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第二部1章 黒き鎖の呪痕 奪われつつある光の章

*側近たちの密やかな会話

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*読んでも読まんでも大丈夫ですm(_ _)m





「アヤは、殿下のお部屋に行ったか?」

イアンの問いかけに、セレストはゆっくり頷く。

「なんとかな」
「また、ケンカにならないか?」
「ならんだろう。殿下はアヤに惚れ抜いてる。こっちが呆れるくらいベタベタに甘やかしまくってる。今回のも、痴話喧嘩のちょっと行き過ぎた形なだけだ」

あとは知らん、放っとけとばかりなセレストに、イアンは多少心配ながらも、セレストが言うならと納得する。

「ところで、どこまで話した?」
「とりあえず一通り?話をして、俺からの話も聞いて、ちょっとは落ち着いたみたいだぜ?」
「そうか…ハァッ…まったく、手のかかる!痴話喧嘩の仲裁なんぞ、側近の仕事に含まれてないぞ」

プリプリ怒るセレストに、イアンはクスリと笑う。

「何だ?」
「いや……なんだかんだ言っても、お前は面倒見いいよなと、思ってさ」
「揃いも揃って手のかかる弟みたいなもんだ!お互い思い合ってるクセに、あの二人は不器用すぎる。見ててもどかしいんだよ」

口ではそんな事を言うセレストに、イアンは嬉しそうに微笑む。

「だから何だ?!」
「いや、だってよ。嬉しいじゃないか…自分の恋人が、美人で仕事できて、他人にも気配りできて優しいなんて。自慢できる」
「…………………」

胡乱な目を向けるセレストに、イアンは構わずテレテレしながら浮かれている。

「まぁ、その優しさをもちっと俺にも向けてほしいんだけどな」
「知らん!お前は弟じゃない。手がかかるのはあの二人だけで充分だ!」
「弟じゃねぇんだ……じゃ、さ…セレストは、俺の事なんだと思ってくれてんだ?」
「…………自分で言ってたろうが」

期待したキラキラした目で見てくるイアンに、やや怯みながら、セレストが視線を若干泳がせぶっきらぼうに応える。

「セレストの口から聞きてぇ」
「…………………」

期待にピクピクする耳と、ブンブン振られるシッポの幻覚が見えそうだ。

「犬を飼った覚えはないんだが?」
「忠誠心は高いぞ?ちゃんと言いつけ通りにしたし、褒美が欲しい」
「駄犬だな……待てもできずに褒美エサを自分から強請るとは」
「えぇ!?いいじゃねぇか。俺、頑張っただろう?」

大の男が膨れて文句。ハッキリ言って可愛くはないのだが、セレストはそれにほんの少しだけ可愛さを見出し戸惑う。
まったくどうかしていると、自分にも呆れつつ、イスに座ったままのイアンに向けて腰を折り、男らしく厚く、少しカサついた唇に小さく一瞬だけ口付けた。

「え?え?えぇーーーーーーーーーーーー?!セ、セレスト!今っ!!えっ、ちょっ!も、一回!もう一回してくれッッ!」
「馬鹿か?こんなもん、今くらいの一回で充分だ」
「いやいやいやいや!充分じゃねぇって!一瞬!あんなほんのちょっとじゃ分かんねぇって!額か頬にしてもらえりゃいいぐらいに考えてたのに!構えてなかったから、ほとんど感じられんかった…くっそ~!なぁ、頼むよ!もう一回!」
「知るか!調子にのるな!」

なぁ~なぁ~と、しつこく追い縋るイアンをあしらいつつ、やっぱりどこか憎めず可愛いと思ってしまい、どうかしていると再度感じつつ、それでも、セレストの口元には困ったような微苦笑が浮かんでいた。





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