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記憶喪失ですが、夫に復讐いたします 41 理由
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今日も午後から剣技の授業がある。
行きたくないのはやまやまだが、自分をだましだまし、鍛錬場まで連れてきた。
(うわ、いた!もう、来ないんじゃないかと思ったのに!ど、どうしよう)
シルビオは今日も同じように、剣の手入れをしながら訓練場にいた。
エレオノーラはひそかに期待していた。シルビオはもう来ないのではないかと。
シルビオの姿を認め、足は進みたがらないが、なんとか動かして進むしかないのだ。
ため息交じりに、ゆっくりと、一歩一歩近づくレオノーラ。
シルビオも同じく驚いた顔でエレオノーラを迎えた。
(もう来ないかと心配していたが…)
緊張した面持ちで、エレオノーラを一瞥する。
「あ、ああ、来たか」
とぎこちなく言いながら十分に手入れされた剣を磨き続ける。
「あ、あの…こないだは」
とエレオノーラが言いかけると、それを遮るようにシルビオは言葉をかぶせた。
「いや、何も言わなくて大丈夫だ。剣の師匠として接してくれたら十分だ。俺が悪いのは承知している。」
シルビオは冷たく言い放った。緊張のため、ぶっきらぼうになってしまう。
(しまった、きつく言いすぎたか)
エレオノーラと顔を合わせないようにしていたシルビオだったが、ふと目に入ったエレオノーラの顔色は、真っ白で今にも倒れそうだ。
「お前、ひどい顔色だな。大丈夫か?」
そういうシルビオも目には力がなく、うっすら目の下にクマが出来ている。
「だ、大丈夫です!問題ありません!」
今にも倒れそうな顔色のエレオノーラは、気合いだけで立っているような状態だ。本当は吐き気はするし、気を抜くと座り込んでしまいそうだ。
「無理するな」
シルビオは自分の横を指さして、
「ここに座れ」
そこには、剣の置き場にしている回廊そばの石段があった。
「いえ、無理していません。大丈夫です」
そう言って、剣を取ろうとするエレオノーラだが、シルビオはその手をやわらかく制して、
「いや、ちょっと聞きたいこともある」
エレオノーラは怪訝な顔をして聞き返した。
「なんですか?」
「ルグラン公、いや、リュシアン様の養女になると聞いたが、本当か?」
(昨日の今日でもう知っているの?なんて耳の速い…)
王弟殿下の養女になる話は王族にごく近しい人間しか知らないはずだ。しかも、お披露目もまだ先であるというのに。
「よく、ご存じですね、実は、昨日お話をいただきました」
エレオノーラは驚きを隠せない。シルビオはどこからこの話を聞いてきたのだろう。
「そうか」
エレオノーラの方を見ずに、シルビオは軽く目を伏せ、ふう、と息をついてそう答えた。
養女の話をシルビオから出してきたのだ、確認するのは今しかない、とばかりにエレオノーラは気になっている質問をぶつけた。
「あの、私もお聞きしたいことがあります。私たちの……その、婚姻関係はどうなっていますか?」
婚姻関係という言葉すら照れてしまう。もじもじと言いにくそうに、エレオノーラは言葉にした。
「どう、とは?」
シルビオの表情は硬く、緊張しているのがわかる。感情を出すまいと必死な様子だ。
「3年経ちましたよね?!本来なら、離婚が成立しているはずです!」
黙ったまま、シルビオは磨かれた剣をまだ磨いている。何の反応も返さないシルビオの様子に、エレオノーラの中の焦燥が頭をもたげてくる。
「君は、ここにいるだろう。特に婚姻関係は変更がない」
(厳密にいうと、それは嘘だ。婚姻関係の継続はエレオノーラが見つかったと証明しなければならない。本当は、婚姻関係は宙に浮いたまま。ローゼンダールへ帰れば、書類を出し継続ができる、というだけだが……)
「そ、そんな!」
離婚が成立していると思い込んでいたエレオノーラは呆然として何も言えない。
(あの時、一緒だった女性とは一緒に住んでいないのかしら、もしかしてもう別れた?!その可能性もあるか……というか、私と離婚していた方が都合よくない?)
「それは、そうだろう。何か問題でも?」
「い、いえ、それでは、リュシアン様の養女になれないのではないかと思いまして」
「君はそれを望んでいるのか?」
望んでいるのか、と言われるとエレオノーラの中は複雑だ。
(望んでいるかなんて、わからない。ただ……)
「できれば、この国で、生きていきたいと思っています。そのうえで家族ができるなら、ありがたいと思います。」
(私にはもう、帰るところなんてないから)
「……リュトヴィッツにいる間は、問題ないだろう」
(家族、か)
シルビオは、頬をなでる風に揺れる前髪をくしゃりとかき上げた。
その姿にはっとする。
エレオノーラは胸の奥底をぎゅっとつかまれるような、奇妙な懐かしさがあった。
鼻の奥がつんとする。眉間に思い切り力をいれて気持ちが揺れないように必死にこらえる。
(俺も、君と家族になるつもりだったよ)
シルビオの心の中だけでつぶやかれたその言葉は、エレオノーラには届かなかった。
行きたくないのはやまやまだが、自分をだましだまし、鍛錬場まで連れてきた。
(うわ、いた!もう、来ないんじゃないかと思ったのに!ど、どうしよう)
シルビオは今日も同じように、剣の手入れをしながら訓練場にいた。
エレオノーラはひそかに期待していた。シルビオはもう来ないのではないかと。
シルビオの姿を認め、足は進みたがらないが、なんとか動かして進むしかないのだ。
ため息交じりに、ゆっくりと、一歩一歩近づくレオノーラ。
シルビオも同じく驚いた顔でエレオノーラを迎えた。
(もう来ないかと心配していたが…)
緊張した面持ちで、エレオノーラを一瞥する。
「あ、ああ、来たか」
とぎこちなく言いながら十分に手入れされた剣を磨き続ける。
「あ、あの…こないだは」
とエレオノーラが言いかけると、それを遮るようにシルビオは言葉をかぶせた。
「いや、何も言わなくて大丈夫だ。剣の師匠として接してくれたら十分だ。俺が悪いのは承知している。」
シルビオは冷たく言い放った。緊張のため、ぶっきらぼうになってしまう。
(しまった、きつく言いすぎたか)
エレオノーラと顔を合わせないようにしていたシルビオだったが、ふと目に入ったエレオノーラの顔色は、真っ白で今にも倒れそうだ。
「お前、ひどい顔色だな。大丈夫か?」
そういうシルビオも目には力がなく、うっすら目の下にクマが出来ている。
「だ、大丈夫です!問題ありません!」
今にも倒れそうな顔色のエレオノーラは、気合いだけで立っているような状態だ。本当は吐き気はするし、気を抜くと座り込んでしまいそうだ。
「無理するな」
シルビオは自分の横を指さして、
「ここに座れ」
そこには、剣の置き場にしている回廊そばの石段があった。
「いえ、無理していません。大丈夫です」
そう言って、剣を取ろうとするエレオノーラだが、シルビオはその手をやわらかく制して、
「いや、ちょっと聞きたいこともある」
エレオノーラは怪訝な顔をして聞き返した。
「なんですか?」
「ルグラン公、いや、リュシアン様の養女になると聞いたが、本当か?」
(昨日の今日でもう知っているの?なんて耳の速い…)
王弟殿下の養女になる話は王族にごく近しい人間しか知らないはずだ。しかも、お披露目もまだ先であるというのに。
「よく、ご存じですね、実は、昨日お話をいただきました」
エレオノーラは驚きを隠せない。シルビオはどこからこの話を聞いてきたのだろう。
「そうか」
エレオノーラの方を見ずに、シルビオは軽く目を伏せ、ふう、と息をついてそう答えた。
養女の話をシルビオから出してきたのだ、確認するのは今しかない、とばかりにエレオノーラは気になっている質問をぶつけた。
「あの、私もお聞きしたいことがあります。私たちの……その、婚姻関係はどうなっていますか?」
婚姻関係という言葉すら照れてしまう。もじもじと言いにくそうに、エレオノーラは言葉にした。
「どう、とは?」
シルビオの表情は硬く、緊張しているのがわかる。感情を出すまいと必死な様子だ。
「3年経ちましたよね?!本来なら、離婚が成立しているはずです!」
黙ったまま、シルビオは磨かれた剣をまだ磨いている。何の反応も返さないシルビオの様子に、エレオノーラの中の焦燥が頭をもたげてくる。
「君は、ここにいるだろう。特に婚姻関係は変更がない」
(厳密にいうと、それは嘘だ。婚姻関係の継続はエレオノーラが見つかったと証明しなければならない。本当は、婚姻関係は宙に浮いたまま。ローゼンダールへ帰れば、書類を出し継続ができる、というだけだが……)
「そ、そんな!」
離婚が成立していると思い込んでいたエレオノーラは呆然として何も言えない。
(あの時、一緒だった女性とは一緒に住んでいないのかしら、もしかしてもう別れた?!その可能性もあるか……というか、私と離婚していた方が都合よくない?)
「それは、そうだろう。何か問題でも?」
「い、いえ、それでは、リュシアン様の養女になれないのではないかと思いまして」
「君はそれを望んでいるのか?」
望んでいるのか、と言われるとエレオノーラの中は複雑だ。
(望んでいるかなんて、わからない。ただ……)
「できれば、この国で、生きていきたいと思っています。そのうえで家族ができるなら、ありがたいと思います。」
(私にはもう、帰るところなんてないから)
「……リュトヴィッツにいる間は、問題ないだろう」
(家族、か)
シルビオは、頬をなでる風に揺れる前髪をくしゃりとかき上げた。
その姿にはっとする。
エレオノーラは胸の奥底をぎゅっとつかまれるような、奇妙な懐かしさがあった。
鼻の奥がつんとする。眉間に思い切り力をいれて気持ちが揺れないように必死にこらえる。
(俺も、君と家族になるつもりだったよ)
シルビオの心の中だけでつぶやかれたその言葉は、エレオノーラには届かなかった。
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