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第2章 聖獣妃
8.触れる熱⑤
しおりを挟む床に押し倒されたが、暖炉の前で、ラグと敷布もあり寒くないし痛くない。
ただ、問題がある。
「カイザー…」
「うん?」
見下ろしてくるイケメン騎士隊長様の視線が甘い。
いや、こっちが恥ずかしくなるくらいに柔らかくて甘い。もっとも、問題はそれじゃなく…
「キャラ、変わってね?」
「きゃ?」
「な、んでもない…あのさ」
「どうした?どこかぶつけたか?」
「いや…カイザーがその…やさ、しく、倒してくれたから、だ、いじょぶ」
それこそ、自分が壊れ物や女の子にでもなったみたいに、優しく扱われ、恥ずかしさといたたまれなさに、ワーワー喚きながら走り回りたい気分だ。
頬をやんわりと撫でられ、ピクッと小さく肩が跳ねた。
顔の傍に片肘付き、カイザーがそのまま顔を近づけてくる。
唇が重なり……そうになり、慌てて手でその唇を塞ぐ。
「ちょいたんま!あ、のさ……その、、俺が、下な、のか?」
「下?」
唇を塞がれたままなので、カイザーが篭った声で聞いてきた。疑問符がいっぱいつきそうな訝る表情で首を傾げる。何を聞かれてるのか分からないといった感じだ。
俺だって、何でこんな質問しなきゃならんのだと、複雑だが、今まさに当事者であり、直面している事態に確認は必須。
「俺を抱きたいのか?」
塞ぐ手の下でカイザーが口を開いた。温かい吐息と唇が手の平にあたり、今更ながら狼狽えた。
言われた内容にも激しく動揺した。
抱く?
誰が??
俺が???
カイザーを?????
………………………………………………………………無理ッッッッ!!!!!
いや、まったく無理かと聞かれたら、そりゃ死ぬ程がんばればやれなくもなくないような気がするようなしないような、、、…………………………………………やっぱ、無理!
そんな死ぬ程の勢いと努力で、自分より遥かに体格も見た目もいい男(ここ、かなり問題!!)を抱くなんてしたくない。
抱くのは無理だ。
じゃ、反対に抱かれるのはOKなのかと聞かれたら、それも複雑。
嫌、ではない。嫌なら、死に物狂いに抵抗し逃げてる。
カイザーを欲している。けど、心だけじゃなく、体までもとなると、二の足を踏む。
「カイザーは…俺、だ、だ、だだ、」
「抱きたいな。惹かれた相手が目の前にいるなら、当然触れたい。普通の事じゃないか?」
言い切った。
俺は恥ずくてどもったのに、臆面もなく、極々自然にさらりと、当然のように言い切ったよ、この隊長様。見た目だけじゃなく、精神までイケメンかよ?
「もっとも、お前が嫌なら、最後まではしない。ただ、触れるだけでいい」
まったくしないとはならないし、言わない。
でも、それは同じ男として分かるから責めも呆れもしない。本当なら、好きな相手なら全部欲しい。でも、嫌がる事はしたくないから、最後までしないが、触れていたい。
俺の揺らぎと迷い、戸惑いを察して譲歩してくれる。
本当に、男前すぎる。
ここまで言われたら、俺だって好きの気持ちは同じだから拒めない。
「嫌、じゃない…から、さ。その……」
うぅ……こんな時、何て言えばいいんだ?
視線を彷徨わす俺に、カイザーがフッと小さく目に笑みを浮かべ、唇を押さえていた手の平を軽く吸う。
「ふへッッ⁈」
思わず変な奇声をあげて手を離した。そのまま手首をやんわり握り取られ、指先と指に小さく口付けられる。
くすぐったくて軽く身動ぐ俺の顔に、再度、カイザーが顔を寄せてくる。
「もう、触れてもいいか?」
「な……で、聞く、、」
「嫌な事はしたくないからな」
「ッッ!」
待てとは言ったが、嫌とは言ってない。
まさか、お預け食らわせた意趣返しか?
今から触れるたびに、嫌かどうか、一々聞くつもりだろうか?
意地悪をされ、元々負けん気が強い性格がむくむくと起きだす。
掴まれた手首を振り払い、目を瞠るカイザーの首に両腕を回す。そのまま、呆気にとられているカイザーの唇に、自分のそれを重ねた。
殆どぶつけるような色気も素っ気もない、口付けと呼ぶには稚拙なそれだが、カイザーの意表をつくのは成功したらしい。
鳩が豆鉄砲を食ったような顔で言葉をなくすカイザーに、してやったりと、自分でも挑発的と分かる笑みを浮かべた。
「やられてばっかだと思うなよ?」
ザマァ見ろとばかりに言うと、カイザーが目を見開く。やがて顔を俯け伏せてしまった。
呆れたか、怒ったかと心配になるが、小さく肩が震え始めた。
笑って、る??
「カ……」
呼びかけた俺の言葉を遮るくらいの勢いで、カイザーが顔を上げ、一気に顔の距離を詰められる。
紺碧の瞳が楽しそうに、それでいて、今まで以上の熱と力を込めて俺の目を射抜く。
「下手くそ」
至近距離から言い放たれたそれに反論する暇もなく、あっという間に熱に包まれた。
*なかなかそういうシーンに入らず、
申し訳ないです(>人<;)駆け引き終わりましたので、次は確実に☆入ります。最後まで行くかはマヒロ次第(笑)
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