並行時空十二天将夢幻譚

白黒ニャン子(旧:白黒ニャンコ)

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序章 始まりの刻

2.並行時空④

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引き寄せられると同時に地鳴りがし、あちこち亀裂が走った地面から、黒い塊がいくつも飛び出す。
ギョロリと妙に大きく飛び出た目。真っ赤に裂け上がった口端からギザギザの歯が見え、ダラダラよだれを垂れ流す口から、ギーギーと耳ざわりな奇声を発する。腹が異様に飛び出た様は……
まるで、地獄絵で見る餓鬼がきの……

じゃ餓鬼か!何で、いきなりこんなモンが⁉︎」

俺を庇うように騰蛇が、朱雀と匂陣も同様に距離を取るように飛び退すさる。

「さぁね?こんなモン送り付けてくるなんて、二択しかなくない?」
「それは分かってんだよ!今、何の目的でって聞いてんだ!」

匂陣の苛立った声に、朱雀がのほほんと応えた。
緊張感ないように見えるが、その実、目が笑ってない事に気づく。

「目的なんか一つじゃない?十二天将僕らの排除でしょう?ッッと!!」

ギャァと奇声を挙げながら飛びついてきた邪餓鬼を、朱雀が横に薙ぎ払う。赤い線のような光が走り、薙ぎ払われた邪餓鬼が黒い煙を上げて消え失せた。
まるで特撮さながらの光景だが、感心してる場合じゃないのも事実。
目の前で起きてるのは現実で、自分がその渦中に居るというのが信じられない。

「はっ!排除するにしたって、送り込んでくんのが邪餓鬼これか?随分、められたもんだな!」
「数はちっとも舐めてる感じじゃないけど~?」

朱雀も匂陣も言葉を交わしながら、淡々と邪餓鬼を始末していくが、言葉通り、数は確かにかなり居る。
40匹前後。よくは分からなくても、容易くは見えない。

「騰蛇!悪いけど、ヒナタ連れて逃げてくれる?」
「……………………」

朱雀の言葉に、騰蛇がこちらへちらっと視線を寄越す。
迷惑極まりないとばかり、明らか不満タラタラな視線だが、俺としてはそんな顔されたって困る。

「言いたい事は分かるよ~?でも、神力じんりき使うわけにはいかないでしょ?万一、欠乏けつぼう起こしても、僕と匂陣じゃ補ってあげらんないからねぇ」
「役立たずはさっさと離脱しろ!居ても力使えないんじゃ、意味ねぇだろ!足手纏いなんだよッ!!」
「匂陣~!なぁんでそういう言いかたするかなぁ?使えないんじゃなくて、使でしょ?第一、純粋に強さだけなら、僕も匂陣も騰蛇に敵わな……」
「うるっせえ!」

言葉に怒鳴り声を被す匂陣に、朱雀が溜め息をつく。

「この先に、神水域しんすいいきがあった筈だから、そこで!ね?」
「……………………分かった」
「え?うわっッ、ちょっ、⁈」

ひょいと、まるで荷物のように騰蛇の肩に担ぎ上げられた。目線が高くなり、面喰らう俺に構わず騰蛇が走り出す。
人一人抱えているとは思えないスピードだ。
邪餓鬼と対する朱雀、匂陣が遠く離れていく。
目まぐるしく変わっていく光景と、それと付随して変化していく状況に、頭も感情もついていけなくなりそうだ。

「な、んだよ、これ…何なんだよーーーーーー⁉︎」










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