を俺は知ってる?
何も知らないじゃないか。俺に出来ることと言えばこのくらいか。
「...これ俺の連絡先。辛かったら連絡して」
連絡先を渡すぐらいしかできない。無力だな。俺って。
複雑な気持ちでいっぱいになった心を、お茶で紛らわそうとしていた。
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