並行時空十二天将夢幻譚

白黒ニャン子(旧:白黒ニャンコ)

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序章 始まりの刻

2.並行時空③

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「……………………何、それ??」

まっっっッッたくもって、聞いたこともない!
ぽかんとしてぽつりと言う俺に、朱雀がおやおやぁ~とばかりに、腕組みで頬に手を当てたまま首を捻る。

「うん?ふ~ん?これってぇ、、、迷子?」
「知るかッ!俺に聞くな!!」

俺を指差し、笑みを浮かべたまま首を傾げる朱雀に、匂陣がぐわっと目を剥き怒鳴る。

「迷子にしたって、羅譲國も十二天将も知らないって事はないでしょう。ね?」
「だからッ、、俺に聞くんじゃねぇっつってんだろがッ!!」

どうやら、割と話聞かない系のたちらしく、再三に話を振る朱雀に、匂陣がキレた。
当事者なのに、無視されてる感が半端ない。
これは、アレかな?
撮影続行中で、空気壊してNG出すわけにはいかないから、とりあえず上手く繋いで続けようという努力というやつか?
いきなり乱入してしまったのは申し訳ないとは思う。
が、こちらとしては、これ以上の邪魔者にはなりたくない。

「あ、の……撮影の邪魔したのは謝ります。すみません。なので、俺が言うのもなんですけど、やり直した方が良いのでは?」

おずおず切り出してみるが、朱雀は笑みを浮かべたまま。匂陣は不審なものを見るような目で、騰蛇は興味ないとばかりにそっぽを向いたままだ。
何だろう?何かがおかしい、、、

「言葉は通じてるのに、お互い、意味が通じてないって感じだね?君が羅譲國と十二天将を知らないように、僕らも君の言ってる言葉の全て理解できない」
「は?へ?」

困ったように微苦笑を浮かべ告げられた朱雀の言葉に固まった。
朱雀、匂陣、騰蛇と順に視線を向けてみるが、3者3人とも嘘をついてる気配はない。
言われた言葉を反芻はんすう、ふと落とし込んだ途端、唐突に愕然がくぜんとなる。

「う、そ…だろ?え?これ、って……現、実?」

撮影じゃない。

見知らぬ何処か。

その事実に、口元を手で押さえ、パニックで上がりそうになる呼吸を必死に抑える。
情けないが声が、体が震える。

「え?じゃ、ぁ、ど………こ、だよ、、こ、…こ」
「だから、羅譲國だっつってんだろ?頭、大丈夫か?てめぇ」
「匂陣~?ちょ~っと黙ってなよ?あんまり、追い詰めたら可哀想でしょ?」
「はっ!知るかよッ!つか、さっさと連れてくぞ?あんな、波動のでかい場に居たからどんなやベぇ奴かと思って先制したってのに、飛んだ肩透かしじゃねぇか!気構えて損した!」
「匂陣が勝手にしたんでしょ?この子のせいにしないの~」
「うるっせぇな!とにかく!怪しいのは怪しいんだ、さっさとふん捕まえろっ!」

ギッと険しい緑色の瞳に睨めつけられ、無意識に体がビクと竦む。
これは現実。自分がこれから何をどうされるのかも分からず、されるのもどうなるのかも、芝居なんかじゃない。
我に帰れば、その事実が怖すぎて、口の中がカラカラに乾いていく感じだ。

「もう!匂陣がおどすような事ばっか言うから、すっかり怯えちゃったじゃないか!可哀想に~」

ハァ~と溜め息をつき、朱雀が匂陣をたしなめる。
ケッ!と息を吐き、そっぽを向く匂陣にやれやれと嘆息しつつ、朱雀が困ったように俺に視線を合わせて微笑みかけてきた。

「ごめんね?匂陣はあぁ言ったけど、乱暴な真似したりするつもりないから。ただ、僕らは波動の乱れを大きく感じて、その場を調べに来ててさ。そこに居たのが、君、ヒナタだから、一応庇護ひごしないわけにはいかないんだ。分かってくれる?」
「ッ……………………」

ルビー色の垂れ目に優しく柔らかく微笑みかけられ、ただ言葉は出ず小さく息を呑む。
ちらっと視線を脇に向ける。
相変わらず騰蛇は無関心かのように押し黙ったまま。匂陣は不機嫌を隠そうともしない仏頂面で……
視線を戻すと、朱雀が柔らかく見つめてくる。
この中では一番優しくまとも?

「分か、りました……」

どっちにしろ、このわけの分からない状況下では、従う以外の選択肢がない。
やや緊張しながらもコックリ小さく頷く俺に、朱雀がニッコリ笑う。

「良かったぁ~。じゃ、行こうか?おいで」

手を差し出され、ごく自然にその手を取った。
あれ?よく考えたら、手、繋ぐ必要なくね?

「ぁ……」
「う、わぁ~…………」
「??????」

慌てて離し…かけた手をギュッと握り込まれた。
ほぅっと、感心したような溜め息が朱雀の口から飛び出る。

「小っちゃい…細い……それにすべっすべぇ~……何、これ。こんな触り心地いい肌初めて~」
「は?あ、の、、?え??うわっ⁉︎ちょっ、⁉︎」

手の甲を指で撫で擦られ、擽ったさに思わず声が上擦った。
自分が挙げた声が恥ずかしすぎる。

「可愛い……殿下がいいって言ったら、僕が貰っちゃおうかなぁ」
「な、な、な、に⁈」
「おい!いい加減にしろ!てめぇの悪食あくじきに付き合ってられっか!さっさと戻んぞ!」

不愉快とばかりな、匂陣の言葉に、朱雀が失礼な!とばかりに応戦する。

「僕のどこが悪食?それは、僕にもだけど、ヒナタに失礼じゃない?」
「どんなだろうと、可愛い可愛い連発するてめぇの目がおかしいんだろ?悪食以外の何の言葉が当てはまるってんだ?」
「何それぇ?匂陣こそ、目、悪いんじゃない?ヒナタ、こんっなに!可愛いのに~」
「はぁ?色気も素っ気もない、ただのガキだろが!」
「匂陣~、分かってないよねぇ。色香なんて、相手次第でしょ?つ・ま・り!ヒナタを色っぽくできるかは僕次第って事~!!」
「……………………」

…………………………………………前言撤回!!
朱雀こいつも危ない奴だ!!
朱雀は危ない。匂陣はもっと危ない。
とくれば……
ちらっと視線を向け、やや躊躇いつつ、騰蛇の背後に隠れる。

「ええええーーー⁈嘘ぉ、そうくる?なんで、なんで?」

ショックとばかりに朱雀が騒ぐが、俺としてはなんでと言われる方がなんでだ。

「おい………そろそろ、いい加減にしろ」

応えあぐねて口籠もる俺に、やっと騰蛇が口を開く。

「いや、だってさぁ~…ッッ!匂陣ッ、騰蛇ッ!!!!」
「うわっ⁈な、な」

拗ねたように口を尖らせていた朱雀の顔が急に険しくなり、鋭い声音と共に、騰蛇に手首を掴まれ引っ張られた。









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