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第三部1章 嫁取り騒動再発 逃避の蜜月編
3.一難去って……また二難?!④
しおりを挟む貴妃?
目の前の子が、バルドの?
「こら!イザベル。言葉は正確にだろ?まだ、あくまでも貴妃候補」
「どちらも同じですわ、お兄様。私が選ばれないはずありませんもの」
うふんと笑うイザベルは、かなり自信満々。それに、ユリウスにはかなり懐いているのか、俺に対する態度と、別人じゃないかってくらいに違う。
「それとも…お兄様は、私が選ばれない方が嬉しい…とか?」
「そんな訳ないだろ?可愛い妹を、グレインバルドに渡すのは忍びないが、お前が幸せになれるならばいいさ」
「…………えぇ。ぜひ、そうなりますわ」
ユリウスの言葉に、イザベルの顔がほんの一瞬曇ったように感じた。
今のは……?
「イザベル。アルシディア様に失礼ですよ?貴妃の話は、こちらが安易に受けてしまったもの。アルシディア様の人となりを見れば必要の無いものですわ」
サティ様がイザベルを諌める。
いきなり貴妃の話が出てびびったけど、ナ・コルテスに話を通したのは恐らく……
「レズモントにはこちらから断りを入れなくてはね」
やっぱり……
「断り……はたして、叶いますでしょうか?」
「どういう事?ユリウス」
「国家が違えど、クレイドルとナ・コルテスは縁戚です。今回の縁組は、クレイドルの血統を限りなく純潔に残す為…他国の血ならばそういう理由で断れますが。クレイドルと血が同じナ・コルテスでは断る理由が立ちませんよ?」
痛いトコだな……
俺とバルドがトンズラこいたのも、結局、血を残すのに俺じゃ駄目って言われたからだ。
俺が女ならまだ良かったかもだけど……男の俺じゃ、正規の方法じゃバルドの血を残せない。
だから、あの方法だったんだけど……
縁戚じゃ、血筋が正しい。
レズモント宰相…やっぱ伊達で宰相なわけじゃねぇんだな。
「ユリウス!アルシディア様の前でそのような…!」
「いい、です…サティ様」
「アヤちゃん……」
サティ様の気遣うような様子が辛い。
やっぱ、男の俺が正妃だの伴侶だのって……無理な話だったんだ。
うぅっ…でも、やっぱり辛い。こうも、「お前じゃ駄目だ」って言われ続けたら、さすがに俺も凹む。
「あ、の……ごめん、なさい!俺、失礼します!」
これ以上、サティ様に気遣われるのも辛いし、イザベルやユリウスを直視する事もできず、殆んど逃げるように部屋を出た。
一応、貴賓室の場所は聞いてるけど……よく覚えてない。
それに……今は、一人でいたい。
貴賓室で、バルドの顔見たら………
「ウワッ、ぷ!いっ、、た」
よく前を見ず廊下を曲がったら、正面から何かにぶつかった。
うぅっ…鼻打った。痛い……
「アヤ?」
「バ、ルド…………」
ぶつかった相手はバルド。今、一番会いたくて会いたくない人。
「アヤ?」
思わず視線を逸らしたら、不自然すぎて、訝しむように呼ばれる。
「アヤ、なんでこんなトコにいる?呼びに行ったら、部屋を出たと聞いた」
サティ様のとこに行ったんだ?じゃ、イザベルにも会ったんだろうか?
話を聞いたんだろうか?
どうするんだろう?
貴妃に迎える?
相手が縁者じゃ断れない……
あぁ……グルグルする。黒くて、ドロドロしたのが溢れそう。
気持ち悪い!格好悪い!情けない!
「アヤ…お祖父様から話は聞いた。貴妃の件……」
「大丈夫…だから!」
「なに?」
「相手が……血筋が正しいんじゃ、断れないんだろ?猊下からも、諭された?俺を…説き伏せろって言われたんじゃね?だから……!!」
「アヤっ!!」
「大丈夫だってば!!望まれない子が生まれるよりか、望まれる子を生んでくれる娘を迎えた方が………ッつ!」
ギュッと強く手首を握り締められ、痛みに顔が歪む。
顔を上げ、バルドを見た俺は、ギクリと固まる。
バルドは冷たく、底冷えするような昏い目をしていた。
「バル、ド……?」
呼びかけも無視。
本能的に感じた警鐘に、逃げようとしたが間に合わず、強く抱き込まれ唇を強引に塞がれた。
乱暴なそれに、唇の端にピリッとした痛みを感じ顔をしかめる。
必死でもがき、唇を外す。
「バルド、やだッ!!」
「考えろと言ったはずだ…」
「バルド!?」
肩に担ぎ上げられる。
「頭じゃ理解できねぇんだな、お前は……久々にアタマにきた」
「バルド!?バ、、ルド!や、め……」
そのまま、貴賓室の一つと思われる部屋の扉が開かれた。
肩に担がれたまま暴れるが、ビクともしない。
バルドを怒らせたのは分かった。
でも、だからってこんな乱暴なの……!
扉がゆっくり閉まっていく。
部屋の中と外とが分断されていくのを、俺は絶望的に見ていた…………………ーーーーーーーーーーーーー
*次回、☆付きます。ちょっと、ダークな展開になりますのでご注意をm(_ _)m
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