39 / 68
記憶喪失ですが、夫に復讐いたします 38 養女2
しおりを挟む
王宮調合室の室長に国王陛下が最近のことを訪ねる。
王妃もアンナマリーも、親しげな様子で、街の事や、観光客のことなどをお尋ねになっていた。
エレオノーラはというと、王宮料理の豪華さに面食らい、一人、目を白黒させていた。
(前菜だけで、どれだけあるの?というか、王族の皆さまはどれだけ食べるつもりなの?)
後から、後から運ばれてくる料理は贅を尽くしたものだ。食器も金の縁取りがあって、フルーツが盛られている皿などは細工も凝っている。職人が丁寧に作り上げたものだと一目でわかった。
しかし、エレオノーラは豪華な食事であっても、緊張でなかなかのどを通らない。
自分のマナーも気になる上に、会話などできようはずもない。
一言も話せないエレオノーラに気遣ってか、国王陛下がエレオノーラに言葉を掛けた。
「そう、緊張せずともよい。だんだんと記憶が戻ってきたそうだな」
「はい、その節はご心配をおかけしました。」
答えるのがやっと。王宮に滞在させてもらっていても、エレオノーラが国王陛下と話す機会はほとんどなかった。
「じゃあ、お家に帰るのかしら?」
アンナマリーがエレオノーラをかなり気に入っていることを知っている王妃殿下は、優し気に微笑みながら、寂しくなるわね、と言葉を掛けた。
「ええと、家には帰れない事情がありまして。アカデミーへの入学を考えています」
「準備の方はどうかね」
「どうでしょうか、実技はちょっと苦手です。なんとか合格して、将来につなげたいと考えています」
どんどん運ばれてくる料理を、上品に平らげながらアンナマリーはエレオノーラの代わりに答えた。
「エレオノーラは奨学生を狙っているのよ」
「それは、また、難関だな」
国王陛下は軽やかに笑って、エレオノーラとアンナマリーを見た。
奨学生とは、それだけ荒唐無稽なことなのだろう。
「そうでしょう?どうにかならないかと思ってるのよ」
確かに国内外から優秀な生徒が集まってくるアカデミーだ。エレオノーラ自身も付け焼刃で何とかなるとは思えず、悩んでいたところだった。
「そこで、提案なんだが」
咳払いをして、改まった国王陛下は続けた。
「貴族の養女になるつもりはないかね」
「養女、ですか?」
突然の申し出だった。エレオノーラにとっては願ったりかなったりなわけだが、そんな親切な貴族がいるのだろうか。
(もしかして、国王陛下の命令で養女に取れと言われていたりして?)
それでは申し訳ない。この国での国王陛下がどれくらいの力を持っているのかわからないが、強制されて受け入れる家に歓迎されるとは思えない。
「この国では頼るところもないと聞いている。最近社交界で妙なうわさも流れているのも、耳にしたことがあるだろう。そのままアカデミーに入学しても、その噂に振り回されるのではないかと考えてね」
(確かに。国王の隠し子疑惑は困るわ。アンナマリー様にも迷惑をかけてしまう)
「で、でも、ただの隣国の男爵令嬢が留学という形で入学するのではいけませんか?」
「確かに、それでも入学できないことはない。しかし、君が王宮に滞在していたことを知っている貴族の子弟も多いようだ。それならば、貴族のもとへ養女に行き、身元を確かな物にしておいてもいいのではないかな。将来のこともあるしなあ。」
(おそらく、国王陛下は将来的に婚姻を考える場合、貴族の肩書があった方がよいのではないか、という親切心もあっておっしゃってくださっているのね。でも、もう結婚はこりごりだわ。)
しかし、帰るところも後ろ盾もないエレオノーラには、ありがたい話である。よりどころのない身だったが、仮にでも家族ができるなら心強い。
「君さえよければ、君を養女にしたいという家があるので、考えてみてほしいと思っている」
エレオノーラは迷っていた。通常養子は、跡継ぎになってほしいということが大半だ。
「でも、私を養女にされるその家のメリットがあまりないのではないでしょうか。ご迷惑をおかけすることになるのではないかと、心配してしまいます。」
「もちろん、無理強いするつもりはないのよ、あなたが納得したうえで進めたいとおもっているわ。」
と、王妃殿下。
「養女になるにあたって、なにか条件や要望などはあるのですか?」
つい、養女にするからには何か裏があるのでは、勘ぐってしまうエレオノーラだった。
「いや、とくにはないと……」
と国王陛下が言いかけたところで、
「じつはね、エレオノーラさん。養女にと希望したのは私なのですよ。」
そこで、口を開いたのは、今まで沈黙を守っていた王宮調合室の室長であるリュシアンだった。
「ええ?!リュシアン様?!なぜですか?」
思わず、口に出してしまった。
エレオノーラの頭の中は?でいっぱいだ。
「実は、私は国王陛下の弟で、王位継承権はありませんが、一応公爵位にあります。エレオノーラさんが頑張っている姿をみて、私が応援できることがあるのではと、申し出たんです。もちろん、養女になるにあたって、条件や要望はありません。気楽なやもめ暮らしをしていたのですが、いつか子育てはしてみたいと思っていたのです。ちょっとおじさんですが、お父さんにならせてくれませんか?」
「それはありがたいですが……」
(そんな風に言われたら、断りづらい。お父さんになりたいだなんて)
エレオノーラは口をつぐんでしまった。シルビオのこともあり、今すぐに決断できることではない。
「じゃあ、決まりだな!」
「よかったわ~、エレオノーラも安心してアカデミーの入学準備できるわね!」
アンナマリーと国王陛下はもう決まったとばかりに喜んでいるようだ。
「あ、あの……」
ちょっと、まって、と口を挟もうとおもったが、まったくエレオノーラの言葉は聞いてもらえそうにない。
「正直、今の感じじゃ奨学生は難しいかもって心配していたのよ、一緒に通えそうでよかったわ!」
(そうなんだ、そんなに難しかったんだ、奨学生って。私の出来が悪いから、アンナマリー様が手を回してくださったのかしら)
申し訳ないやら恥ずかしいやら、だ。しかし、そうなるとエレオノーラは、この流れに乗っていくのが最適に思えてきた。
しかし、シルビオと婚姻関係にあることはリュシアンに伝えておかなければならない。
「リュシアン様、もしよければ後ほど、ちょっと相談が……」
「おお、よいよい、親子水入らずで、存分に話すがよいぞ。」
と嬉しそうな国王陛下。
「あ、いえ、その……」
国王陛下はよっぽどこの話を押していたのだろう。エレオノーラには断れる隙がなかった。
王妃もアンナマリーも、親しげな様子で、街の事や、観光客のことなどをお尋ねになっていた。
エレオノーラはというと、王宮料理の豪華さに面食らい、一人、目を白黒させていた。
(前菜だけで、どれだけあるの?というか、王族の皆さまはどれだけ食べるつもりなの?)
後から、後から運ばれてくる料理は贅を尽くしたものだ。食器も金の縁取りがあって、フルーツが盛られている皿などは細工も凝っている。職人が丁寧に作り上げたものだと一目でわかった。
しかし、エレオノーラは豪華な食事であっても、緊張でなかなかのどを通らない。
自分のマナーも気になる上に、会話などできようはずもない。
一言も話せないエレオノーラに気遣ってか、国王陛下がエレオノーラに言葉を掛けた。
「そう、緊張せずともよい。だんだんと記憶が戻ってきたそうだな」
「はい、その節はご心配をおかけしました。」
答えるのがやっと。王宮に滞在させてもらっていても、エレオノーラが国王陛下と話す機会はほとんどなかった。
「じゃあ、お家に帰るのかしら?」
アンナマリーがエレオノーラをかなり気に入っていることを知っている王妃殿下は、優し気に微笑みながら、寂しくなるわね、と言葉を掛けた。
「ええと、家には帰れない事情がありまして。アカデミーへの入学を考えています」
「準備の方はどうかね」
「どうでしょうか、実技はちょっと苦手です。なんとか合格して、将来につなげたいと考えています」
どんどん運ばれてくる料理を、上品に平らげながらアンナマリーはエレオノーラの代わりに答えた。
「エレオノーラは奨学生を狙っているのよ」
「それは、また、難関だな」
国王陛下は軽やかに笑って、エレオノーラとアンナマリーを見た。
奨学生とは、それだけ荒唐無稽なことなのだろう。
「そうでしょう?どうにかならないかと思ってるのよ」
確かに国内外から優秀な生徒が集まってくるアカデミーだ。エレオノーラ自身も付け焼刃で何とかなるとは思えず、悩んでいたところだった。
「そこで、提案なんだが」
咳払いをして、改まった国王陛下は続けた。
「貴族の養女になるつもりはないかね」
「養女、ですか?」
突然の申し出だった。エレオノーラにとっては願ったりかなったりなわけだが、そんな親切な貴族がいるのだろうか。
(もしかして、国王陛下の命令で養女に取れと言われていたりして?)
それでは申し訳ない。この国での国王陛下がどれくらいの力を持っているのかわからないが、強制されて受け入れる家に歓迎されるとは思えない。
「この国では頼るところもないと聞いている。最近社交界で妙なうわさも流れているのも、耳にしたことがあるだろう。そのままアカデミーに入学しても、その噂に振り回されるのではないかと考えてね」
(確かに。国王の隠し子疑惑は困るわ。アンナマリー様にも迷惑をかけてしまう)
「で、でも、ただの隣国の男爵令嬢が留学という形で入学するのではいけませんか?」
「確かに、それでも入学できないことはない。しかし、君が王宮に滞在していたことを知っている貴族の子弟も多いようだ。それならば、貴族のもとへ養女に行き、身元を確かな物にしておいてもいいのではないかな。将来のこともあるしなあ。」
(おそらく、国王陛下は将来的に婚姻を考える場合、貴族の肩書があった方がよいのではないか、という親切心もあっておっしゃってくださっているのね。でも、もう結婚はこりごりだわ。)
しかし、帰るところも後ろ盾もないエレオノーラには、ありがたい話である。よりどころのない身だったが、仮にでも家族ができるなら心強い。
「君さえよければ、君を養女にしたいという家があるので、考えてみてほしいと思っている」
エレオノーラは迷っていた。通常養子は、跡継ぎになってほしいということが大半だ。
「でも、私を養女にされるその家のメリットがあまりないのではないでしょうか。ご迷惑をおかけすることになるのではないかと、心配してしまいます。」
「もちろん、無理強いするつもりはないのよ、あなたが納得したうえで進めたいとおもっているわ。」
と、王妃殿下。
「養女になるにあたって、なにか条件や要望などはあるのですか?」
つい、養女にするからには何か裏があるのでは、勘ぐってしまうエレオノーラだった。
「いや、とくにはないと……」
と国王陛下が言いかけたところで、
「じつはね、エレオノーラさん。養女にと希望したのは私なのですよ。」
そこで、口を開いたのは、今まで沈黙を守っていた王宮調合室の室長であるリュシアンだった。
「ええ?!リュシアン様?!なぜですか?」
思わず、口に出してしまった。
エレオノーラの頭の中は?でいっぱいだ。
「実は、私は国王陛下の弟で、王位継承権はありませんが、一応公爵位にあります。エレオノーラさんが頑張っている姿をみて、私が応援できることがあるのではと、申し出たんです。もちろん、養女になるにあたって、条件や要望はありません。気楽なやもめ暮らしをしていたのですが、いつか子育てはしてみたいと思っていたのです。ちょっとおじさんですが、お父さんにならせてくれませんか?」
「それはありがたいですが……」
(そんな風に言われたら、断りづらい。お父さんになりたいだなんて)
エレオノーラは口をつぐんでしまった。シルビオのこともあり、今すぐに決断できることではない。
「じゃあ、決まりだな!」
「よかったわ~、エレオノーラも安心してアカデミーの入学準備できるわね!」
アンナマリーと国王陛下はもう決まったとばかりに喜んでいるようだ。
「あ、あの……」
ちょっと、まって、と口を挟もうとおもったが、まったくエレオノーラの言葉は聞いてもらえそうにない。
「正直、今の感じじゃ奨学生は難しいかもって心配していたのよ、一緒に通えそうでよかったわ!」
(そうなんだ、そんなに難しかったんだ、奨学生って。私の出来が悪いから、アンナマリー様が手を回してくださったのかしら)
申し訳ないやら恥ずかしいやら、だ。しかし、そうなるとエレオノーラは、この流れに乗っていくのが最適に思えてきた。
しかし、シルビオと婚姻関係にあることはリュシアンに伝えておかなければならない。
「リュシアン様、もしよければ後ほど、ちょっと相談が……」
「おお、よいよい、親子水入らずで、存分に話すがよいぞ。」
と嬉しそうな国王陛下。
「あ、いえ、その……」
国王陛下はよっぽどこの話を押していたのだろう。エレオノーラには断れる隙がなかった。
2
あなたにおすすめの小説
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
乙女ゲームのヒロインに転生したのに、ストーリーが始まる前になぜかウチの従者が全部終わらせてたんですが
侑子
恋愛
十歳の時、自分が乙女ゲームのヒロインに転生していたと気づいたアリス。幼なじみで従者のジェイドと準備をしながら、ハッピーエンドを目指してゲームスタートの魔法学園入学までの日々を過ごす。
しかし、いざ入学してみれば、攻略対象たちはなぜか皆他の令嬢たちとラブラブで、アリスの入る隙間はこれっぽっちもない。
「どうして!? 一体どうしてなの~!?」
いつの間にか従者に外堀を埋められ、乙女ゲームが始まらないようにされていたヒロインのお話。
結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
さようなら、私を「枯れた花」と呼んだ貴方。~辺境で英雄を救って聖女と呼ばれたので、没落した元婚約者の謝罪は受け付けません~
阿里
恋愛
「お前のような見栄えの悪い女は、俺の隣にふさわしくない」
婚約者アレクに捨てられ、辺境へ追いやられたセレナ。
けれど、彼女が森で拾ったのは、アレクなど足元にも及ばないほど強くて優しい、呪われた英雄ライアンだった。
セレナの薬草が奇跡を起こし、王都を救う特効薬となったとき、かつて自分を捨てた男との再会が訪れる。
「やり直そう」と縋り付くアレクに、セレナは最愛の人と寄り添いながら静かに微笑む。
――あなたが捨てたのは、ただの影ではなく、あなたの未来そのものだったのですよ。
死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?
六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」
前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。
ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを!
その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。
「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」
「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」
(…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?)
自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。
あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか!
絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。
それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。
「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」
氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。
冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。
「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」
その日から私の運命は激変!
「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」
皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!?
その頃、王宮では――。
「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」
「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」
などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。
悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる