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最終章 彩色師は異世界で
1.次代に繋ぐ②
しおりを挟むバルドの条件?
目で問うが、俺には構わず神たちに真っ直ぐ目を向ける。
『なんだ?』
「一つは、俺とアヤの神化を消せるか?」
『神化……お前たち二人が今使っているやつだな?一応、何故、と聞いておこうか?』
「俺の神化はレーテ…アウフィリアの眷族神の力だ。そのレーテから聞いた。俺とアヤの寿命は、人のそれと異なると…皆が俺たち二人より先に逝く。最初はそれでも良かった。俺にはアヤが、アヤには俺が残る。だが、今は……」
バルドの言葉に俺もハッとなる。
そうだ……今は!
縋るようにルーを見たら、苦笑された。
『分かったから、そんな泣きそうな顔するな』
「できる?」
『俺一人なら無理だがな。三神揃ってるから何とかなる』
ルーの答えに安堵の息をつく。
良かった。これで……看送らなくていい。
子が自分より年を取り、老いていく。本来なら、自分より先に逝く筈のない者を送る。そんな悲しすぎる思いはさせたくないし、したくない。
「もう一つ……アヤの、光が可能なら、他の魔導はどうだ?」
『と、言うと?』
「とぼけるな」
質問に質問で返したルーを、バルドが睨む。
『……可能だよ。大体、予想はしてたが、本当に言ってくるとは思わなかったぞ?』
「ルー…何の事だ?」
バルドとルーだけで進む会話に、不安になって問う。
俺には答えず、ルーが溜息をつく。
『他は?』
「できれば、縛られたい」
「バルド⁉︎」
ギョッとなる。
縛られたいって……⁈
俺の脳裏にルーに縛られて、転がされるバルドの姿が……
『おい、いいのか?お前のアホ嫁が妙な誤解してるぞ?』
「いい。知れば、こいつは拒否する」
『まぁ…いいんなら、いいが』
「なぁ!何の事だよ⁉︎縛られるって何⁉︎誰にだよ!」
「うるせぇ…あとで教えるから黙れ。じゃなきゃ塞ぐぞ?」
慌てて黙る。
塞ぐ……どうやってかは知ってるし、こいつは誰が居ようと見てようと、やると言ったらやる事は、嫌というほど知っている。
ジトと睨むが、完全無視。スルーされる。
ムカつく!!
『続けるぞ?お前の理をかなりめちゃくちゃにしてしまったからな……修正をかけなきゃならん』
「俺の?」
『そうだ。本来なら、アヤの代で、この世界に戻る事はなかった筈なんだが……』
「そう、なのか?でも……」
「アヤを戻したは、我だ。ラゼルに唆されたのを除いても、望んだは我ぞ?」
『だから、妙なのよ。私は、そうそう簡単に破られるような封は、アヤに施してないわ。ユクトディオスも、ラゼルが暗躍するのは見越してたけど、まだまだかかる筈だったのよね?』
「ふむ…少なくとも、あと二代くらいは先の話、、だったの。ある瞬間までは」
笑いながら言う全能神に、皆が注目。
ある瞬間まで?
「それは……」
「この話はここまでぞ」
ニコリと笑って、全能神様が話を切る。口を開きかけた俺に、人差し指を口の前で立て、言葉を発さずに唇を動かす。
し・ら・ぬ・ほ・う・が・み・の・た・め・ぞ
俺にだけ分かるように言った?
それに……今の唇の動きがその言葉なら、全能神は何かを知ってて……?
『アヤ?』
「え?………」
『どうかしたか?話を続けると言ってからずっとボーっとしていたぞ?』
え⁉︎
あれ?だって、今…………
慌てて、全能神に視線を向けるが、こちらには一切構わず、ルーだけをテレテレ見惚れてる。
場が一瞬切り離されたような気がしたが……
「アヤ、どうした?やっぱり抱いててやるか?」
「いや、いい……大丈夫」
腑に落ちないが、話が終わっているし、全能神もこちらを見ない。妙な事を言って場を困惑させるのも気がひける。
バルドの申しを断り、腕に掴まり直す。
「俺の理を直すんだよな?」
『ああ。ただし、お前自身の理は確定してしまっているから、これ以上は無理だ。だから直すといっても、お前に関わった周りになる。が、これも、かなり交錯してしまっているし、複雑に絡みすぎてて無理な部分もある。だから、直せる限り、可能な範囲でだ』
「俺的には、俺に関わった事でめちゃくちゃになった人たちの理は直して欲しい……」
『とりあえず、どうしたいか。どうするかを、決める』
ルーの言葉に、俺はゆっくりと思いと考えを巡らせていった。
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