ヤケクソ結婚相談所

夢 餡子

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第1話

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その夜。
彩が自宅のキッチンで5回目のお代わりとなるご飯を食べていると、テーブルに置いたスマホが鳴った。
見ると、東雲からの電話だ。

「ぐがっ!」

彩は米を喉に詰まらせながらも、慌てて自室へと突進する。

東雲はLIMEなどのメッセージアプリが嫌いで、よぽどのことがない限り使わないらしい。
だから彩は、最初のデートが終わってからずっと、いつでも東雲からの電話を受けられるようにスマホを肌身離さず持ち歩いていた。

彩のほうから電話をするのは、未だ躊躇してしまう。
いつも遅くまで仕事してるみたいだし、仕事中に掛けてしまったら迷惑かなと思ったりする。
本当は、もっともっと話をしたいのだけど。
だから東雲からの連絡を、うずうずしながらひたすら待ち続けていたのだ。

部屋に飛び込むなり、彩は電話に出た。

「あ゙い……彩れす……」
『彩さん、どうしたの、その声?』
「すびばせん……ちょっとお米が喉にづがえてじまって……」
『いいかい、すぐに水を飲むんだ』
「あ゙い……」

彩はスマホを置くと、部屋に置いてあった2リットルペットボトルのコーラを、一気にごくごくと飲み干した。

ふう~、死ぬかと思った。
というか、翔さんに醜態を晒してしまったことが悔やまれる。

「す、すみません! もう大丈夫です!」
『そう、良かった。ところで明日なんだけど、夜空いてるかな? また、メシでも一緒にどう?』
「も、もちろんガラ空きですっ! お、お供いたしますっ!!」
『そう。じゃあ、7時に前回と同じ駅前でいいかい?』
「はいっ! 楽しみにしてます!」
『うん。じゃあ、また明日』

通話の切れたスマホを持って、彩はふうとため息をついた。
もっと、翔さんといっぱいお話したいけど……用件が終われば、すぐに切れてしまう。
まあ、翔さんも忙しそうだし、仕方がないのかな。

翔さんには、聞きたいことがいっぱいある。
どこの出身だとか、家族構成とか、お仕事の内容とか、休日はどうしてるかとか……。

前回食事したときだって聞くチャンスはいくらでもあったはずなのに、いざ食べ物を目の前にすると本能的に食欲で我を忘れてしまい、全然会話ができない状況に陥ってしまう。
そんな自分の体質を呪うしかない。

よし! 明日こそは食べるのを我慢して、いっぱいお話するんだ~。

そして、その後で……。
今度は大丈夫。心の準備はできている。
新しい下着は準備万端だし、今日はお風呂でからだのお手入れもしとかなくちゃね!

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