その声だけ、まっすぐ届いた

しっくん

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第二章:気になる声、気づかない想い

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日向はマイペースだった。

登校は始業ギリギリ。休み時間は一人で本を読む。昼食は屋上のベンチか、図書室の隅。


誰ともぶつからず、誰にも迎合せず、けれど決して“冷たい”わけではない。

その独特な距離感に、最初こそクラスメイトたちは戸惑っていたが、数日も経てば“そういう子”として受け入れら

れていった。


そんな中で――

唯一、日向に積極的に話しかけてくる人物がいた。



「また本読んでるの? ほんと、毎日読んでるよね」



声の主はもちろん、桐ヶ谷蒼だった。


「うん。読むと落ち着くから」


「へえ。俺、あんまり読まないけど……どんなの読んでるの?」


「これは、あんまり面白くない」


「え、面白くないの?」


「うん。でも途中でやめたくないタイプだから」


「なんか……やっぱ君、変わってるよね」



蒼は笑った。


クラスの他の女子なら、「変わってる」なんて言われたらむっとするか、冗談で返すところだろう。

けれど日向はただ「よく言われる」とだけ返し、再び本に目を落とす。


それなのに――


蒼は、なぜかそれを面白がるように、また隣の席で話しかけてくる。


「ねぇ、放課後ってどっか寄ったりするの?」


「しないけど」


「じゃあさ、今日ちょっとだけ寄り道しない?」


「どこに?」


「屋上」


「……学校の?」


「うん。内緒だけど、鍵、開いてる日があるんだよね」


それは確かに、普通の女子なら断るか、警戒するような誘いだった。

けれど日向は、「へぇ」と一言つぶやくと、軽くうなずいた。



──その無防備な反応に、蒼は少しだけ驚いた。






その頃、図書室の窓際。

佐伯涼真は、日向がいつも座っていた席にひとりでいた。


彼女の姿がないことに、少しだけ違和感を覚える。

彼女がいないことで、静かな空間が“静かすぎる”と感じてしまうほどに。


手元のノートには、彼女が読んでいた本のタイトルがいくつも書かれている。

それは、彼が“彼女の隣に座るための言い訳”として調べたものだった。


彼女が興味を持ちそうなジャンル、作家、言葉。

そのすべてを集めて、涼真はそっと温めていた。


けれど、それを渡すタイミングを、彼はまだ見つけられずにいる。


──そして今、日向は屋上で、別の誰かと風に吹かれていた。


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