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記憶喪失ですが、夫に復讐いたします 16 謎の護衛
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足早に会場に戻る。すぐにでも、ロジェに確認したいことが出来たからだ。
(あれは、フレデリック・モレルだった。)
アカデミーでの青騎士団時代、先輩にあたる男だ。
明るく、人好きのする性格の彼は、いつも人に囲まれていた。
確か、当時副団長をしていた記憶がある。
直接話したことはないが、目立つ男だった。
青騎士団自体は、大所帯なので、直接かかわりがないと話さないこともしばしばだ。
(王宮の騎士団に所属していると聞いていたが、一体、だれの護衛しているんだ?
一度調べてみる価値はある。)
この機会を逃すまいと、大急ぎでロジェのもとへ向かう。
ロジェは、相変わらず、女性に囲まれている。
「お、帰ってきたな、色男。遅かったじゃないか。何してたんだ?」
「確認したいことがある。」
そう言って、話の輪から強引にロジェを引っ張り出し、腕をひいてテラスの方へずんずんあるきだした。
残念がる女性たちに、にこやかに手を振っている。さすが、ロジェだ。
「なんだよ、どうしたんだよ、血相変えて。顔、怖いぞ。」
「フレデリック・モレル、知っているか?」
ロジェの軽口には付き合わず、静かに、しかし有無を言わせない様子だ。
ロジェも王宮騎士団に所属している。
先ほどの騎士が本当にフレデリック・モレルかわかるはずだ。
「ああ、同じ騎士団だ。いや、同じ、というか、なんというか。」
ロジェにしては、めずらしく歯切れが悪い。
「なんだ。」
「今、ちょっと違う業務についているらしくて、騎士団の所属ではないみたいでな。」
「どういう業務だ?」
ロジェは、うーん…と唸ったあと、ごまかすようにへらっと笑って、
「なんだよ~、フレデリックがどうかしたのか。」
「……」
シルビオはのらりくらりと答えをかわすロジェに次第に苛立ち始めた。
その様子を悟ったのか、旧友のよしみだ、と少しずつ知っている情報を話し始める。
「フレデリックについては、詳しく教えられてないんだ。王宮の中にはいるんだがな。」
すこし、逡巡したあと、思い切って伝えてみる。
「さっき、エレオノーラを見た。いや、エレオノーラのような気がしただけかもしれないんだが。」
「エレオノーラって、あの…?」
「そう、“あの”エレオノーラだ。」
「うそ、どこで?!」
「フレデリック・モレルが、警護しているようだった。」
「なんだって?」
さすがにロジェも驚いたようだ。
「わからん、本当にエレオノーラなのかどうなのか。ただ、警護対象が誰なのか、知りたいだけだ。」
「……ちょっと調べたらすぐわかると思うぞ」
ロジェ自身も、フレデリックが秘密裏に動いていることは気にかかっていた。
それが、“殺された妻”の警護だったとは。
「違うとわかれば、あきらめもつくさ」
シルビオの顔からは表情が抜け落ちて、死人のような顔色だ。
「大丈夫か、お前…」
「ああ…いや、かなりダメージは食らってる」
「だよな。あの噂の件も、面白半分、やっかみ半分で騒ぎ立てているだけだ、気にするな」
”ヴェルティエ家の庭には、幼い妻の死体が埋まっている“
もうすぐ三年になろうとする今でも、まことしやかにささやかれている噂だ。
借金を返し、事業にも成功し、自由を手に入れたシルビオのことを、うまくやったなと、うらやましく思う貴族も多くいるのだ。
「いや、俺が悪いよ。ほったらかしにしておいて、いまさらどの面下げて、とは思う」
「じゃあ、もうほっときゃいいじゃないか」
「ただ、後悔しているだけだ。その気持ちを何とかしたい、という自己満足さ」
「もうそろそろ三年だろ~?離婚も成立するんだ、新しい人生ってのもわるくないんじゃないか?」
「どうしてだか、まったく考えられない。」
「なんでだよ、“遺産のおまけ”でついてきただけだろ?別に、好きで結婚したわけじゃあるまいし」
エレオノーラがヴェルティエ家に来た当初は、社交界で“遺産のおまけ令嬢”と面白半分に揶揄されていた。そんな噂の中に放り込むわけにもいかず、社交界に連れて行かなかったのだ。
「たとえ、そうだったとしても、もうちょっと、幸せにしてやれたんじゃないかと思ってるだけだ。」
はあ、とあきれた声をだし、ロジェは続けた。
「お前のはさ~、同情なんだよ。ただの同情!哀れな少女を俺なら幸せにしてやれる!ってね。」
「ん…まあ、そうだな。実際、うぬぼれていたよ。幸せにしてもらったのは俺だしな。」
「ほんとだよ、借金だけ返して、姿を消すなんて、どんだけ女神だよ。」
うなだれているシルビオを横目に、ため息交じりに続けた。
「でもさ、意図的に姿を消した可能性もあるわけだろ?」
「いや、馬車の事故にあったようなんだ。」
急に、ロジェは気の毒そうな顔になった。
「事故だったら、なおさら、もう生きていないんじゃ…」
「…ただ、はっきりさせたいだけだ。」
シルビオの端正な横顔には、覚悟が見て取れた。
(あれは、フレデリック・モレルだった。)
アカデミーでの青騎士団時代、先輩にあたる男だ。
明るく、人好きのする性格の彼は、いつも人に囲まれていた。
確か、当時副団長をしていた記憶がある。
直接話したことはないが、目立つ男だった。
青騎士団自体は、大所帯なので、直接かかわりがないと話さないこともしばしばだ。
(王宮の騎士団に所属していると聞いていたが、一体、だれの護衛しているんだ?
一度調べてみる価値はある。)
この機会を逃すまいと、大急ぎでロジェのもとへ向かう。
ロジェは、相変わらず、女性に囲まれている。
「お、帰ってきたな、色男。遅かったじゃないか。何してたんだ?」
「確認したいことがある。」
そう言って、話の輪から強引にロジェを引っ張り出し、腕をひいてテラスの方へずんずんあるきだした。
残念がる女性たちに、にこやかに手を振っている。さすが、ロジェだ。
「なんだよ、どうしたんだよ、血相変えて。顔、怖いぞ。」
「フレデリック・モレル、知っているか?」
ロジェの軽口には付き合わず、静かに、しかし有無を言わせない様子だ。
ロジェも王宮騎士団に所属している。
先ほどの騎士が本当にフレデリック・モレルかわかるはずだ。
「ああ、同じ騎士団だ。いや、同じ、というか、なんというか。」
ロジェにしては、めずらしく歯切れが悪い。
「なんだ。」
「今、ちょっと違う業務についているらしくて、騎士団の所属ではないみたいでな。」
「どういう業務だ?」
ロジェは、うーん…と唸ったあと、ごまかすようにへらっと笑って、
「なんだよ~、フレデリックがどうかしたのか。」
「……」
シルビオはのらりくらりと答えをかわすロジェに次第に苛立ち始めた。
その様子を悟ったのか、旧友のよしみだ、と少しずつ知っている情報を話し始める。
「フレデリックについては、詳しく教えられてないんだ。王宮の中にはいるんだがな。」
すこし、逡巡したあと、思い切って伝えてみる。
「さっき、エレオノーラを見た。いや、エレオノーラのような気がしただけかもしれないんだが。」
「エレオノーラって、あの…?」
「そう、“あの”エレオノーラだ。」
「うそ、どこで?!」
「フレデリック・モレルが、警護しているようだった。」
「なんだって?」
さすがにロジェも驚いたようだ。
「わからん、本当にエレオノーラなのかどうなのか。ただ、警護対象が誰なのか、知りたいだけだ。」
「……ちょっと調べたらすぐわかると思うぞ」
ロジェ自身も、フレデリックが秘密裏に動いていることは気にかかっていた。
それが、“殺された妻”の警護だったとは。
「違うとわかれば、あきらめもつくさ」
シルビオの顔からは表情が抜け落ちて、死人のような顔色だ。
「大丈夫か、お前…」
「ああ…いや、かなりダメージは食らってる」
「だよな。あの噂の件も、面白半分、やっかみ半分で騒ぎ立てているだけだ、気にするな」
”ヴェルティエ家の庭には、幼い妻の死体が埋まっている“
もうすぐ三年になろうとする今でも、まことしやかにささやかれている噂だ。
借金を返し、事業にも成功し、自由を手に入れたシルビオのことを、うまくやったなと、うらやましく思う貴族も多くいるのだ。
「いや、俺が悪いよ。ほったらかしにしておいて、いまさらどの面下げて、とは思う」
「じゃあ、もうほっときゃいいじゃないか」
「ただ、後悔しているだけだ。その気持ちを何とかしたい、という自己満足さ」
「もうそろそろ三年だろ~?離婚も成立するんだ、新しい人生ってのもわるくないんじゃないか?」
「どうしてだか、まったく考えられない。」
「なんでだよ、“遺産のおまけ”でついてきただけだろ?別に、好きで結婚したわけじゃあるまいし」
エレオノーラがヴェルティエ家に来た当初は、社交界で“遺産のおまけ令嬢”と面白半分に揶揄されていた。そんな噂の中に放り込むわけにもいかず、社交界に連れて行かなかったのだ。
「たとえ、そうだったとしても、もうちょっと、幸せにしてやれたんじゃないかと思ってるだけだ。」
はあ、とあきれた声をだし、ロジェは続けた。
「お前のはさ~、同情なんだよ。ただの同情!哀れな少女を俺なら幸せにしてやれる!ってね。」
「ん…まあ、そうだな。実際、うぬぼれていたよ。幸せにしてもらったのは俺だしな。」
「ほんとだよ、借金だけ返して、姿を消すなんて、どんだけ女神だよ。」
うなだれているシルビオを横目に、ため息交じりに続けた。
「でもさ、意図的に姿を消した可能性もあるわけだろ?」
「いや、馬車の事故にあったようなんだ。」
急に、ロジェは気の毒そうな顔になった。
「事故だったら、なおさら、もう生きていないんじゃ…」
「…ただ、はっきりさせたいだけだ。」
シルビオの端正な横顔には、覚悟が見て取れた。
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