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第1章 似て非なるは表裏一体
1.最凶の武神⑤
しおりを挟む青龍と呼ばれた男が、一歩前に出てくる。
かなりの高身長だ。それに………
威圧感が半端ない。
大柄ではない。特別がっしりとしているわけでもない。細身だが、つくべきとこにはついてます系の、バランスの良い体つき。
こちらも同じく、中華系ファンタジーに出てきそうな煌びやかな衣装を身につけている。
「片付いていない事項がございます」
「と、いうと?」
青龍の言葉に、太子、朱恢が首を捻る。
片付いてない事項?
俺的にも何の事やらだが、俺から言わせてもらえば全て何の事やらなので、ここはまだ黙っておく。
「一つは、殿下の意向を違え排除しようとした件」
「ッッッ!!!!!」
言い放つ青龍の言葉に、匂陣が気色ばみ身を乗り出すが、横手から朱雀が片手で制す。
最初に感じた事だが、匂陣はカッとなりやすい傾向にあるようだ。
まぁ、いきなり出会い頭で殺されかけたのだ。言うまでもないだろう。
それを抑える朱雀は、ニコニコ笑みを浮かべたまま。こちらは、ハッキリ言って読めない。
無言だが、明らかに不満を訴え睨みまくる匂陣と抑える朱雀には目もくれず、青龍が前を見据えたまま淡々と口を開く。
「二つ目は対象への勝手な接触。あまつさえ、取り逃がすという、話にもならぬ失態。それに輪をかけ、託されてもおらぬのに、対象を引き立て連れてくるという暴挙」
「あははは!バレてもうてる」
「……………………」
天后が笑いながら舌を出すのに対して、騰蛇は無言無表情だ。
動と静、対象的な二人だ。
青龍が、匂陣と朱雀の時とは違い、天后と騰蛇を睨め付ける。
と、言うより……騰蛇を睨んでないか?
青龍が騰蛇を睨む瞳の力は強く、まるで憎悪しているかの如く激しい。
睨み続ける青龍と、どこまでも無反応な騰蛇。
「最初の件に関しては不問だ。私の伝え方に問題があったとも言えるからね」
「…………御意」
若干不服そうではあるが、軽く頭を下げ、青龍が朱恢の言葉に従う。
匂陣と朱雀も頭を下げた。
「対象に無断で接触した件に関しては……まぁ、看過できないね。取り逃がした件も看過ごす事はできないけど、きちんと捕まえたのだしそこまで強く罰することもないだろう」
「しかしッ………!」
抗議の声は、朱恢の制する手で遮られる。
グッと唇を噛みしめ、青龍が伏し目がちに軽く頭を下げる。
「元はと言えば、ちゃんと指示を出せなかった私の責だ。流人の処遇についても、論議している時間が長すぎた」
「太子殿下のせいではございません。先走り、出すぎた真似をする者が不遜なのでございます」
「青龍……あのね、、、」
「おい!いい加減にしろよ!さっきから、ねちねちねちねち!てめぇが表立てなかったからって、八つ当たってんじゃねーよ!!」
青龍の返しに、困ったように微苦笑した朱恢を遮り、匂陣が怒鳴る。
キレたようだ。
隣では、朱雀があちゃ~っとばかりに、額を手で押さえる。
ツと冴え切った青龍と匂陣の瞳が正面からぶつかり、睨み合う。
まさに、一触触発の様相だ。
俺の事で話をする的な雰囲気が、何やらややこしい事に発展してしまった。
俺が止めるのもおかしいし…そもそも止められる自信もない。かといって、目の前でこちらをそっちのけでやり合われても困る。
突如、パーーーーーーンッッッ!と、鋭く弾けた音が鳴り、俺を含めた全員がハッと短く息を呑んで硬直した。
音のした方には……ーーーーーーーーーーーーー
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