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第二章:気になる声、気づかない想い
しおりを挟む日向はマイペースだった。
登校は始業ギリギリ。休み時間は一人で本を読む。昼食は屋上のベンチか、図書室の隅。
誰ともぶつからず、誰にも迎合せず、けれど決して“冷たい”わけではない。
その独特な距離感に、最初こそクラスメイトたちは戸惑っていたが、数日も経てば“そういう子”として受け入れら
れていった。
そんな中で――
唯一、日向に積極的に話しかけてくる人物がいた。
「また本読んでるの? ほんと、毎日読んでるよね」
声の主はもちろん、桐ヶ谷蒼だった。
「うん。読むと落ち着くから」
「へえ。俺、あんまり読まないけど……どんなの読んでるの?」
「これは、あんまり面白くない」
「え、面白くないの?」
「うん。でも途中でやめたくないタイプだから」
「なんか……やっぱ君、変わってるよね」
蒼は笑った。
クラスの他の女子なら、「変わってる」なんて言われたらむっとするか、冗談で返すところだろう。
けれど日向はただ「よく言われる」とだけ返し、再び本に目を落とす。
それなのに――
蒼は、なぜかそれを面白がるように、また隣の席で話しかけてくる。
「ねぇ、放課後ってどっか寄ったりするの?」
「しないけど」
「じゃあさ、今日ちょっとだけ寄り道しない?」
「どこに?」
「屋上」
「……学校の?」
「うん。内緒だけど、鍵、開いてる日があるんだよね」
それは確かに、普通の女子なら断るか、警戒するような誘いだった。
けれど日向は、「へぇ」と一言つぶやくと、軽くうなずいた。
──その無防備な反応に、蒼は少しだけ驚いた。
*
その頃、図書室の窓際。
佐伯涼真は、日向がいつも座っていた席にひとりでいた。
彼女の姿がないことに、少しだけ違和感を覚える。
彼女がいないことで、静かな空間が“静かすぎる”と感じてしまうほどに。
手元のノートには、彼女が読んでいた本のタイトルがいくつも書かれている。
それは、彼が“彼女の隣に座るための言い訳”として調べたものだった。
彼女が興味を持ちそうなジャンル、作家、言葉。
そのすべてを集めて、涼真はそっと温めていた。
けれど、それを渡すタイミングを、彼はまだ見つけられずにいる。
──そして今、日向は屋上で、別の誰かと風に吹かれていた。
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