ヤケクソ結婚相談所

夢 餡子

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第1話

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その日曜の、午後2時。

彩は緊張した面持ちで、ヤケクソ結婚相談所の扉の前に立っていた。

これから、人生初めてのお見合いである。
アイシャドウを念入りに入れたし、マスカラも塗った。

アンタは目がかわいいんだから、その特徴を生かして相手にアピールするように。
それは、アズサからアドバイスしてもらった必勝法だ。

昨日、美容院に行ってゆるふわ風に仕上げてもらい、カラーリングもした。
花柄のワンピも、ウニクロで一番高いやつを思い切って買った。そしてジパンスイの香水も。
まあ、いい男をゲットするためには、多少の投資は仕方がない。
思い起こせば、この10年。こんだけオシャレしたことがあっただろうか。いやない!(断言)
準備は万端である。

がんばれ、わたし!

一度大きく深呼吸して、扉を開けようとすると……。

扉の向こうから、何やら話し声が聞こえる。
気になって、思わず耳をすました。

『……いいか。言ったとおりにちゃんとやってくれよ?』

コレは、鶴田さんの声?

『ああ、わかってるって。だけどマジで約束してくれよ、これが終わったらツケはチャラにするって』

だみ声の男が、なにやら答えている。
ツケがチャラとか……いったい何の話だろうか。

なんだか気になるが、まあいい。
おそらく私には、関係ないことだろう。

思い切って、扉を開いた。
満面の笑顔と、できうる限りのハイトーンボイスで挨拶する。

「こんにちは!」

テーブルの脇に立っている鶴田さんの姿がある。
鶴田さんは私を見て、なぜかビクッとしたようだった。

そして椅子に座っているのは……。

なんだか、げっそり痩せた男である。そして妙に酒臭い。
醤油らしきシミのついた薄汚い白のTシャツに、半ズボン姿。
そして顔はと言えば……えっ、ミムタク!?

……いや、違う。
なぜか、紙で出来たミムタクのお面を顔につけている。
コレっていったい、なんなんだ!?

「す、杉崎様、ようこそいらっしゃいました!」

鶴田は、顔から汗をどくどくと流しながら愛想笑いをする。

「ここここの方が、本日杉崎様とお見合いされる、篠原様です!」

篠原と紹介されたその男は、お面越しに彩の顔をじーっと見つめている。

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