暗殺任務失敗したのが組織にバレて、処女なのにハニトラさせられることになりました。密かに思ってた先輩がHの指導役とか聞いてません!

甘酒ぬぬ

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第1章 指導編 初日

1-10 月下に天使って、なんかヤバいお薬ですか?

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「……ほんとに全然慣れてないんだな」

 ため息混じりのフォウの声。

 リヤーナは、いつの間にか自分が固く目をつむってしまっていたことに気付く。
 恐る恐る目蓋を開けると、苦笑するフォウの顔が見えた。

「フォウ先輩……?」
「おどかして悪かったよ。今日はまだどうこうするつもりじゃない」

 フォウはリヤーナの髪をくしゃっと乱すように撫でる。

 リヤーナは安堵でほっと息をついた。と同時に申し訳なさも感じた。
 フォウの真意はわからないが、躊躇ためらわせるくらい怯えているように見えてしまったのだろう。覚悟や気構えがまったく足りていなかった。

「だが、このひらひらしたやつは脱げ」

 フォウは真顔でネグリジェをつまみ上げた。

「なんでですか!」

 リヤーナはフォウの手からネグリジェをひったくり、急いで裾をおろした。たとえ薄く透けている布であっても、一枚あるとないとでは気持ち的に大きく違う。

「ボディオイルを塗るからだよ」
「……えっちなやつですか?」
「純然たる保湿オイルだ馬鹿!」

 フォウはサイドテーブルに置いてあった小瓶を取る。中身は、蜂蜜に似た黄金色のとろりとした液体だった。フォウが手のひらに出した液体を両手でこすり合わせると、濃厚だがくどさのない甘い香りが広がる。

「お花かな。豪華で甘い匂いがしますね」
「月下香と天使草だ。ローズオイルでも良かったんだが、バラの香りじゃありきたりでいかにも過ぎるからな」
「月下に天使って、なんかヤバいお薬ですか?」
「お前さっきから俺のことなんだと思ってんだよ」

 フォウはリヤーナの手を取り、軽く圧をかけながらオイルをもみ込んだ。肌だけでなく爪にもすり込んでいく。
 フォウの手の温かさや適度な圧が気持ち良い。

「体型だけじゃなくて肌質もきっちり整えるぞ。ガサガサの肌じゃあ興冷めだからな」
「……そんなガサガサですか私」
「いやそういうわけじゃないが、手入れしてないってのはわかる」

 リヤーナの胸に深くフォウの言葉が突き刺さった。
 実際これといった手入れをしていないのだから仕方ないが、事実は時に人を傷付ける。

「わざわざ先輩にしてもらわなくても、背中はちょっと難しいけど、それ以外なら全部自分で塗れますよ」
「塗るのだけが目的じゃねえよ。男に触れられることに慣れろ。いちいちビクついてたら話にならないだろ」

 返す言葉のないリヤーナは眉根を寄せて押し黙る。
 確かに慣れるためには回数をこなさなくてはならない。しかし好きな人に触られて慣れるものなのだろうか。逆に慣れてしまってもそれはそれで寂しい。

「だから、さっさとうつ伏せになれ」
「きゃっ!?」

 フォウはネグリジェを引っ張って雑に脱がせた。手早くたたんでベッドボードにかける。

「ちょっと先輩!」

 リヤーナは乱れた髪を手ぐしで直し、ずれてしまった下着の位置を腕で隠しながら戻す。

「お前が脱がせろって言ったろ」
「……言いました。言いましたけど」

 言葉に詰まったリヤーナは奥歯をきつく噛みしめる。
 どれもこれも反論できないのが腹立たしい。数分前の愚かな自分を殴りつけてやりたくなった。

「対面のまま塗られたいっていうなら、俺はやぶさかじゃないけどな」

 意地悪を通り越し、もはやただの悪い表情を浮かべ、フォウはオイルで艶めく手をリヤーナの腹部へと伸ばした。

「うつ伏せになりまーす」

 リヤーナは素早く身体を反転させた。枕をぎゅっと抱きしめて顔をうずめる。

 フォウの顔や手を見ながらオイルを塗られるなんてある種の拷問だ。どんな心持ちでいればいいのかわからない。塗られている時の自分の顔も見られたくなかった。

「がっちがちだな。もうちょっと力抜いて気楽にしてろ」

 硬さを確かめるようにフォウの指が肩甲骨周りに触れた。

 フォウの体温と程良い力加減はうとうとしそうになるほど気持ちが良いが、「触れているのがフォウである」という一点が眠気と落ち着きを吹き飛ばす。

(無理なこと言わないでください先輩……)

 リヤーナは泣き言を飲み込み、できるだけ身体に力を入れないように努める。
 が、フォウの指が紐――もとい、細すぎて紐同然のバックベルトの下に入り込んだ瞬間、リヤーナの努力は水泡に帰した。自覚できるほど身体がこわばる。

「なんかもの凄く悪いことしてる気分になってきたな……」

 リヤーナの耳にフォウの大きなため息が聞こえてきた。困ったフォウの顔が目に浮かぶ。

「うぅ、すみません……でもこんなのどうやって慣れろっていうんですか……」
「ま、慣れるまでやるしかないだろうな」
「すみません、私が遊び慣れてないばっかりに……」
「いや根本原因そこじゃねーから」

 ――元はと言えば全部、俺のせいだな。

 ぼそっとフォウが呟いた……気がした。

「先輩?」
「しかし風呂上がりにしちゃ冷たい身体だな。風呂から出て遊んでたのか」

 オイルを追加したのか華やかな香りが強くなり、フォウの手が先ほどよりも抵抗なく肌の上を滑った。

「んっ……そんな、子供扱いしないでください。女子には色々あるんです」

 緊張、ではなく、何か別の感覚によってリヤーナの下肢にきゅっと力が入る。
 それを皮切りに、身体の末端がそわそわと落ち着かなくなった。爪先がもぞもぞと動きシーツを乱す。枕を握る手にも力がこもってしまう。

「まぁ、子供ではないな」

 フォウの手が腰のくびれをなぞり、その下の曲線へと至る。
 胸部を覆う下着同様、こちらもほぼ紐と端布はぎれで構成されているため、非常に露出度が高いうえに食い込みやすい。

「どこ触って何言ってるんですか!」

 リヤーナはばっと上体を起こして振り返った。
 頭ではオイルを塗布しているだけだとわかっていても、背中や腰を触られるのとは意味合いが大きく異なる。

「ばか違う! タイミングが悪かっただけだ!」

 フォウは手と首を大きく振った。本人的にも思うところがあるのか若干顔が赤い。

「まだ背中側が終わってないんだから寝てろ!」
「うぅううぅ……」

 強引に押し倒され、リヤーナは枕に顔を突っこんだ。

(なんか先輩、触り方がやらしくない? 自意識過剰? 考えすぎ?)

 より深く枕に顔をうずめ、リヤーナは声が出るのを抑える。
 心なしか身体が熱くなり、息が上がってきた。足の間がじんじんと疼く。

「……ぁんっ!」

 お尻と太腿の境を押しあげるように触れられ、リヤーナはたまらず背中を反らす。慌てて両手で口を押えるが、間に合っていないのは明白だった。
 火でもついたのかと思うほど、一瞬のうちに顔の温度が上昇する。

「ほんとやだぁっ……先輩のせいで、なんか変だし、変な声出るぅぅ……」

 リヤーナは枕を頭にかぶり、膝下をばたつかせた。身体の異変に引きずられて情緒が崩れる。

「こら、急になんだ。暴れんな」

 フォウはリヤーナの身体を抱き起し、背中をさすってなだめる。

「だって、先輩が……やらしい触り方するから、なんか変なんですもん……」

 リヤーナはフォウの胸板に額を擦りつけた。

「あのな……ったく、俺だけのせいじゃないと思うけどな」

 フォウは頭を掻き、意味ありげな視線をリヤーナへと向ける。

「先輩?」
「……リィが感じやすいせいだろ」

 急にフォウの声色が変わった。
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